今回修復しています TEAC X-10R は現在でも TEACサービス部門で有償修復・調整サービスが受けられます。自己で修復したり修復途中の機器はメーカーサービスをお断りされる場合があります。ご注意願います。あくまでも自己責任による作業内容です。
又 TEAC X-1000R を含めXシリーズで同時期に製造されたデッキでは主要部品の共通化など基本的な動作は似通っています。後期製造分ではEE TAPE が使用できるように改良されています。dbxユニット搭載分を含めほとんどのメカニズム構造・調整項目・調整値は同等と感じました。メンテナンス作業において多少の参考となれば幸いです。
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| 最初に修復しました X-10R その1 自己所有分 |
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| 完全ジャンクに手を付けてしまいました。 X-7RMkⅡ その6 |
トランジスターのウィスカ現象による複雑な多発と思われる故障
| ウィスカ症状の NEC 2SC945 |
メーカー発行サービスマニュアルはメンテナンス作業においてプロのサービス・エンジニアがが扱う資料です。
記載しました修復・調整内容については具体的に必要性を自己解釈ですが画像などとともに記載しました。
上記記載交換したトランジスターの写真では多数のごく細い猫の髭のような結晶症状は顕微鏡での撮影環境が無いため 残念ながらウィスカ症状を詳細には撮影できませんでした。小生所有のデジカメ・マクロ撮影とトリミングの限界です。何とか確認ができる症状が撮影できました。
トランジスター本体部の故障ではありません。製造後長期間経過した機器での故障です。使用環境により発生頻度は違うと思いますが時々症状で悩む故障です。リード線の材質により発生する症状であり 現在製造供給されているトランジスターでは問題は発生していません。邪道ですが全数のトランジスターのリード線を清掃しコーティングすればウィスカ症状からの故障とはなりにくいと思います。システムコントロール基板内では約25個使用されています。最初は ひげを埃と勘違い しました。他の交換したトランジスターを確認すると発生量の違いがありますがウィスカ症状が確認できました。トランジスターは半導体製造メーカーから納入された時期・ロットにより発生の状況も変わります。通常半導体製造メーカーからは100個・1000個単位で納品されますのでX-10Rを1000台製造した場合25000個のトランジスターが必要となります。現在のプリント基板製造工程では自動化が進んでおり部品も小さくなりチップ部品がほとんどです。紙テープに接着されリールに巻かれた状態で納品されます。同じロットのトランジスターで製造された機器ですとその後の使用環境にもよりますが同じ故障が発生していると考察できます。量産機で怖いのは個々の部品の品質により同一故障を多発する場合も多々あります。同時期に製造されたXシリーズの機種においても同様の症状が発生していると考察できます。このスイッチング動作トランジスターは各機種に共通部品です。今回X-10Rでの故障ですがXシリーズは他機種同時期に多数台製造されています。今回の症状はX-10R後期ロットに製造されたデッキでの症状です。dbxユニット接続端子の短絡ピンが絶縁されず安価になっていました。追加で絶縁チューブを挿入しました。シリアル番号が5桁です。
参考 錫ウィスカ https://pub.nikkan.co.jp/uploads/book/pdf_file52a673f3b180a.pdf
マイグレーション症状はリード線に銀(Ag)が含有されているためですが ウィスカ症状は亜鉛(Zn)・錫(Sn)などの含有による症状です。初期のトランジスターではリード線に金メッキ(Au)が施されていました。ウィスカ症状は古くから知られている事柄であり 金属の圧縮応力などにより金属の単結晶がひげ状に成長する症状です。
| JRC NJM2903D マイグレーション症状 リーク状態 |
現代では鉛が有害金属であることから 鉛と錫の半田から鉛フリーの半田(RoHS)に変化し 錫の含有量が増加した結果 ウィスカ現象による電子機器でのトラブル発生も増加しつつあります。各メーカー開発部門では様々なウィスカ対策を実施しています。ハンダ付け表面の絶縁被膜コーティングなどです。トランジスター内部の故障ではないため一番簡単な解決方法は トランジスターを取り外し各リード線を清掃後エンパイヤチューブを挿入することで ある程度回避できると思います。
参考 マイグレーション現象 http://www1.coralnet.or.jp/fjk/migre/mg100.htm
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| 現在使用している各種半田 |
参考 基板への半田付け http://www.jwes.or.jp/mt/shi_ki/ms/pdf/hinsitu.pdf
修復目的としては過去から保管している録音されたテープをデジタル化する目的でお蔵入り動作不良のデッキをなんとか自力で修復しています。各デッキにおいては再生系だけで満足していればよいのですが 再生系はすでに修復は完成しています。過去に録音されたテープのデジタル化もボチボチと進行中です。欲が出てスケベ根性で デジタル音源・デジタル録音・電気楽器演奏が主流の現代において アコースティク演奏音楽などアナログ録音系も何とかならないのか ? 特性の良好なまともな生テープは数多く入手できない中 初期性能近くまで修復したいと思い深追いの結果 ドツボにはまっています。
小生のステレオシステムはパネル面が゛いぶし銀、銀色がほとんどであり パネルが黒色はカセットデッキで一台だけです。そのカセットデッキも現在山小屋で放置状態です。黒色のデッキ、アンプなどが当時流行しましたが小生には購入意欲はありませんでした。SANSUIのオーディオ機器が火ぶたであったと記憶しています。小生の好みにより明るい色合いのオーディオ機器で統一しています。PCも同様に筐体はクリーム色のミドルタワーです。現在はPCもオーディオ機器の一部となっています。PCがテープデッキと同じ働きをしています。真空管式コントロールアンプの TAPE1 に接続してあり 記録媒体は主に ハードディスク(HDD) となっています。PCはデジタル編集機・コピーマシーンとなっています。録音のサンプリング周波数は現在CDより高い周波数の 96KHz まで対応します。通常は他のCDプレーヤーと互換性を取るため CDフォーマット(WAVE) の 44.1KHz を使用しています。デッキ修復作業時は TAPE2 に接続し コントロールアンプの AUX2 にオーディオジェネレーターが常時接続してありますので いつでも 400Hz キャリブレーション信号が使用することができます。そのおかげでオープンテープに録音する場合 テープの最初には 400Hz , 0dB 信号が10秒ほどキャリブレーション信号として録音しています。テープの種類による特性を把握するのに使用しています。昔録音したオープンリールテープをある程度デジタル変換しましたのでそのデーターがHDDに記録されています。現在はアナログ音源をデジタル編集をした後 オープンリールテープにデジタルからアナログに変換後その音楽をテープデッキで録音して当時の雰囲気を味わい時々遊んでいます。マニアご用達品 高額なデジタル機器・アナログ機器は別として 一般的な現代のデジタル機器と比較すると骨董品のアナログ機器を維持し運用するには思った以上の出費を覚悟しなければなりません。
人間もアナログ人間であればステレオ装置は もちろんS/N比の悪いアナログ骨董品真空管による三極管・三極管接続システムです。50C-A10はビーム4極管の三極管接続で動作しています。分類は三極管ですが純粋の三極管ではありません。音色はデジタルシステムよりは良好です。時にはアンプはluxman SQ38(サンパチ)FD、スピーカーはAltec Lansing 604-8K 38(サンパチ)同軸ですが デッキは残念ながら2tr38(サンパチ)ではありません。 TEAC X-10Rが実働し 4tr19cm/sですが結構相性の良いアナログ音源を再生し楽しんでいます。
ジャンルは幅広くクラッシックから初期のスイングJAZZ。ハーモニーのないモダンJAZZはちょっと敬遠。HIT POPS・歌謡曲・演歌まで懐かしの音楽が主流です。シネマサウンドは時代を代表する音楽であり現代でも通用する音楽です。ウエスタンエレクトリック録音機器によるサウンドでありマイフェアレディー・サウンドオブミュージックなどが聞きごたえがあります。たまには音楽と違い寄席の雰囲気アナログ音源の 桂米朝[地獄八景亡者の戯れ] 長時間古典落語は米朝の絶頂期であり音楽とは少し逸脱しますが面白いジャンルです。ただ現代のコンヒューター作曲・電気楽器演奏などによる口先だけのシンガーは敬遠します。見栄えばかりであり生では聞くに堪えません。口パク***38(サンパチ)間違い***48(フォーティー,エイト?・ヨンパチ)など音痴と違いますか ? 過去に活躍したシンガーでも懐かしの歌番組などの生放送ではでは音程が狂っています。イメージダウンです。名誉棄損となりえますので個人的名称は記載しませんがご想像いただければ結構です。
前置きが長くなりました。個人的な主観・余談はこの辺で幕とします。本題のX-10R修復・調整へ進めます。時々横道にそれ脱線しますが愛嬌とご理解いただきご辛抱ください。
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| 本体パネルより分解着脱したメカニズム X-10R その4 |
修復前の点検
今回も X-10Rその3 と同様に業者の梱包不手際により左右リール台がフロントパネルに接触した状態で到着しました。本体を垂直状態で小さな段ボール箱で梱包され 輸送中にほかの混載物により圧迫されてリール台が陥没したように思います。その他点検しましたが破損個所がないため受領しました。20Kg以上の機器では輸送のための梱包が大変です。新品購入時の梱包は デッキパネル面が上部となっており水平状態で数多くの緩衝材で保護していました。購入後輸送箱は通常保管される方は少ないように思います。小生も可燃ごみとして廃棄しています。輸送箱を保管できるような広い住居ではありません。J**AJY氏 故人は別ですが。
異常個所の点検を兼ねて機器を分解します。
以下のような修理作業をするとメーカーサービスにテープデッキは修理依頼ができません。ご注意ください。自己責任での作業です。
X-10R メカニズムの分解修理(オーバーホール)
キャビネットの分解は本体を保護シートの上に上面パネルを下面とします。保護シートと呼び方は良いですが修復作業は汚れますので作業台に段ボールパッキン古新聞の養生シートを敷きます。機器を回転する場合はその養生シートを回転させます。後部筐体左右にあるM4のねじ8本の取り外し。左右脚のM4ねじを4本取り外しますと後部筐体が外れます。ねじ類・左右脚は紛失の無きように別保管してください。
後部筐体も別保管しますと写真の状態となります。
システムコントロール基板の左右リールモーター後部にとりつけられたM4 の取り付けねじ2本を取り外し 基板を上部シャーシーに仮止めをします。その場合各配線を結束していた結束バンドを切断します。配線にあまり余裕がありません。一部基板に接続していたコネクターを取り外さなければならない配線もあります。電気回路点検にはぎりぎりでコネクターは基板に接続はできますので安心してください。
基板を上部に仮固定しますと写真の状態となり内部点検ができます。これからのメカニズムを分解するために周辺部品を分解します。
メカニズム全体をフロントパネルから取り外すには周辺部品を取り外さなければなりません。
テープカウンター制御用のスイッチ取り付け金具の取り外し。写真中央の金具上部にある M3ねじ2本で金具にとりつけられたスイッチ・タイマー用プランジャー基板が取り外せます。
その右横にあるテープカウンター取り付け金具はメカニズムのシャーシーに2本のM3ねじで取り付けられており カウンターブロックが取り外せます。カウンターベルトも外しますと白色のリード線コネクター補助基板から取り外し別保管します。
続いてスイッチ取り付けシャーシー補強金具の分解です。
メカニズムにフロントにある電源スイッチなどが取り付けられたシャーシー補強用のL型金具がメカニズムシャーシーにとりつけられておりメカニズムを取り外すのに邪魔になりますので L型金具にあるM3皿ねじ゛とM3ねじを取り外すと補強金具を取り外します。
写真中央のl型補強金具。
メカニズムをフロントパネルから取り外す前にリールモーターシャーシーにあるプランジャーと連結している金具のEリングを取り外し作業が必要です。
Eリングは紛失しやすい部品です。注意保管してください。
ポーズ・キャプスタンソレノイドコイルの2連駆動シャフトが外れます。別保管してください。
メカニズム後部の付帯部品を分解しましたらフロントパネルにあるM4皿ねじ4本とM4なべねじ2本を取り外しますとメカニズム全体が本体パネルより取り外しができます。
この状態でメイン基板にコネクターで接続されている録音ヘッド・再生ヘッド、消去ヘッド、キャプスタンモーター制御基板のリード線を取り外すとメカニズム部が分離できます。ブログ最初に掲載している写真状態です。
キャプスタンドライブベルトが溶解しメカニズム各部にべっとりと付着しています。
フライホイル左右違う位置にベルト接触面が段がついています。再組み立ての時にフライホイルは取り付け位置を間違わないでください。
キャプスタンモーターが取り付けられている後部シャーシー取り付けM4ねじ 5本を取り外すと 左の写真状態まで分解ができます。これからの溶解付着したベルト除去作業が大変です。ベトベトしており手が汚れます。手洗いしてもなかなか落ちませんが手袋を着用しての作業は細かな作業のため使用することができません。
分解においてメカニズムシャーシーに取り付けられているテープカウンターは作業の邪魔となりますので取り外しておきます。
後部シャーシーに取り付けられているキャプスタンモーターとキャプスタン制御基板を取り付けているねじを取り去りますと左の状態となります。キャプスタンモーター取り付け台三角の金具は取り付け位置により平ワッシャーが挿入してあり、取り付け位置でのワッシャー挿入状況を記録してください。キャプスタンモーターは角度がずれて取り付けられています。取り付けシャーシーに対し垂直ではありません。
キャプスタンモータープーリーもモーター軸から六角レンチを使って取り外し エチルアルコールとウエスで残留物がなくなるまでクリーニング作業をしてください。プーリーを再組み立てのことを考えてプーリー取り付け位置を記録してください。キャプスタンモーター軸受には微量のスピンドル油を適宜注油します。
融着したキャプスタンベルト除去作業及び分解注油
フライホイルに付着したベルト除去作業において前作業が必要です。左の写真のごとくキャプスタン軸にテープカスが多く付着しており これを除去しないと軸受けからキャプスタン軸を外すことができません。テープカスが付着したまま抜きますと 軸受けに傷が発生しメタルを痛める原因となります。アルコールなどで除去は完全にできません。
ここで除去用治具・工具を作成します。小生がよく活用します竹箸をバイトの刃のように鈍角に先端を加工した竹箸でテープカスを根気よく削り出します。間違っても金属のへら・マイナスドライバーなどを使用しないでください。キャプスタン軸に傷が入ってしまいます。
今回同時進行でテープパスに付着したテープカス除去作業をします。左の写真は購入したデッキ その4 での再生ヘッドの汚れです。その他のヘッド、テープガイド金具も同様に多量のテープカスが付着した状態です。これらの残留物が完全に無くなるまで根気よくクリーニング作業をしなければなりません。
クリーニング作業に使用する溶剤としての準備物は エチルアルコール、自動車用石油系ハンネリワックスを準備しました。安価なカーワックスですと成分にコンパウンドが含有されており金属部の研磨に使用します。
準備物として汎用工具以外の工具としては歯ブラシ、竹箸の加工した道具と大量のウエスが必要です。竹箸はカッターナイフで時々先端を切削してテープカスを除去します。
又組み立てる場合には軸受けに注油・シャーシー取り付けスライド金具などに分解掃除後グリスの注油作業が発生します。スピンドル油・タービン油・スプーレーグリスなどを適宜準備します。ある程度の油類・アルコール.類はホームセンター・ドラッグストアでも調達できます。
失敗事例
上記油脂類の中でスプレーグリスが曲者です。このブログを記載した時期から数年経過しますが メカニズムの動きが悪くなり 再度メカニズムを分解する羽目になりました。スプレーグリスが固着し動きが悪くなっています。グリス品種を掲載している白色のチューブ入り信越シリコングリス(G501)に変更しました。ホームセンターなどで数百円で入手できるスプレーグリス等は大きな動力で動作する機械用途であり 精密な機械であるテープデッキなどの修復用途としては不向きです。スプレーグリスは経年変化で油脂が固くなるようです。最良は二硫化モリブデングリスがよいのですが手につくとなかなかグリスは除去できません。生産工場では女工さんがこの黒っぽいグリスが手に付着するとなかなか手洗いしても落ちないため嫌われていました。信越のシリコングリスは経年変化でグリスは硬くなりません。使用するグリスの品種選択に注意してください。 (2021/10/23 追記)
準備しました油脂類、竹箸加工品です。写真には歯ブラシ、カーワックスは写っておりませんが汎用品ですのでご勘弁ください。
これらの溶剤、治具を活用してメカニズムの分解修理作業をします。写真のエチルアルコールですが修復作業では多くのアルコールを消費します。小瓶のクリーニングキットではすぐに消費してしまいます。茶色の瓶は試薬でエチルアルコールが99.5%無水アルコールであり特定された薬局で購入となります。結構高額です。一般的なエチルアルコール(エタノール)では日本薬局方のエチルアルコールが100ml中83%含有されており残りはイソプロピルアルコール(イソプロバノール)が含まれたエチルアルコールが一般的で安価です。イソプロピルアルコールとしてはOA機器・複写機のメンテナンスによく使用されます。工業的には清掃箇所に数多く使用します。通称エタノール、消毒用アルコールと呼ばれています。
キャプスタン軸に付着したテープカスを完全に除去した後 軸受けから左右のフライホイールを抜き取ります。
その時に注意が必要です。取り付け位置が間違って組み立てる恐れがあるために 必ず油性フェルトペンなどを使って軸受けとフライホイールには識別できるように目印を付加してください。間違って組み立てた場合 ヘッドタッチのテープテンションが狂ってしまいますので注意を要します。組み立て時にはスピンドル油を竹箸加工治具を使用して適宜注油してください。
テープ走行の安定策として キャプスタン軸ではスラストは発生しますが フライホイルと軸受けにマグネットが取り付けられており 磁力の反発力を利用してキャプスタン軸が移動しないような構造です。赤色のリングがマグネットです。軸受けにもマグネットが取り付けられています。
今回の作業では約200ccのエチルアルコールを消費しています。メチルアルコールでもよいのですが医薬用外劇物ですので取扱には自己責任において使用してください。薬局で販売されており 印鑑を持参しないと販売してくれません。燃料用アルコールは不純物が含まれており修復作業にはお勧めできません。メチルアルコールは毒性があるため使用環境に配慮が必要です。
左の写真はピンチローラー作動アームの分解掃除組み立て作業です。ワッシャーの挿入位置などを詳細に記録してください。
左の写真はピンチローラー作動アームの分解掃除組み立て作業です。ワッシャーの挿入位置などを詳細に記録してください。
ピンチローラー駆動アームシャフトのグリスが劣化し メカニズムがスムーズな動きをしていません。3台のデッキで同じ場所の油切れ劣化が確認できています。古い油脂を除去した後 新しいグリスを適宜注油します。このメカニズムでは大きな力で駆動している個所です。分解時にはワッシャー類の種類、取り付け位置などを詳細に記録してから分解組み立て作業の実施をお願いします。メーカーサービスなどでは数多くの経験により間違った組みたてとはなりませんが 記憶力の悪い小生では詳細な記録が重要となります。金属ワッシャーにも裏表があります。駆動部とシャーシー間にも適宜グリスを塗布してください。
ピンチローラーアーム駆動部の分解、組み立てが完了した写真です。スライド金具、駆動部に新しいグリスが注油されているのが確認できます。手順は変更となっても結構ですが この状態でヘッド・テープパスに付着したテープカスの除去作業です。アルコールでは思った以上に除去できません。歯ブラシとカーワックスを使ってテープパスをこすりますと石油系のためテープカスが剥離していきます。ヘッド面の頑固なものは竹箸の鋭角に加工した先端で 付着物をこすりますと除去できます。竹箸は金属に比較して柔らかい材質ですので重要なヘッド面を傷をつけることがなく除去できます。
清掃作業が完了したフライホイールとキャプスタンモーターです。キャプスタン軸受けには適宜スピンドル油を注油後フライホイールを挿入してください。その時点で油止めリングの挿入を忘れないようにしてください。ベルトはTEACサービス部門より購入した再生産されたキャプスタンベルトです。この状態で逆M型にベルトを取り付け組み立てます。その場合スラスト調整プレートには少量のグリスの注油が必要です。
キャプスタンモーター制御基板にある制御パワートランジスターの放熱板には組み立て時シャーシーとの間に少量のシリコングリスを塗布します。放熱効果をよくするためです。
組み立て後の動作確認 重要
ここまで組みあがれば元に装着するのですが 可変直流安定化電源を所有している場合 DC:12Vの電圧をモーターに直接加えるとメカニズムの動作確認ができます。接続コネクターでの端子番号は⑨・⑩ピンに接続します。モーター回転方向切り替えはシステムコントロール基板で制御しているため 回転数制御基板はスルー状態です。
特にベルト・フライホイールの誤装着、FWD,REV でのベルト走行位置の目視確認が重要です。テープ送り出し側(供給リール側・サプライリール側)がフライホイル凸部分になっているか ? です。又巻取り側(巻取りリール側・テイクアップリール側)のキャプスタン軸は凸のないところにベルトが走行しているはずです。これが デュアル・キャプスタンメカニズム の特徴で 凸部分をベルトが走行すると凸部での直径が大きくなり回転速度が遅くなる構造です。FWD,REV と逆転走行となるようにモーターに加わる電圧を逆接続するたびに ベルト走行位置が変化しているかを目視点検です。特に注意が必要なのはキャプスタンモーターを取り付けている三角のプレートをシャーシーに取り付ける場合 意図的に三か所の取り付けねじ一か所に平ワッシャーが挿入されてモーター軸は微妙に傾く構造です。一枚もしくは二枚挿入されています。モーター軸はバックプレートから見れば垂直ではありません。モーター回転方向の逆転に伴い ベルトがフライホイールでの走行位置をスムーズに移動するための小細工です。
簡単に点検できるように 10P接続用新規コネクターを準備し2回路用トグルスィッチで電圧逆転回路を組み立てた治具を作成しました。
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| 修復完了したメカニズム テープパス汚れも修復完了 |
上部の写真はヘッドブロック・フライホイール・キャプスタンモーターが正規位置にとりつけられ テープ走行系の汚れ・各ヘッドの汚れが完全に取り去られたメカニズムです。溶解したキャプスタンベルトも純正部品のベルトに交換しました。写真左上部はねじロックペイントです。ねじロックペイントを塗布していた各ねじは緩み止め防止としてねじ部に再塗布してください。各部のねじロックペイント塗布部を確認することにより以前の修理経歴がある程度判明します。今回のX-10R その2、その4では一度もメカニズムなどは分解した形跡はありませんでした。工場出荷後一度も内部が触られていないように思います。メーカーサービスではこのような個所を確認して修理を受け入れるか?非か?を判断していると思います。ヘッド調整ねじ、各SVRなどをいじられた機器は受け入れてもらえないと判断しています。メーカーサービスでは無闇に内部をいじられた機器の修理は必要以上の修理時間がかかるためメーカーサービスお断りと推察しています。
メカニズムの動きはスムーズな動きとなっています。プランジャーよりの駆動金具を手動で動作してメカニズムの動きを確認をします。
この状態まで完成すれば ヘッドブロックをフロントパネルに装着します。
メカニズム動作には問題ありませんか ?
同じような説明となりますが デュアルキャプスタンメカニズムの重要な事柄です。このメカニズムはデュアルキャプスタン構造であり 間違った組み立てをすると不安定な動作をします。特にキャプスタンモーターの取り付けにおいて注意が必要です。モーター軸がキャプスタン軸と平行ではありません。三角型モーター取り付けシャシーと後部シャシー間に一ケ所、金属ワッシャーが挿入されており メカニズムシャシーに対して垂直ではありません。メカニズム後部シャーシーとモーター取り付けシャーシー間に金属ワッシャーが挿入されているためモーター軸が垂直ではありません。分解・組み立て間違えをすると FWD,REV 切り替えた時にベルトの走行位置が変化せず 正常にテープをヘッド面に圧接することができません。ベルト走行位置の変化がないと両キャプスタン間でテープたるみが発生します。モーター軸が傾いているためモーターの回転方向に応じてベルトが移動できるような構造です。Aシリーズのような供給側リールモーター逆回転トルクによるバックテンションヘッド面テープ圧接構造とは異なります。旧機種ではテープパッドという部品で ヘッド面にテープをフエルトを使ったバネの圧力により圧接する構造の機種もあります。
デュアルキャプスタンメカニズムでは 左右フライホイルには違う位置に凸型段がついており 送り出し側のフライホイルは凸型段の上をベルトが走行します。フライホイルの直径が大きくなりキャプスタン軸の回転は巻取り側のフライホイルに比較して回転が遅くなります。各キャプスタン軸でのテープスピードに多少の違いが発生するためテープがピーンと張られヘッド面に圧接する構造です。このメカニズムの欠点は 必ずスピード違いによるキャプスタン軸がテープの磁性体面とのスリップ現象により キャプスタン軸がテープの磁性体面で摩耗する欠点があります。Aシリーズではここまでキャプスタン軸表面の摩耗頻度は多くありません。
X-10Rその8での症状であり 以前の所有者がオーバーホール後組み立てにおいて 間違って組み上げたために発生し 又キャプスタン軸の摩耗のため発生した症状事例です。テープ走行不安定症状で長時間悩んだ故障事例です。FWD,REV走行でテープスピードが異なるのもキャプスタン軸摩耗による現象かもしれません。0.5%以上 走行テープスピード差が発生しておれば規格外と思いますが。0.5%のスビード差とは 標準テープ 3000Hz(3KHz) の周波数に対して周波数誤差 0.5%は 15Hzです。周波数で示した場合 3015Hz~ 2985Hzの間を示せば何とか合格です。FWD 3015Hz,REV 2985Hz であればスピード誤差は1%です。
家庭用VTRのメカニズムではバックテンション調整はテープの供給側リールに革のブレーキシューのバンドブレーキが装着されています。テンションアームの角度によりバンドブレーキの利き具合を自動的に調整して 回転ヘッド及び固定ヘッド面にテープを圧接する構造です。
使い込まれたメカニズムではキャプスタン軸の摩耗が進み 正常に各ヘッド面にテープが圧接されずテープ走行が不安定となり 修復を断念したメカニズムもあります。ある方向は正常だが逆方向で走行不安定となっていました。
装着前にパネル面の清掃作業をします。30年余りワックスなどが塗布されていないデッキです。カーワックスにはコンパウンドを含有しているためにパネル面を磨き上げますと汚れもなくなり 見違えるような仕上がりになります。美観も修復作業における心構えです。
ただテープ走行系・ヘッド面をカーワックスを使って清掃・研磨しましたが ワックス分はアルコールを含浸したウエスでワックス成分を除去してください。
修復完成したメカニズムをフロントパネルに取り付け その他の微調整
上記の写真は分解修理したメカニズムを元の位置に取り付け 周辺の分解した各パーツも元の位置に取り付けた状態です。
この状態ななるまでには分解手順の逆の作業を実施してください。パネル面でのテープパス部のテープカス付着が各テンションアームローラー・インピーダンス(ガイド)ローラーにも発生していました。アルコールだけでは完全に清掃ができません。カーワックスと歯ブラシを使用して細部を清掃することによりテープカスが完全に除去できています。清掃後アルコールを含浸したウエスでワックス分は取り除いてください。
各ローラー・ピンチローラーの軸受け部と軸受け(シャフト)もウエスを使って旧の油を除去します。清掃後スピンドル油を各シャフトとローラー軸に適宜注油します。
ポリワッシャの挿入位置も間違わず元に取り付けます。回転部分は必ずスラストがあり 極小さいですがスラストガタがあって正常です。各ローラーがスムーズに回転できているかを 手動で回転させ確認してください。
テンションアームローラー・インピーダンス(ガイド)ローラーのスラスト調整、隙間(クリアランス)は 0.05~0.3mm となるようにポリスライドワッシャーの厚みを調整もしくは挿入するワッシャーの枚数で上記スラストとなるように調整します。
参考として通常の名刺の厚さは約0.2mmです。小生の場合簡易隙間ゲージとしてよく使用します。
元に組み立て後テープ・空リールを装着しない状態で メカニズムが正常に動作をしているかを確認します。左右のテンションアームローラーを上側移動するとメカニズムが動く状態となります。メカニズムの正常な動作が確認できれば その後テープ・リールを装着し 電気回路の点検作業へと駒を進めます。今回キャプスタンベルトを交換をしています。キャプスタン軸が正常な方向に回転しているかを目視点検してください。
各テープパスの清掃が完了した時点でのテープガイド金具および録音、再生ヘッドです。きれいにクリーンアップしている状態です。
テープ走行試験の前に確認しなければならない個所があります。それは今回各左右のリール台がパネルに接触した状態で到着した部分の リール台高さ調整作業です。
左右リール台高さ調整です。各リールモーターシャフトにM4ねじ2本を緩めるとリール台の高さが調整できます。英文のサービスマニュアルでは詳細の取り付け寸法が記載されていません。TEAC7号プラスチックエンプティーリールでテープがリールの中心となるように調整する と明記されています。調整方法としては小さな三角定規でテンションアームローラーの中心位置の寸法を計測します。その値で空リールの中心点に調整しますがその時には 名刺を各リールのターンテーブルとパネルの隙間に挿入する名刺の枚数を変化させて適正位置に調整します。最終確認の調整は実際にテープを走行させてテープがリールの中心で巻き取られているかを確認して微調整します。
X-10R その2 で発生していたメカニズム不具合箇所の点検です。テープ走行中にピンチローラーアーム・クリアランスの確認です。緩衝ゴムと軸との間隔が約1.0mm前後であることを目視確認します。ピンチローラーが正常な圧力とならず 時々回転ムラ症状で悩んだ症状です。
装着前にパネル面の清掃作業をします。30年余りワックスなどが塗布されていないデッキです。カーワックスにはコンパウンドを含有しているためにパネル面を磨き上げますと汚れもなくなり 見違えるような仕上がりになります。美観も修復作業における心構えです。
ただテープ走行系・ヘッド面をカーワックスを使って清掃・研磨しましたが ワックス分はアルコールを含浸したウエスでワックス成分を除去してください。
修復完成したメカニズムをフロントパネルに取り付け その他の微調整
上記の写真は分解修理したメカニズムを元の位置に取り付け 周辺の分解した各パーツも元の位置に取り付けた状態です。
この状態ななるまでには分解手順の逆の作業を実施してください。パネル面でのテープパス部のテープカス付着が各テンションアームローラー・インピーダンス(ガイド)ローラーにも発生していました。アルコールだけでは完全に清掃ができません。カーワックスと歯ブラシを使用して細部を清掃することによりテープカスが完全に除去できています。清掃後アルコールを含浸したウエスでワックス分は取り除いてください。
各ローラー・ピンチローラーの軸受け部と軸受け(シャフト)もウエスを使って旧の油を除去します。清掃後スピンドル油を各シャフトとローラー軸に適宜注油します。
ポリワッシャの挿入位置も間違わず元に取り付けます。回転部分は必ずスラストがあり 極小さいですがスラストガタがあって正常です。各ローラーがスムーズに回転できているかを 手動で回転させ確認してください。
テンションアームローラー・インピーダンス(ガイド)ローラーのスラスト調整、隙間(クリアランス)は 0.05~0.3mm となるようにポリスライドワッシャーの厚みを調整もしくは挿入するワッシャーの枚数で上記スラストとなるように調整します。
参考として通常の名刺の厚さは約0.2mmです。小生の場合簡易隙間ゲージとしてよく使用します。
元に組み立て後テープ・空リールを装着しない状態で メカニズムが正常に動作をしているかを確認します。左右のテンションアームローラーを上側移動するとメカニズムが動く状態となります。メカニズムの正常な動作が確認できれば その後テープ・リールを装着し 電気回路の点検作業へと駒を進めます。今回キャプスタンベルトを交換をしています。キャプスタン軸が正常な方向に回転しているかを目視点検してください。
各テープパスの清掃が完了した時点でのテープガイド金具および録音、再生ヘッドです。きれいにクリーンアップしている状態です。
テープ走行試験の前に確認しなければならない個所があります。それは今回各左右のリール台がパネルに接触した状態で到着した部分の リール台高さ調整作業です。
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| ピンチローラー圧接状況 |
この調整は厄介な調整です。ピンチローラーソレノイドの位置調整作業です。ソレノイドの取り付け位置変更作業です。ソレノイド固定ビスを緩めソレノイド位置調整用ねじがあります。位置調整用のねじでプランジャーのストロークを調整して緩衝ゴムとの間隔を調整後 ソレノイド取り付けねじを締め付ければ完了です。多発傾向ではないと思いますが 長時間原因もわからず時々回転ムラで悩んだ症状です。今回調整したソレノイドはポーズ・ピンチローラー駆動用であり大きな力が必要な個所のソレノイド(コイル)です。
電気操作パネルの分解掃除と各2重ボリューム取り付け位置の調整です。
メカニズムのフロントパネルと同様にパネルを分解してワックスがけします。各VRつまみを取り付ける際には リール台調整と同様につまみのパネル面からの寸法を同一として隙間に名刺を挿入して取り付けます。つまみの内側は構造上取り付け位置の微調整はできませんが下側の右チャンネルつまみは左チャンネルつまみのマーキング位置が同じ位置となるように六角取り付けねじを締めつけます。

メカニズム操作パネル部のワックスがけおよび 操作つまみの取り付け高さ調整作業です。パネルのワックスがけにおいてはパネルに突起している部品を極力取り外してワックスをかけないとムラが゛発生しやすくなります。その後のつまみ取り付け高さも揃えます。
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| リール台バンドブレーキ部 |
以上の細部に渡る組み立て後の点検調整が終了しましたら 実際にテープを装着して動作試験の項目に進みます。ブレーキ機構部については大きな力で動作している個所とは異なります。テープを装着して各モードでのリール回転具合、左右のリールモーター・バックテンションなどを点検します。特にテープ停止動作時テープのたるみが発生していないかを確認します。バントブレーキはリール台高さ調整の時にターンテーブルを取り外しますとリール台とバンドブレーキ表面の点検ができます。
リール台の各巻取りトルクはAシリーズと違いトルク調整箇所はありません。システムコントロール回路で制御されています。運用方法ですがエンプティーリール(空リール)は使用するテープの大きさに合わせた空リールを使用しなければテープたるみの原因となります。特に早送り・巻き戻し作業においてリールの高速回転による遠心力によりブレーキ圧力がアンバランスとなります。
10号リールで動作している場合は途中で停止し 再動作させた場合リール台の回転数が低下します。
劣化したテープを使用した場合テープバスでの摩擦が大きくなり巻き戻し・早送り時にテープが途中で停止するテープも発生していました。製造後30年以上経過した当時国内で有名な販売数の多い黒色にバックコートされた SO**,SC** 社 の150番タイプ生テープです。テープ鳴きと同様最悪の磁気テープ劣化症状です。劣化テープでは再生中ガイドローラーとテンションアームローラー付近で異音が発生しテープ走行不安定となっています。生テープのバックコート面溶解症状もあり 糊のような粘りが発生しています。海外製品で有名な AM** の生テープにおいてもバックコート面劣化が見受けられました。長期間保管状態によっても劣化は異なると思います。国宝のように一定温度・湿度の保たれた状態で保管されたテープ類は数少ないと思います。中古品生テープをお探しの場合ご注意を。使い物にならないジャンク品(塵)も市場には多数流通しており お小遣いの目減りも経験しています。
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| 左上 リールサイズセレクトスィッチ |
このデッキでは7号以下のテープを使用する場合エンプティーリールも7号以下を使用しないとアンバランスな動作をしますので注意が必要です。5号テープを使用する場合空リールは7号でも問題は発生しません。この X-10R ではリールサイズセレクターがあります。リールモータートルクをリールサイズにより電子的に切り替えする構造です。10号リール使用時には LARGE モード 7号リール以下を使用時には SMOALL モードとし セレクターを選択する必要があります。
電気特性の調整及び確認作業
測定機器、テストテープ、リファレンステープ、エージング用録音されたテープなどを準備します。調整の基準となる測定機器類が準備できないと次工程の電気的調整ができません。趣味・道楽での領域における修復・調整作業ですので記載内容については参考程度とご理解ください。苦労しましたが海外サイトよりX-10R,X-10 英文サービスマニュアルは入手しました。不得意な英文翻訳・解釈・調整していますので記載内容が間違っているかもしれません。自己解釈記載です。
今回の作業において準備物の中でも一番入手が困難と思われるものは基準となるテストテープ類です。測定機器類は注意深く探せば見つけ出せますが測定機器の精度も確認しなければなりません。メーカー校正費用は結構高額な金額です。時には新品と価格が大きく変わらない場合もあります。製造後10数年経過した場合 旧機種となるとメーカー校正を受け付けてもらえません。校正専門会社では機器の修理・調整はしないが 測定誤差のみの校正作業も存在します。
ISO9001に拘束されない 取引証明不要な自己満足の道楽作業です。
各自の責任においてご判断ください。TEACのアフターサービス部門 MTS では2007年12月に ISO9001を取得しています。定期的にサービス業務に必要な各種測定機類は校正をしていると思います。又校正証明も保管しているはずです。ユーザーの中には特性・数値ばかりを追究する極少ないと思いますが クレーマー的なマニアが存在するのも事実です。
総合調整に使用します測定機器を簡単に説明します。骨董品測定機類ですが YEW class 0.5 精密級測定機器などで自己校正したものを使用します。又測定機器を使用する前には最低30分以上通電してから測定をしてください。いくら半導体を使った測定器でも通電後しばらくは不安定な動作をしており精度が出ない場合があります。同様に修復しているデッキでも通電後はしばらく不安定な動作をしています。レベルセット信号 400Hz/0dB が-0.5dB~-1dBほどの誤差が発生していました。総合調整時にはある程度通電後各部が安定動作となった時点で調整しなければ正確な調整・精度とはなりません。
まずは録音再生テストとなりますので基準となる信号発生装置が必要となります。サービスマニュアルにも標準的な測定システムが記載されていますが それらが準備できなければ調整作業をも進めることができません。又その測定機器も校正された機器を使用しないと正確な設計スタンダードレベル調整とはなりません。測定をするために特殊な治具類も自己で工作・作成しないと調整に手間取る結果となります。
基準信号発生装置
上記写真は シバソク AH979G 連動歪率計 です。任意の周波数での歪率を測定する機器ですが 内部には 精密な正弦波が発振できるオーディオジェネレーターが内蔵されています。20Hz~200KHzまで任意の周波数が低歪率の信号としてプリセットができます。左側のメーターは高感度ACミリボルトメーター 通称ミリバルが内蔵されています。送出する信号レベルを確認するのに使用します。メーター表示も切り替えることができます。テープデッキの調整では基準デシベルは 0dBm(0.775V) で調整をします。又1V 0デシベル 0dBv の表示も可能です。通電後約30分程度プリヒートを実施すると出力レベル・発振周波数が安定します。このデッキの調整の場合は キャリブレーションモード(CAL)で 400Hz/ -2dBm の基準信号レベルにプリセットします。-10dBアッテネーター位置であれば -12dBm の基準信号を出力します。同様にATTが-20dBであれば -22dBm の信号が出力されます。これらの確認のため内蔵のミリバルで出力状況をモニターします。
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| 600Ω オーディオアッテネーター RA-920 |
ACミリボルトメーター
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| AC MILLVOLTOMETR LMV-87A VT106S |
骨董品のACミリボルトメーター(通称ミリバル)です。LEADER LMV-87A と TRIO(現KENWOOD) VT106S ですが随時自己校正をして使用しています。2CH・2針ミリバルであればステレオなど複数個所の測定であれば簡単に2チャンネル同時に測定できますが所有していません。測定結果を表示する測定器です。
測定器である単体のACミリバルとしては合計2台存在します。改造品(真空管式を改造)のミリバルもありますが誤差が多いため使用は控えています。又2台の歪率計にはACミリバルが内蔵されており 各機器の自己校正はしていますが 機種により測定値誤差があります。製造年月の違いがあり使用する機種による誤差も甘味しなければなりません。アドバンテスト製 据え置き型デジタルマルチメーター R6551 も所有していますが ACミリボルトの測定には誤差も多く不向きと思います。又dBm(デシベル)表示ができません。しかしDC(直流)の小さな電圧では測定誤差は少ないと思います。各測定器の特徴によりテープ・デッキの調整では.数値がmV(ミリボルト)の単位は使用しません。入出力信号の大きさは基準デシベルが dBm(0dBm/0.775V) の数値で調整をします。アナログ表示の LMV-87A ACミリバルを常用使用しています。
同じく骨董品の HP(HEWLETT・PACKARD 現Agilent)製オシロスコープ・周波数カウンターとマルチプライヤー(逓倍器) 19インチ標準ラック搭載用
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| 周波数カウンター TR-5142 |
通称10メガの HP 1202B 高感度オシロスコープ と上部左 HP 5216A 12.5MHzの周波数カウンター 上部右 HP 5268 マルチプライヤー(逓倍器) です。同じく骨董品ですが 周波数カウンターは通常 タケダ理研(現アドバンテスト) TR5142 80MHzを常用使用しています。骨董品機器ですが現在でも自己校正しながら活用できています。オシロスコープは垂直感度が 100μV/DIV と高感度でオーディオの測定には最適なオシロスコープです。自己校正しましたが骨董品ですが大きな誤差はありませんでした。マルチプライヤーとはスプリケラーとは逆の動作で入力された信号を逓倍する装置です。これを使いますと誤差が少なく詳細の周波数まで計測します。周波数カウンターは通常サンプリング時間が1秒モードであれは小数点以下の周波数は測定できません。通常100倍と1000倍モードで使用しています。特に副標準テープを作成するときには正確な信号でなければ正確な副標準テープを作ることさえできません。
自動歪率計
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| Meguro MAK-6571A AUTOMATIC DISTORTION METER |
目黒 自動歪率計 MAK-6571A です。400Hz,1000Hz の2種類しか歪率が測定ができませんがフィルタータイプであり操作が簡単で正確な歪率の測定ができます。通常テープデッキの測定では 400Hzと1000Hz の歪率を測定します。カタログでも記載されている周波数での測定値です。各製造メーカーの品質管理用として多用された測定器です。シバソクのAH969G も所有していますが 測定に際して微妙な同調作業が必要であり調整が正確でないと表示する数値もまちまちとなり 通常は MAK-6571A を常用歪率計として使用しています。内蔵ミリバルの基準dBは 1V (0dBv)が基準値でありテープデッキの調整では 0Bdm との差が +2.2dB 発生するため使用はしません。
真空管パワーアンプなどの特性測定では通常 100Hz,1000Hz,10KHz の歪率を測定しますので MAK-6571Aでは 2種類の歪率しか測定できません。そのため シバソク AH979G 連動歪率計 を通常使用しています。任意周波数の歪率が測定できます。ただ測定には測定周波数でのフィルター同調作業が発生し簡単には測定はできません。
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| 道楽部屋の骨董品測定機器郡 |
測定ケーブルはほとんどが自作品です。同時に数種類の測定をするためコネクターはBNC接栓仕様としています。ブランチ接続として使用することが多くT型のBNCアダプターを多用しています。ほとんどの測定機器はハイインピーダンスとなっているためブランチ接続しても測定誤差はほとんどありません。短・長のBNC同軸ケーブルを用途に合わせて測定しています。
チェックシートによる測定(ELECTRICAL ADJUSTMENTS AND CHECKS)
英文によるサービスマニュアルに従い 調整項目の測定を項目順に確認していきます。まずは各増幅回路が正常な動作をしているか? の基本的な電気特性のチェックです。
作業前の注意事項
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| SONY HEAD DEMAGNETIZER HE-2 |
着磁・消磁・ヒステリシスループなどの磁力については 詳しくは教科書・検索サイトなどを参照してください。
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| デッキを水平状態として各レベル調整作業 |
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| デッキを水平状態にするための治具 |
以下の調整をするにはデッキが垂直状態であればメイン基板の各SVRが調整できません。そのためにはデッキを水平状態にしなければ7号リールテープを装着して動作することができません。横倒しでは7号リールは装着できません。今回調整用治具としてL型の金具を作成しました。システムコントロール基板が左右リールモーター後部にM4ねじで固定されています。この取り付け位置にL型金具を装着し水平に近い状態でも金具によりシステムコントロール基板が浮いた状態となります。大きな力が基板に加わりません。水平に近いこの状態では後部端子に接続する測定ケーブルのコネクターが圧迫されます。メイン基板シャーシーも同じく3cmほど嵩上げをします。これらの作業によりようやく調整作業が可能となりました。TEACのサービス部門ではどのようなスタイルで調整しているのでしょうか? たぶんXシリーズ用として特注の治具、サービスマウントを使用していると推察します。作業机が傷がつかないように緩衝ゴムを装着しています。
このように作業環境も整備しなければ調整作業を進めることもできません。試行錯誤しながら作業を進めます。
基本的な増幅回路の調整(MONITOR PERFORMANCE)
各入・出力端子における基本的なレベルの確認及びこの機器においての標準設計値(スタンダードレベル)に調整します。アンプなど他の機器とデッキは接続しますが 互換性のとれた適切な信号のやり取りをしなければなりません。接続するための信号レベルを調整・確認をします。
1項目 dbx出力端子レベル調整L-ch
正弦波400Hz/-22dBm(61.5mv-10dB)をオーディオジェネレーターから出力します。
LINE VR は最大値(MAX)の位置に合わせます。
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| dbx 出力端子レベル調整 |
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| LINE 目盛6.5付近 OUTPUT CAL 位置 |
測定結果は -8dBm(306mv) に調整します。調整するSVR dbx gain R369L-ch です。
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| YEW class 1.5 VT106S のメーター表示スケール |
この測定ではミリバルの感度を-10dBレンジで測定することをお勧めします。0dBレンジでは目盛は-8dBmに合わせるのですがミリバル感度を上げて-10dBレンジであれば丁度メーターフルスケールに近い+2dBmに調整しますとメーター誤差が少なくなる利点があります。10dBステップですので 0dB-8dB=-2dBとなりますので10dB感度を上げていますのでメーター目盛では+2dBが調整位置となるわけです。dB計算は簡単な 加(+)減(-)で計算できますのでミリバルのV(ボルト)表示はほとんどの場合使用しません。測定時にはメーター目盛が+2dB~-10dB目盛範囲内での測定することにより測定誤差を最小限に保つことができますので 測定時レンジをうまく活用してください。
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| LINE IN 400Hz-12dBm LINE OUT -5dBm 測点A の測定 |
製造時であれば女工さんたちの調整スピードはすばやく 意図も簡単に調整しますが小生にはそのような真似はできません。調整作業に長時間格闘となります。
1項目-2 dbx出力端子レベル調整R-ch
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| メイン基盤 |
次に基準信号を 正弦波400Hz/-12dBm(195mv0dB) に調整した信号で測定します。この場合LINE VRのつまみを調整して上記測定値と同様に TO ENCODER SEND 端子での L-ch 測定電圧が -8dBm(306mv) となるようにつまみを調整しますと目盛の位置は6.5前後の位置で落ち着くと思います。各チャンネル同一入力電圧で同一dbx出力電圧に調整するわけです。
注意 オーディオジェネレーターからの信号レベルは-12dBmですがデッキ内部では0dBの基準信号レベルです。
この時点でR-chのSVR dbx gain R370R-ch を調整して出力が -8dBm(306mv) に調整します。
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| dbx UNIT 接続端子 通常ショートプラグが接続 |
注意事項 これから使用します入力信号は 400Hz/-12dBm(195mv) 録音・再生調整用 0dB デッキ内基準信号;レベルとして取り扱います。
LINE入力VR位置はほぼ 6.5目盛位置となります。このVRの位置が今後調整する場合の標準位置となります。指示が無い限り LINE VRは動かさないでください。
2項目 モニター・アウトプット・レベル調整
出力負荷インピーダンスは不平衡10KΩ以上の負荷とします。(業務用機器では平衡出力負荷600Ωを基準として調整+4dBm BTS) LINE 出力端子での各チャンネル出力レベルの測定。LINE ampの増幅度の調整です。入力信号は 400Hz/-12dBm(195mv) の信号をLINE入力端子に接続し前項目で調整したVR位置での調整であり 写真のような各VR調整位置になっていると思います。OUT PUT VR は CAL の位置に合わせます。
出力(OUTPUT)VRは今後指示がない限り動かさないでください。CALの位置での測定となります。
取扱説明書の記載事項ではCALの位置の説明はありません。このテープデッキでの調整ではCAL位置での測定となります。現実には使用者が使用される生テープの種類により 感度・周波数特性など違いにより±数dBの出力レベル差が発生します。LINE出力(OUTPUT)VRの説明では13ページに "最大で(0)程度に振れるように調整します" と記載されています。これらの記載事項から再生モードではVUメーター表示についてはあいまいな記載しかありません。
現実にはTEACリファレンステープ YTT-8013 を使って録音・再生レベルが同じ値になるように調整しています。ゆえにCALの位置で生テープ種の違いによる感度差などが判明するわけです。他のメーカーのデッキでは再生出力レベルと再生VUメーター表示とは比連動の機種も存在します。このデッキ場合テープ種による録・再レベル差が一目で判明します。このX-10RではCALの位置でVUメーターの指針位置を確認することにより 生テープの録・再レベル差が一目で判明します。
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| ミリバルに接続するチャンネルセレター ケーブル |
測点Aでの測定電圧は -5dBm(436mv) になるようにLINE 出力の調整を line amp gain R403 L-ch,R404 R-ch の各SVRを可変して上記の出力レベルに調整します。録音・再生各モードともこの同じアンプを使用します。この状態でOUT PUT VR を最大位置(MAX)にすると 約1V/rms の信号が出力されます。+1dBm±2dB(600mv~1.09v) 確認後CALの位置に戻してください。正規の調整では6項目再生レベル調整で調整します。
X-10Rよりも以前に製造された古い機種の調整項目では出力端子負荷として外付け10KΩの抵抗に発生した電圧で測定するように記載されています。このマニュアルでは負荷抵抗を取り付けずに開放状態での測定となっています。ミリバルなど測定器の入力インピーダンスはほとんどの場合1MΩ以上となっていますが LINE Amp の出力インピーダンスが比較的低いため負荷抵抗による測定誤差はほとんど発生しません。
この信号レベル測定点が今後の調整する項目での標準測定位置となります。LINE出力VRの目盛はCALの位置です。測点A と呼称します。出力端子に測定ケーブルを接続しているため調整している信号のモニターができません。その場合はヘッドホーン端子でモニター音を確認します。ヘッドホーンを装着したままですと作業性が悪くなるため変換ケーブルを作成してアンプからの音出しでモニターしています。ヘッドホーンアンプはLINEアンプ、VUメーターアンプとは別回路で構成されているため接続によるレベル変動は発生しません。安価なデッキですとVUメーターアンプとヘッドホーン端子が共用されているデッキも存在します。
3項目 録音VUメーター感度調整
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| VU メーター表示 |
4項目 MIC入力ジャック端子での信号入力試験
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| 自作品 測定用各種特殊アダプター類 |
MIC入力調整VRつまみ位置最大(MAX)に設定します。入力信号は 400Hz/-70dBm±2dB(195μv~308μv) の信号により モニター出力調整と同じ測点で -5dBm(436mv) であることを確認します。調整箇所はありません。
上記の数値にならない場合はアンプ回路が故障している可能性があります。トランジスターでの劣化は少ないと思いますが 回路には電解コンデンサーが多用されています。コンデンサーが容量抜けとなると アンプでの増幅度は低下します。今回修復した X-10R 3台とも大きな測定誤差はありませんでした。
ここまでの調整はLINE入力アンプと録再兼用出力段LINEアンプの調整です。録音アンプ送出信号・再生増幅初段アンプはモニタースイッチで切り替えて共用する増幅部です。デッキ内での0dBの信号がLINE出力RCA端子では-5dBmとなるように調整しています。
余談 VUメーター目盛 0VU とは
以後調整において知っておかなければならない事柄があります。それは磁気テープ録音の構造です。使用する磁気テープですが プラスチックテープに細かい磁気鉄粉を張り付けた構造(バインダー技術)です。バインダー技術が優れている会社に写真撮影用フィルムの製造会社が存在します。国内では富士フィルム、外国ではアグファ(agfa)などが該当します。そのフィルムに塗布された磁性体鉄粉は改善され 多種多様の素材が使われています。酸化鉄以外にはクローム・フェリクローム等が開発されました。このように時代とともに磁気素材として改善されました。細かい鉄粉が録音ヘッドから発生する磁力線により磁気テープに塗布された磁性体に転写(記録)される構造が録音です。歪が少なく大きな磁気変化量として磁気テープに残留磁束密度として記録された磁気を再生ヘッドを介して再生すれば元の信号として電気信号に変換されるわけです。録音する場合歪軽減策として交流バイアスという高い周波数の交流信号に録音する音声信号を重畳させて録音します。交流録音バイアス発振回路では100KHz程度の交流信号です。約100Vほどの電圧が発生します。
元の 0VU の話に戻りますが 使われる磁気テープに残留磁束として記録された信号の歪率を表す表示です。時代とともにテープ種により残留磁束密度も大きくなり 0VU のレベルも変化しました。その磁束密度を表示する単位は ***nWb/m (ナノ・ウエーバー/メーター)で表します。
TEACのテストテープ YTT-1003 19cm/sec に記録されている 400Hz 信号が再生基準レベル信号 185nWb/m です。1970年当初磁気テープの性能が良くなく その後ローノイズ・ハイアウトプット型の生テープに改善されます。その時代の基準レベル信号テープとして YTT-5001A 200nWb/m と変化したと思います。この信号が 歪率 1%以下 であるわけです。最終アナログ録音機器でのプロ・スタジオ録音仕様では Quantegy(旧AMPEX)456 の生テープ時代になると基準レベルは 250nWb/m 1KHz MRLテストテープが存在します。
200nWb/m を基準に 185nWb/m とのレベル差は -1.0dB です。
200nWb/m を基準に 250nWb/m とのレベル差は +2.0dB です。
基準となるテストテープの基準レベルが把握できる場合 上記レベル差を甘味すれば調整はできます。
ところが ローノイズ・ハイアウトプット型の生テープでは 200nWb/m の信号であっても歪率は 0.5%以下のテープ種は数多くあります。+3.0VU 表示でも歪率は1%を超えないテープも同様に多数存在します。歪率1%は耳障りとなる歪ではありません。3%を超えると一般の人々は歪っぽいと感じるようになります。このように真空管アンプと同様のソフトディストーションでは歪として感じる感覚が異なります。
S/N比を稼ぐ録音テクニックとしてオーバーレベル録音を私的ですが行っています。ただ通常のアナログVUメーターは動作には遅延があり peak信号は表示できません。突発的な大きな信号であっても大きな歪として感じられないのがこの録音機です。
製造された時代により生テープの歪率は大きく異なりますので探索する必要があります。
以下の調整は正確に再生レベル信号の調整です。なぜならその基準を元に録音するからです。
標準テープ再生による再生特性調整(PLAYBACK PERFORMANCE)
参考記載
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| TEAC TEST TAPE YTT-5001A 400Hz LEVEL SET |
このテストテープを再生した場合 VUメーターの振れは 0dB の位置となり モニター出力レベルは -5dBm の出力となります。
テープデッキを調整するのに 基準となる信号レベル であり この信号を基準として録音・再生調整を進めなければなりません。
所有している YTT-5001A を MRL TEST TAPE(1KHz:250nWb/m)と校正しました。-1dBほどレベルダウンしています。当時作成されたTEST TAPE は経年劣化も発生しており 校正しなければ正規の調整をすることができません。
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| TEAC TEST TAPE に使用されていたテープ種 |
このテストテープの歪率を測定しました。 400Hz 歪率 1.1%
当時国内で販売されていた磁気テープでは ローノイズ・ハイアウトプット型の生テープの場合では 400Hz の信号は 200nWb/m の信号レベルは1%以下の値です。
同じ録音電流では Quantegy(AMPEX) 456 は感度+2dB, 歪率 0.24% と最良の生テープです。
当時販売されていた磁気テープでは 品種・製造メーカーにより適正録音しても数dBの感度差・周波数特性差があります。そのためテープデッキを調整するときにはメーカー指定のリファレンステープを使って録音・再生調整をしています。
TEAC 調整用 REFERENCE TAPE YTT-8013 はメーカーおよび品種は不明です。
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| BTS5313 T19 19cm/s TEST TAPE |
5項目 再生ヘッド角度(ヘッドアジマス)調整(調整はpass確認のみ)
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| 準BTS 低雑音用BSS REFARENCE TAPE |
小生の場合プロ仕様(放送局)古い払下げ放出ものですがBTS規格のテストテープを入手しました。
BTS規格としては現在存在しません。記録されている信号はフルトラックで記録されており作成後年数が長期間経過してします。テープの劣化も考慮して使用しなければなりません。大きなレベル変化が発生していないことにして調整作業を進めます。
テストテープで再生する信号はテープスピード19cm/s 16KHz/-10dB フルトラック で記録された標準テープを再生します。測点は 測点A での測定機器はミリバル、オシロスコープを接続します。数値、波形は最大値に調整し 。X-10Rでは FWD,REVモードで調整をします。調整箇所は各モード再生ヘッドアジマス調整ねじ で調整します。
この調整は再生ヘッドを交換した場合は必ず実施しなければならない項目です。
BTS5313 の標準テープでは角度規正信号は12.5KHzが記録されています。TEACの標準テープ YTT-1003 より低い周波数数値ですが代用使用が可能であると判断しています。
6項目 再生レベル調整
今回の修復において一番確認したかった項目です。基準となる再生レベルです。録音する場合においてもこの数値を基準に録音・調整作業をします。
再生する標準テープは YTT-1003 400Hz/0dB の信号が記録された個所を再生します。再生増幅回路利得(プレイバックレベル)調整です。調整箇所はpb gain FWD R313L-ch ,R314R-ch と REV R315L-ch ,R316Rch の各SVRを調整します。測点は 測点A 接続測定器はミリバルを接続します。各チャンネルの測定数値は -5dBm(436mv) となるように調整します。TEACのテストテープとして YTT-5001A 400Hz 0dB(200pWb/mm) と表記された基準レベル信号のテストテープも存在します。LEVEL SET 用のテストテープです。カッコ内の表示ですが 200nWb/m と表記していても同じレベルのテストテープです。他社の基準レベル信号テストテープには周波数が違っている場合もあります。250nWb/m と表示してあるテープも存在します。このテープの場合は TEACのデッキではVUメーター指示位置は +2dB に合わさなければなりません。OUTPUT VRのCAL位置・測点A での出力レベルは -3dBm に調整します。他社の基準レベル信号テストテープを使用する場合は注意が必要です。テストテープに記録されている磁気信号レベル値を確認しなければなりません。プロフェッショナルユースでは放送局関連では 200nWb/m 音響スタジオなどでは 250nWb/m をキャリブレーション信号として使用されていたようです。ゆえに今回使用したテストテープでは放送局仕様 BTS規格(日本放送協会が制定した放送技術規格) のテストテープであり 185nWb/m と判断しTEAC TEST TAPE と同等品とした理由です。古いテストテープではテープの校正作業をしないと正確なデッキの調整にはなりません。テストテープにも寿命があります。
調整後長期間経過してから判明した事柄ですが YTT-1003 基準信号 400Hzの信号レベルは185nWb/m であると思います。同様に所有しているBTS規格 BTS5313 T19 19cm/s TEST TAPE も 185nWb/m も同じと解釈しました。記録する磁気テープの品質改善により 製造された時期により基準レベル変化も発生していたようです。スタンダードレンジテープからローノイズ・ハイアウトプット型の生テープの普及です。185nWb/m の基準テープで調整の場合 -1dB のレベル差ですので 0VU,-1dB に調整時補正する必要があります。又 250nWb/m のテストテープで調整した場合レベル差は +2dB ですので VUメーター指示位置は 0VU,+2に調整が必要です。
記録する録音テープの品質改良により 同じ録音電流であっても磁気テープに記録される残留磁束密度が高くなり 磁気飽和レベル差が発生します。生テープの改良により 0VU での歪率が改善され S/Nの向上及びダイナミックレンジの拡大となったわけです。
0VUの定義ですが知りえた事柄から 400Hz 正弦波信号での歪率が1%以下の信号レベルであると 解釈しました。又これ以上大きな信号記録であれば歪率が増加するため 録音時のレベル監視・調整するための指針VUメーターでの表示であると思います。
このように時代により基準レベルは違っています。製造された機器の年代により調整する場合 基準信号レベルを把握する必要があります。(追記)
標準テープ(TEST TAPE)について参考記載
現在デッキ調整用TEST TAPE として入手可能なテストテープは高額な輸入品となりますが MRL (MAGNETIC REFERENCE LABORATORY, INC)が製造販売しています。各種用途ごとのテストテープがリストアップされています。http://home.comcast.net/~mrltapes/
その後テストテープの規格として国内では1996年 JIS C5563 で規格が統一されました。このデッキ製造当時1980年前後では生テープの改良も数多く 民生用機器ではほとんどNAB特性で製造されています。各メーカーで使用されたテストテープにはレベル・基準値などの違いがあります。現在使用する場合にはテープの劣化を含め記録されている基準値・周波数などを確認しなければ使用することができません。注意が必要です。http://kikakurui.com/c5/C5563-1996-01.html
追記
最近 所有している 標準テープ(TEST TAPE) の自己校正を実施しました。MRL TEST TAPE と校正したフルトラックで記録されている校正証明はありませんが SUB TEST TAPE (副標準テープ) 250nWb/m 19.05cm/s 1KHz を入手しました。このテストテープ再生値レベルを基準に所有しているテストテープを全数校正しました。調整基準は 200nWb/m を基準レベルとした場合 -2.0dB のレベル差があります。これを基準に現在調整に使用しているBTS規格 TEST TAPE とのレベル誤差が確認できました。BTS5313 T19 TEST TAPE で-2.5dB, 185nWb/m と 200nWb/m との レベル差は -1.0dB ですので 経年変化量は -1.5dB と判明、TEAC YTT-5001A は200nWb/m ですので 経年変化量は -1.0dB と校正できました。この数値を基準に調整すればよいことになります。正常なテストテープとして使用することが可能と判明しました。YTT-5001A のTEST TAPE に使用されていたテープをよく見ますと AGFA 製であり TEAC用として輸入されたテープ種と思います。100番タイプのテープであり テープ品種は PER 555 と思います。ベースフィルム部が茶色・黒色ではなく白色であり 放送局などのプロフェッショナルユースでは テープにCUE位置を記入し マーキング位置が解りやすい構造のテープです。国内では一般市販品としてはあまり見かけない放送局仕様のテープ種を使っていました。今回校正したテープには 校正年月とレベル差数値をシールに記入しテストテープリールに張り付けています。
その後テストテープと同じ仕様であるフルトラック録音できる録音機を入手しました。SONY TC-707FC型です。Quantegy 456 未使用品のテープに 400Hz 200nWb/m の信号を記録したテープを作成し SUB TEST TAPE として活用しています。YTT 5001A は記録時間として1分ほどしかなく扱いにくいため 長時間同じ信号を記録した SUB TEST TAPE を常用使用しています。
基準となるレベルはテストテープ・測定機器などを含め 時々校正しなければ正確な調整とはなりません。
自己校正の結果 古いテストテープですが極端なテープ劣化は発生していませんでした。骨董品デッキ修復作業では製造された年代とともに基準レベル・規格も変化しています。それらを把握しながら修復しなければなりません。1970年前後から生テープの特性は改良されよくなっています。
今回修復したデッキでは基準レベルを 200nWb/m の基準で調整です。憶測ですが X-10R 製造当時のテストテープ YTT-1003 で調整していた場合 185nWb/m ですので YTT-5001A で調整した場合では -1.0dB のレベル差が発生します。1.0dB 差であれば誤差の内と思います。生テープ種によりこれ以上のレベル差も現実には発生します。
基準となるレベルはテストテープ・測定機器などを含め 時々校正しなければ正確な調整とはなりません。
自己校正の結果 古いテストテープですが極端なテープ劣化は発生していませんでした。骨董品デッキ修復作業では製造された年代とともに基準レベル・規格も変化しています。それらを把握しながら修復しなければなりません。1970年前後から生テープの特性は改良されよくなっています。
今回修復したデッキでは基準レベルを 200nWb/m の基準で調整です。憶測ですが X-10R 製造当時のテストテープ YTT-1003 で調整していた場合 185nWb/m ですので YTT-5001A で調整した場合では -1.0dB のレベル差が発生します。1.0dB 差であれば誤差の内と思います。生テープ種によりこれ以上のレベル差も現実には発生します。
VUメーター指示位置が 0VU の位置を指示します。その時点での1000Hzでの歪率は 0.4% を測定しました。基準レベルが 250nWb/m との差は 2dBであり +2dBを 0VUと仮定しても歪率は0.8%以下となっていました。取扱説明書に記載されていた歪率が 0.8% のレベルは VUメーター指示位置はメータースケール最大位置で動作していました。3%の歪まで結構マージンがあります。録音時の再生モニターでは指針が振り切らなければ歪が少ない領域での録音が可能と思います。ただVUメーターではピーク値を指示することができません。ピークレベルも考慮して録音するテクニックが必要です。これが dbx などを使わずに最大限のS/N比を稼ぐためのオーバーレベル録音のテクニックです。このデッキでは音質が変化するピークカット・リミッターの機能はありません。テープ種が変われば特性は変化すると思います。小生は諸先輩のような良い耳は持っておりません。歪率1.0%程度であれば音楽再生では耳障りとはなりません。デッキに使用されているVUメーターは 正規の測定器である交流電圧計(VUメーター)と異なり目安表示です。ミリバルと校正しましたが直線性はよくなく VUメーター左・右でバランス不良も確認できました。
余談です! !
今回基準レベルを探るためにあまり使用頻度が少ないヘッド摩耗が進んでいないデッキを探しました。TEAC X-10R その2、その3、その4 です。その3 は輸送事故のため返品しました。小生のデッキ X-10R その1ではヘッドの摩耗が進んでいます。X-10R その2、その4 は製造後長期間経過していますが 過去に修理・調整をしていないデッキを探しました。工場出荷時の調整された状態であると判断し メカニズムの修復後 400Hz/0dB キャリブレーション信号を録音・再生しました。録音は再生された信号が VUメーターが0VUの位置を指示するように 400Hz/0dBの信号をテープに録音します。その時点でLINE出力端子では -5dBm(436mv) なるはずです。現実にはほとんど誤差がありませんでした。その2、その4で作成したキャリブレーション信号テープと今回入手したBTSテストテープとの再生レベル校正作業をしました。BTS標準テープでは 400Hz/-2.0dB を測定しました。準BTS リファレンステープでは400Hz/0dBの信号が 19cm/sと38cm/s の各信号が記録されています。このテープと比較しましたら-1.0dBの誤差があり 製造後あまり古くないYTT-5001Aと校正し 400Hz/0db のレベルを確認しました。これらの検証の結果から小生の 400Hz/0dB が最終確定となりました。校正されたTEAC TEST TAPE YTT-1003 を所有していればこのような作業の必要はありません。もしもデッキ製造当時のTEACテストテープがあったと仮定してもテープの経年劣化により特性が狂っていると解釈しなければなりません。テストテープにも寿命があります。校正をしない限り使用できないと思います。
その後上記記載の MRL 250nWb/m 1000Hz のテストテープと校正したSUB TEST TAPE と校正結果 YTT-5001A とは -1.0dB の誤差が確認できました。以前の調整とは 1.0dB の誤差ですので許容範囲内と思います。
業務用のテストテープではある一定期間が経過すれば高額なテストテープでも廃棄処理します。最終的には製造メーカーにレベル調整依頼ですが 今回他の箇所を自己で修理しているためTEACへの調整依頼ができません。テストテープ購入となると現在でもアメリカ製 MRL の標準レベル信号テープは数分記録されていますが 注意深く探せば国内でも 2万5千円 程度で入手できます。自己満足の道楽での調整作業では高額であり手が出ません。しかし今回のテストテープの自己校正作業に時間と費用が発生しています。
時々オークションなどでテストテープが出品されていますが購入時には注意が必要です。レベル変動が発生していると解釈しなければなりません。校正しなければ使用することができないと思います。ほとんど校正証明が添付されていません。レベル変化しているものとしてテストテープを購入してきましたが 自己校正結果テストテープ製造後相当年数も経過しており やはりレベル変動が確認できています。校正作業をしないでそのままレベル値を信用して調整すれば正規のレベル調整とはなりません。校正証明のあるテストテープ又は同等品で校正しなければならないと思います。道楽作業による調整ですので 多少の誤差が発生していると 解釈していますが実働には問題がなく 内容を理解したうえで現在調整作業をしています。自己で作成した SUB TEST TAPE(副標準テープ) を作成し フルトラックのデッキは所有していませんので 4Tr-2Ch のテストテープを作成し常用使用としています。新規に作成していますので数年単位であればレベル変化は少ないと思います。自己校正済みの正規のテストテープは最終確認・短時間のみ使用しています。SUB TEST TAPE 作成に使用したテープ種は程度のよい Quantegy 456,PM50-5LB を採用しました。この種の生テープであればリールサイズ違いを含め注意深く探せば新品未使用品も探すことができます。
骨董品測定機器類も同様に経年変化が発生します。ゆえに基準となるものは校正作業をしなければなりません。テストテープも経年変化(劣化)があります。これらを踏まえて自己満足の道楽作業をしています。測定機器の自己校正作業もメーカー校正証明は取得していませんが精密測定機器を使用して定期的に実施しています。
調整時の失敗からのアドバイス
今回電気的調整において調整するSVRなどを間違って調整してしまい 違った調整となることが発生しました。メイン基板調整箇所に "この調整箇所は何の調整する箇所かの略称" をシールに記載し張り付けています。テストテープには調整信号が短時間しか記録されておらず慌てますと間違った箇所を調整してしまいます。とくに再生モード調整部位はFWD,REV,pb gain,L-ch,R-ch,19EQ,9.5EQなどの調整箇所が多数近くに配置してあり誤調整となるわけです。これらのミスを防ぐために表示シールを張り付けましたが 頭の悪い小生は誤調整をしてしまいました。誤調整防止のため調整しない個所は養生テープなどを基板に張り付けて調整する個所のみ 調整ドライバーが挿入できるような方策を立てました。誤調整でもとに戻すための調整に手間取る結果となってしまいます。
当時各メーカーの製造工場などの組み立て・調整ラインでは多機種を製造計画により商品化します。某メーカーでは機種ごとの調整箇所部分だけ穴の開いた調整用シートを作成して基板に張り付けて誤調整を防止していました。
組み立て時メカニズムと基板を装着しますが 装着前にはプリント基板単体で動作試験をしています。その時点で動作確認のため各箇所の荒調整は完了していますので 調整ラインでは微調整でデッキはほぼ調整完了となります。
製造ラインの生産技術担当部門では機種ごとの違った基板単体試験台を作成していました。又不良率を下げる努力もしていました。簡単に動作試験が可能となるように試験台にはテストポイントを圧接できる針状の接続ピンを設置した試験台などで各動作の調整及び動作確認作業をしています。単体試験でNGとなった基板を修復する技術員も配置されています。修復で時間がかかる故障はコンデンサーの容量値間違いで簡単に修復できません。市場に出た後の故障修理とは違った故障状態です。NG基板のほとんどは自動半田付けによるブリッジ半田、トンネル半田、部品の取り付け間違いなどがありました。当時の基板工作機械はIBMフォーマットのコンピューターで動作するものが採用されています。現在の基板製造工程ではチップ部品が多数であり工作機械の精度も上がり不良率も改善されています。多層基板も開発され集積度も上がっています。
7項目 再生VUメーター感度調整
テストテープ YTT-1003 400Hz/0dB の標準信号を再生したときのVUメーター 0dB 位置を指針が表示するようにするVUメーター感度調整です。測点は 測点A 接続測定器はミリバルを接続します。各チャンネルの測定数値は -5dBm(436mv) となっている時に メーター指針が0VUになるように SVRを調整します。調整する SVR pb vu R389 L-ch ,R390 R-ch を調整します。ミリバルとVUメーターの校正作業です。
BTS規格 VU(Volume unit)メーターとは
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| 古い 45型VUメーター |
写真は骨董品真空管式放送設備に搭載されていた丸形VUメーターです。交流電圧計ですのでメーターには整流型であるダイオードの記号が記入されており 目盛も手書きで記入されています。メーター指針は槍型であり 45型のVU/メーターです。
8項目 再生周波数特性調整
19cm/s基準となる信号は TEAC TEST TAPE YTT-1003 の標準テープの 40Hz~22KHz のスイープ信号で周波数特性調整信号が入った個所を再生します。この場合は19cm/sのテープスピード時での特性調整です。測点は 測点A 接続測定器はミリバルを接続します。各チャンネルの測定数値は 400Hzを再生した数値をリファレンス数値とします。この時点でのミリバルの表示されているdB値を基準にマニュアルでは ±3dB になるように 19cm/s用再生周波数特性調整SVRを調整します。通常はヘッド摩耗等で特性が悪くなるため 高域信号で +となるような調整となります400Hzリファレンス周波数では ±0dBであり 低域では +0.5dBを観測しました。調整箇所はpb eq 19 FWD R327 L-ch ,R328 R-ch と REV R329 L-ch ,R330 R-ch のSVR調整です。高域になればなるほど +の値が大きくなり 最大値が +1.0dBとなるように調整しました。調整したデッキは その1とその2の機器です。その4、その5では規格内数値で+でした。
ただ YTT-1003 は所有していませんので BTSテストテープで特性を調整しています。BTS5313のテープではスイープ信号ではなく 各周波数のスポット信号が記録されています。信号レベルは -10dB の値で記録されていました。スポット周波数は 40Hz,80Hz,200Hz,400Hz,1000Hz,3KHz,5KHz,7KHz,10KHz,12.5KHz の信号が高い周波数から順番に記録されています。このテープを再生した結果 X-10R その4 では 上記の記載されている数値に似通っており 400Hzで±0dBとした場合 12.5KHzでは +1.0dBを観測。80Hzでは +0.5dB を観測しました。高域になるほど徐々に上昇していきます。以上の結果により BTS5313 のテストテープは周波特性調整に使用が可能であると判断しました。正規のテストテープと校正はできていませんがBTS5313のテストテープは経年変化で-2.0dB以内の特性であると判断しました。
(YTT-1003 を使っての調整は一度もしていません。周波数特性調整信号は スイープ信号か スポット信号であるかは不明です)
後日調査の結果YTT-1003の仕様が判明しました。スイープではなく BTSテストテープと同様のスポット信号です。A-6100 のサービスマニュアルに詳細が記載されていました。
400Hz 0dB 30sec 15KHz -10dB 60sec 周波数特性 各15sec 400Hz 20KHz 18KHz 16KHz 12KHz 10KHz 6KHz 4KHz 2KHz 1000Hz 500Hz 250Hz 125Hz 80Hz 63Hz 40Hz 31.5Hz の各-10dBで記録されています。7分程度記録されたテストテープです。このテストテープで基準再生レベル0VU(Oparating Reference Level Calibration)、ヘッド角度(アジマス)(Azimuth Aligment)、再生周波数特性(Frequency Response Check)調整に使用するテストテープです。
ちなみにYTT-2003は3KHzの信号が7分間記録されているテストテープです。ワウフラッター特性は0.05%であり -5dBの信号で記録されています。
複数台のデッキでの周波数特性を調査しました。調査結果での周波数特性は+1.0dB以内となっています。ほぼフラットな特性です。TEAC(TASCAM) BR-20は特性がフラットで有名な高級機種ですが今回修復しましたX-10R系でも周波数偏差が少なく30数年以上経過していますがヘッド摩耗を考慮しても優秀なデッキです。
以上の調査結果から所有しているデッキの周波数特性は+1.0dB以内となるように再調整をしましたがほとんどずれはなく微調整で完了しました。
9.5cm/s基準となる信号は TEAC TEST TAPE YTT-1002 の標準テープの 40Hz~14KHz のスイープ信号で周波数特性調整信号が入った個所を再生します。この場合は9.5cm/sのテープスピード時での特性調整です。測点は 測点A 接続測定器はミリバルを接続します。各チャンネルの測定数値は 400Hzを再生した数値をリファレンス数値とします。この時点でのミリバルの表示されているdB値を基準に ±3dB になるように 9.5cm/s用再生周波数特性調整SVRを調整します。調整箇所はpb eq 9.5 FWD R333 L-ch ,R334 R-ch と REV R335 L-ch ,R336 R-ch のSVR調整です。
今回 YTT-1002 を所有していませんので 9.5cm/sの再生周波数特性の調整は実施していません。邪道での確認のみです。又9.5cm/sで録音されたテープも所有していませんので調整はpassしました。邪道ですが19cm/sの標準テープを使ってテープスピードが半分となりますと周波数は2倍になります。1000Hzが2000Hz,7KHzは14KHzの信号となりますので目安として活用しています。基準となる400Hzは800Hzになります。そのため200Hzが400Hzですので邪道の目安基準レベルとしています。
下図の副標準テープ(SUB TEST TAPE)ですが当初は修復した X-10R 4Tr-2Ch で作成していましたが テストテープと同じ仕様のフルトラックで再作成しました。作成に使用した機器は販売数の少ない特殊なテープレコーダー SONY TC-707FC です。興味のある場合詳細は musenan12.blogspot.com
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| 自己作成 SUB TEST TAPE |
この調整は再生ヘッドを交換した場合は必ず実施しなければならない項目です。
再生する信号は YTT-1002 テープスピード9.5cm/s 50Hz~10KHz/-10dB フルトラック で記録された標準テープを再生します。チャンネル間位相差は オシロスコープをベクトルモードとしてリサージュ波形により位相ずれを45°以内となっているかの確認・調整です。不具合時は再生ヘッドアジマス調整をします。X-10Rでは FWD,REVモードとも調整をします。 測点A での測定機器はオシロスコープを接続します。フルトラックで記録されたテストテープでないと調整はできません。特に高い周波数の場合再生ヘッドのチャンネル間ヘッドギャップ位置の違いにより再生される信号にごく小さいですが時間差が発生します。この補正を高い周波数でヘッドアジマス調整により最良点に調整します。オシロスコープの垂直、水平入力端子にL-ch,R-chチャンネル信号を各端子に接続しベクトルモードで測定します。測定結果はリサージュ波形によりチャンネル間位相差を調整します。リサージュ波形については教本などを確認ください。
上記の測定・調整では何を調整をしているかを考察しますと 再生ヘッドアジマスが正しく調整されているかの確認です。
例としてテープに記録されている正弦波信号で考察すると たとえは19KHzの正弦波信号の場合 テープスピードが19cm/sの場合 1サイクル分の信号波長は f=1/T の公式により 19000=1/T により19cmのテープ上に19000個の信号であることが判明します。テープに記録された1サイクル分の信号波長は計算すると 0.01mm と計算できます。ヘッド間位相差は45°以内の規格ですので360/45=8 と計算できます。0.01/8=0.00125 となり 各チャンネル間のヘッドギャップ位置ずれを1.25ミクロン以内までに調整していることが判明します。精密に調整していますのでテストテープがないと正確な調整はできません。現実には再生ヘッドアジマス調整信号は5項目目の調整 16KHzの信号で調整します。
10項目 ヘッドホーン出力レベル確認
信号源は標準テープ再生 YTT-1003 400Hz/0dB の信号が記録された個所を再生します。ヘッドホンプラグに疑似負荷として 8Ωの抵抗を接続します。その抵抗に発生した電圧が -24dB±2dB以内であることを確認します。又その時の測点A の信号レベルは -5dBm(436mv) であることを確認します。
邪道ですが 3項目 モニター・アウトプット・レベル調整の項目でも同じ信号がありますので 標準テープ再生をしなくても 3項目で調整はできると思います。
レベル測定用の標準ステレオプラグにRCAピンプラグ変換測定ケーブルを自作して活用しています。多用途のアダプターケーブルとして作成しましたので 8Ω の負荷抵抗は別付けとして測定します。標準プラグのマイク入力用変換アダプターと一緒に上部写真に掲載しています。その横にはデッキを水平状態で測定するためのL型金具も掲載しています。
余談です! !
このデッキを調整して感じたことは 基準信号として 録音、再生モードとも 入力信号 400Hz/-12dBm VR目盛6.5 出力信号 400Hz/-5dBm OUTPUT VR目盛 CAL dbxユニット送出・受入信号 400Hz/-8dBm これらの信号を各部調整用の基準信号として作業しているのが判明します。この値がテストテープ 0dB の値であり 0dBの信号を録音すると0dBの信号として再生されるように調整しています。この調整はTEACのリファレンステープでの調整であり 現実には使用します生テープの特性・感度の違いにより0dB入力が0dB出力にはなりません。テープにより周波数特性も違ってきます。±数dBの違いは発生します。誤差の内と考えなければなりません。当たり前の事柄ですが ! ! 違うものに化けた場合は操作する人のテクニックによりある程度は テープの種類により修正・補正しなければなりません。このデッキは自動で細かい修正する機能がありません。
テープの種類を変えると音質が変わるとよく言われます。音質は人の好みにより変わります。現在のデジタル音源再生のような機器であれば音質変化は大きくありません。高額な費用を出して微妙な音質を追究するマニアも存在します。オープンリールテープデッキは古典芸能であり、マニュアル操作であり、ワイヤレスリモコン・オート操作に慣れた現代人には扱いにくい機器です。又それが面白いのですが ! ! DOHC・マニュアル操作・ドラムブレーキ・クジラタンク CB-450K1 のように !
リファレンステープ YTT-8013 の無録音部ブランクテープを再生した時の残量雑音のレベルを各チャンネル、各テープスピードで測定します。19cm/s 時 S/N比は50dB以上、9.5cm/s時は48dB以上が確認できれば良とする。これが満足できない場合はアンプ回路での雑音源と思われるため修復には手間がかかります。測定は 測点A でのミリバルを使い残留雑音レベルを測定します。-5dBm を基準としてノイズレベルのdB差を測定します。ミリバルでの数値は-55dBm(1.38mv )以下のノイズレベルであれば良と判断します。
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| リファレンステープとしてよく使われる Quantegy 456 旧Ampex |
現在は手持ちの使用頻度のすくない製造後新しいテープをリファレンステープとしています。30年以上前に製造されたテープでは 実験的にリファレンステープとして使用しましたがテープの種類により問題が発生しました。自己満足で妥協さえすればこのように悩むことはありません。
Quantegy 456 をリファレンステープとして調整した場合 ほかのテープ種を使用した場合に比べレベルが+2dB以上違い使いにくくなりました。これらを踏まえ今回は採用していません。Quantegy 456 はほかのテープと比較すると性能が良いテープです。このテープばかりを使うのであれば問題はないのですが。
Quantegy 456 を使用しての録音・再生した場合大きな問題はありません。録音VUメーターでのレベルが-2dBの時に再生モニターVUメーターでは丁度0dBの位置を表示します。通常の録音作業の時にはTAPEモードで実際の録音と多少の時間遅れが発生しますが 再生VUメーターの指針位置で録音レベルを決定しています。テープ種の感度違いについては大きな問題となっていません。ある程度オーバーレベル録音状態で使用しています。dbxユニットを使用していないため圧縮・伸張作用がありません。リニアリティー・周波数特性変化はほとんど発生しません。dbxユニットを使った場合 入・出力レベル差があると正確な圧縮・伸張特性とはなりません。これがdbxユニットの欠点ですがS/N比は改善されます。小生の場合dbxユニットを使用した場合息継ぎ症状があり 音源再生時違和感として判別してしまいます。好んでは dbxユニットは使用しません。S/N比が多少悪くとも音源を加工していない自然な音源再生が好みです。
次の工程は録音系の調整項目となります。再生系が正確に調整されていないと調整はできません。ここに大きな問題点があります。録音に使用するリファレンステープの調達です。小生がこのデッキを使用していた時期は約30年前です。その後このテープデッキはお蔵入りしています。長期間放置状態です。当時使用していたテープは劣化が進んでいます。現在浦島太郎状態です。国内のテープメーカーは真空管と同様にすでに生産中止となっています。カセット生テープですら国内生産品はありません。この状態での骨董品であるオープンリールテープデッキがどこまでのレベルで修復ができるかが疑問として残っています。なるべくオリジナルに忠実に修復したいのですが ほしいものが製造中止となっており入手できません。どの程度のレベルまで妥協しながら修復できるか ? 道楽作業で修復・調整作業を時間をかけて金銭が乏しい中 知恵を絞りだしながら自己責任で行っています。ご理解ください。
リファレンステープを使っての録音系調整(RECODING PERFORMANCE)
録音する場合はバイアス(BIAS)と呼ばれる高周波の正弦波と録音信号によって 録音される信号が磁気テープに記録されます。記録する時点で電気信号がヘッドで磁気信号に変換します。磁気ヘッドの歪を軽減し大きな磁気信号を記録するための調整です。バイアス発振周波数は100KHzで発振しています。
バイアストラップとは録音ヘッドにはバイアス信号の100KHz正弦波と録音アンプからの録音信号が録音ヘッドで重畳されヘッド信号となります。バイアス正弦波は100KHz 100V程度の大きな信号です。又消去ヘッドの消去信号ともなります。この信号をトリマーコンデンサーでヘッドのバイアス信号レベルを調整します。この信号が録音アンプ動作に悪影響を防ぐため 録音アンプとの間にバイアス信号が侵入できないように阻止する部品がバイアストラップです。LCの100KHz共振回路です。又LINE出力端子にバイアス信号が漏れないように阻止する回路です。通常の修理・調整では調整することはありません。
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| BIAS調整用 80PF トリマーコンデンサー |
又VUメーターに無信号時のバイアス漏れによるメーター指針が振れていないかを確認してください。
13項目 録音ヘッド角度(ヘッドアジマス)調整(今回はpass)
再生ヘッドは前工程でテストテープを使用して調整されています。再生ヘッドアジマスが正確に調整されていない場合正確な録音ヘッドアジマス調整はできません。この項目は録音ヘッドを交換した時には必ず調整しなければならない項目です。
調整方法は リファレンステープ YTT-8013に調整信号を録音します。録音される信号は後部端子板 LINE IN 端子にオーディオジェネレーターからの信号をL,Rチャンネル並列に入力します。信号の値は 10KHz/-32dB(61.5mv-20dB)を設定します。LINE入力調整VRのつまみ位置は 2項目 で調整した位置 目盛6.5 で録音をします。テープスピードは 19cm/s で TAPE SPEED スイッチは HIGH に設定します。MONITOR スイッチは TAPE にします。測点は 測点A でオシロスコープ、ミリバルを接続します。ミリバルは最大値、オシロスコープはベクトルモードでチャンネル間位相差が 45°以内となるように 録音ヘッドアジマス調整ねじを調整します。このデッキでは FWD ,REV モードとも同じ調整をします。
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| BIAS 調整用トリーマーコンデンサー |
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| 今回リファレンステープとして採用した Maxell PM50-5LB |
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| リファレンステープとして使用可能と思われる UD35-45B |
古くから多数所有しているS社製 150番タイプ 生テープではほとんどが劣化症状と思われる 数dB低い値を観測しリファレンステープとしては不向きと判断しました。これらの実験結果から Maxell UD XL 35- **B,UD 35-**B の生テープであれば現在でも程度のよいテープは入手は可能と思います。TEACは生テープは製造していません。OEMでTEACの生テープとしては販売はされていたとの記憶ですが 国産生テープ製造メーカーからの供給品と判断しました。商売敵のSONY製は扱わないと思います。これらの考察によりTEACのリファレンステープ ローノイズ・ハイアウトプット型は 当時プロユースで多用された住友3M Scotch製ではなく 現在でも品質の安定している国産日立Maxell製と自己判断しました。憶測です。当時の国産生テープ主な製造メーカーとして上げると TDK,Maxell,FUJI FILM,住友3M Scotch と老舗のSONYと記憶しています。10号メタルリール開口部の形でテープ製造元がある程度判明すると思います。DENON,AKAI,Technics,OTTO などとリールに明記されていますがリール開口部の形から推察すると 住友3M製ScotchからのOEM供給品 と判断しました。日立 Lo-D製は子会社であるMaxcell製と思います。カセットデッキ製造メーカーでは一部TDKのテープをリファレンステープとして調整されています。SONYのオープンリールデッキ(TC-R7-2)では自社のテープである SLH-S1(blank tape) PLN-370B(blank tape)をリファレンステープとサービスマニュアルには記載されています。市販されている生テープSLH又はDUAD と業務用仕様PLN-370Bの選別品と思われます。
リファレンステープとして使用できる品種
個人的な解釈としてリファレンステープとして活用できる品種は 左図にあるテープ種であると思います。そのテープ種とは スイッチセレクトが 1,1 と思います。例を挙げれば
個人的な解釈としてリファレンステープとして活用できる品種は 左図にあるテープ種であると思います。そのテープ種とは スイッチセレクトが 1,1 と思います。例を挙げれば Maxell UD,XL35,UD35,LNnew35 FUJI FB151 などと思います。このテープ種は ローノイズ・ハイアウトプット型です。いわゆる音楽専用テープとして多数販売された品種です。このテープ種は比較的経年劣化が少ないと思います。国内では有名でしたが 某 S***社 および S*****社 の生テープは劣化が激しく使い物になりませんでした。
生テープの劣化症状として
バックコート面の粘り テープ鳴き 磁性体の剥がれ 磁性体の劣化レベル変動 などです。バックコート面の粘りは最悪です。テープ走行系がすぐに汚れてしまい まともなテープ走行に支障が発生します。磁性体剥がれは ヘッド面およびガイド金具等はすぐに汚れてしまいます。テープ鳴きについてはヘッド面およびテープガイド金具摩耗による接触面が鏡面となっておりテープ走行時接触面で共振振動によるテープ鳴きです。テープガイド金具の取り付け角度(位置)変更で軽減できる場合もあります。面接触を線接触にするわけです。もともとテープ鳴きの発生が多いテープ種(製造メーカーおよび特定品種)もあります。
現在でもTEACではオープン・テープデッキの修理・調整をサービス部門では実施しています。メーカーとしての品質問題がありますので 何らかの生テープを調達して調整していると思います。現在唯一生テープ製造されている海外メーカー品 MTS通販で扱っている旧BASF系 RMG の新品生テープかもしれません。当時調整に使用していた YTT-8013 リファレンステープと多少特性が違っていると思います。その場合調整値はマニュアルとは異なっていると判断します。憶測です。確認はしていません。
録音バイアス調整に使用する信号は オーディオジェネレーターより 7KHz/-22dBm(61.5mv-10dB)の信号を使用します。入力の調整は 2項目 の調整位置で使用します。録音状態として テープスピードは 9.5cm/s SPEED スイッチは LOW に設定します。測点は 測点A で測定器はミリバルを接続します。TAPE スィッチは TAPE に設定します。調整箇所は TC bias1 FWD C301lL-ch,C302R-ch と REV C303L-ch,C304R-ch を調整します。これからの作業はピークバイアスを探ります。バイアス調整用のトリマーコンデンサーをバイアスの浅い状態より調整ねじを時計方向に回転していくとミリバルの電圧が上昇し最大値を過ぎると逆に電圧が低下していきます。電圧の最大値をマーク(記録)します。ピークを過ぎてピーク値より -3.5dB±0.5dB バイアスが深くなった位置が オーバーバイアス点です。これがオーバーバイアス調整です。デシベル値は絶対値で判断します。各ヘッドによりピークバイアス電圧は違っています。この調整を FWD,REV の各チャンネルの録音ヘッドで゛調整します。REC BIAS スィッチは BIAS1 、REC EQ スィッチは REC EQ1 のスィッチの状態で調整します。
TEAC Aシリーズ一部の機種ではオーバーバイアス調整値として -2dB±0.5dB の表示もあり 機種により多少調整値が違っていますのでサービスマニュアルの確認が必要です。
ヘッド摩耗の進行しているデッキで 時々中古品のヘッドブロックだけを載せ替えている方も見受けられますが ヘッド特性にばらつきがあり載せ替えただけでは正規の特性はでないと思います。各ヘッドのバイアス調整を実施しないと周波数特性および録再レベル変化は必ず発生します。再生ヘッドでの出力レベルも違っています。又微妙なテープ走行も確認しなければなりません。調整箇所が理解できればおのずから判明する事柄です。この調整は精密に調整されており簡単な作業ではありません。
15項目 録音レベル調整
この調整は録音アンプのゲイン調整です。テープスピードは19cm/s の状態で調整します。SPEED スイッチは HIGH に設定します。基準信号を録音した場合 再生ヘッドから再生される基準信号レベルに調整することです。再生レベルはテストテープで 400Hz/0dB の信号はすでに調整されています。同様の信号が録音されて再生された時に同じ信号レベルに調整します。この調整は録音バイアス調整とリファレンステープの種類により再生される信号は大きく変化します。厄介な調整です。厳密に申せばテープの種類により適正バイアス値および録音レベル信号値は異なります。周波数特性および出力レベルは実用レベルの汎用性のあるテープ種でメーカーは調整していると思います。
入力信号としては 3項目 の位置となります。信号は同じく 400Hz/-12dBm(195mv) の信号を録音します。テープスピードは 19cm/s で REC EQ ,BIAS スイッチは1とします。モニタースィッチは TAPE とします。 測点は 測点A 測定器はミリバルを接続します。調整箇所は録音アンプのゲイン調整でSVR rec gain FWD R429 L-ch ,R430 R-ch と REV R431 L-ch ,R432 R-ch を調整します。各チャンネルの測定数値は -5dBm(436mv) となるように調整します。
今回の調整において見方を変えれば dbx接続端子 TO DECODER SEND 端子をミリバルで測定すると 400Hz/-8dBm(306mv) の信号が測定できるはずです。このことから疑似再生信号を RCV 端子に400Hz/-8dBm(306mv) を入力すれば P・B疑似信号としてラインアンプ系の調整ができると思います。ゆえにdbxユニットの基準信号であり 入力と出力信号が同じでないとノイズ軽減装置としては正確な特性のdbxユニット動作ができません。
現実に X-10R その2 ではバイアス調整は実施していません。この録音レベル調整では 再生信号レベルを -6dBm に調整しました。RECamp ゲインに余裕がなかったからです。無理やりに調整すれば可能でしたが歪率などを考慮しました。その4ではRECamp ゲインに余裕があったため 出力は -5dBm 標準値に調整しました。推測ですがバイアス設定値とリファレンステープ種の違いにより若干の特性差が発生したと判断しています。誤差は 1dBです。録音アンプゲインは1dB差を自己判断で決定しました。その2では1dBだけ録音レベルを上げれば 標準値 -5dBm となり 正規の再生レベルになります。このような録音と再生のレベル差はテープの種類を変えれば必ず発生します。テープの種類によって特性・感度・最適バイアス値が違っていいるため レベル差が発生する理由です。これらを解消するため生テープの種類により録音レベルを調整するテクニックが必要となります。テープの種類により違った最良録音レベルが存在します。
最終的にはバイアス調整をPM50-5LBを使って実施しています。
16項目 歪率の測定
歪率の測定は上記15項目とほぼ同様ですが 入力する信号の周波数だけ異なります。調整信号は 1000Hz/-12dBm(195mV0dB) の信号を使って録音した信号を計測します。出力電圧は-5dBm(436mv) となります。次に出力された信号の歪率を測定します。同様に各チャンネルでの歪率計で測定します。測定値は THD 0.8% 以下であることを確認します。今回修復したデッキでは 1000Hz,400Hz とも THD 0.4%以下を観測しました。
REFERENCE TAPE Maxell PM50-5LB を使用しての測定結果です。
17項目 SN比の測定(今回はpass)
各テープスピードにおいて 基準信号を録音した部分と 無信号録音されたところの相対比を測定します。16項目 の測定と同様で 1000Hz/-12dBm の信号を各 19cm/s ,9.5cm/s テープスピードで録音・再生された数値でもって判断します。再生された信号と無録音の信号比をデシベルで表示します。信号有が -5dBm ですので無信号時の雑音レベル差が 19cm/s 48dB 9.5cm/s 46dB 以下であることを確認します。計測値は -53dBm と -51dBm 以下であれば正常です。
18項目 消去率の測定(今回はpass)
オーバー録音した信号を 同じ個所を無信号で録音した結果 前に録音した信号が完全に消去されているかを測定する項目です。通常は測定しません。測定の設定は 17項目 に似通っています。測定に使用する信号は 1000Hz/-2dBm(+10VU) のオーバー録音信号を各 19cm/s で1回目の録音をします。その後同じ個所を無信号録音をします。その時に再生される信号を計測します。計測値は -63dBm(436μv) 以下であることを確認します。ただ測定時に 1000HzのBPF(バンドパスフィルター)を通過した信号で測定しないとほかの雑音のため正確な測定とはなりません。
19項目 録音ミューティング(REC MUTE)レベルの確認(今回はpass)
このデッキでは REC MUTE スイッチが装備されています。トランジスターによる電子スイッチのミューティング状態の確認です。18項目 と同様の測定です。1000Hz/-2dBm(+10VU) のオーバー録音信号を録音時に REC NUTE スイッチで無録音状態であるかを確認します。測定も 18項目 と同じです。測定値は -60dBm(1.38mv) 以下であることを確認します。1000HzのBPF を使用して測定します。
20項目 録音周波数特性調整(今回はpass)
録音アンプの調整で 再生された信号レベルを測定し調整します。測定機器のセッティングは 15項目 と同様の状態です。この調整ではスイープ信号を録音します。その結果からコイルを調整します。スイープ信号は 9.5cm/s では 40Hz~16KHz/-32dBm(19.5mv-20dB) の信号を録音します。録音イコライザーの調整です。調整箇所はrec eq FWD L305 L-ch ,L306 R-ch と REV L307 L-ch ,L306 R-cH の調整となります。専用のプラスチック製調整ドライバーを使用してください。リファレンス周波数を 400Hz を基準として 再生された信号レベルが ±3dB 以内 となるようにコイルを調整します。
同様にテープスピード 19cm/s での入力信号は 40Hz~20KHz/-32dBm(19.5mv-20dB) の信号を録音します。再生された信号レベルを確認します。再生された信号レベルが ±3dB 以内 てであることを確認します。調整箇所はありません。調整は 9.5cm/s のみです。
小生の録音周波数特性調整の場合はスイープ信号ではなく各周波数のスポット信号を録音します。通常スポット信号としては 40Hz,80Hz,200Hz,400Hz,1000Hz,,3KHz,5KHz,7KHz,10KHz,125KHz,16KHz,20KHz を3秒間隔で録音した信号で周波数特性は調整します。
21項目 録再での位相特性確認(今回はpass)
20項目の19cm/s で録音されたスイープ信号を L-ch,R-ch の信号でオシロスコープのベクトルモードによりリサージュ波形からチャンネル間位相特性のチェックです。測定器はオシロスコープです。位相差は 45°以内であることを確認します。
22項目 録音バイアス調整2(今回はpass)
この調整はテープの種類により適正バイアスとするための調整です。バイアス1 ではバイアス信号が大きく バイアス2 ではバイアスが浅いモードでの調整となります。BIASスイッチは2にセットします。通常リファレンステープの種類を変えて調整しますが TEAC では同じ YTT-8013 リファレンステープを使って調整します。14項目 の調整とほとんど同じのセッティングですが調整箇所が違っています。録音信号は 10KHz/-32dBm(19.5mv-20dB) の信号を19cm/s のテープスピードで録音します。調整箇所はSVR rec bias2 FWD R493 ,REV R494 を調整します。調整値は +4dB±1dB となるように調整します。調整後録音周波数を変えて確認します。その信号は16KHz/-32dBm(19.5mv-20dB)を録音します。測定結果は +6dB±2dBであることを確認します。調整箇所はありません。
23項目 クロストークの測定(今回はpass)
ヘッドチャンネル間のクロストークの測定です。まずはリファレンステープで無録音(ブランク)状態のテープを準備します。録音信号は 125Hz/-12dBm の信号を FWDモードで録音します。セッティングは 15項目 とほぼ同じです。その後REVで再生します、REVは無録音状態ですので もしも信号があるとしたらFWDで録音した信号のクロストーク信号です。これを測定します。測定値は125Hzの信号で -45dBm(4.36mv) 以下であることを確認します。これが満足できない場合は再度 録音・再生ヘッドトラック位置(ヘッド高さ)の調整が必要です。
24項目 チャンネルセパレーションの確認(今回はpass)
この確認事項はほとんどはアンブ側での問題です。クロストークと違いヘッドでは L-CH R-CH ではFWD,REVと違いお互いのヘッド間隔が広いため ほとんどヘッドではチャンネル間クロストークは発生しません。試験方法として片チャンネルに 1KHz/-12dBm の試験信号を入力します。その時点で片側の音が無いチャンネルの出力レベルをミリバルで測定します。その信号は1000HzのBPFを通過した後の信号レベルを測定します。測定値は -55dBm(1.38mv)以下であることを確認します。又同様にチャンネルを入れ替えて測定し同じ信号以下であることを確認します。調整箇所はありません。
以上が英文による サービスマニュアルでの調整項目です。日本語で記載されていないため 英語、国語が苦手な凡人、小生の解釈による調整方法の記載です。間違っているかもしれません。参考程度とご理解ください。
テープスピード調整
続いてテープスピードの調整・確認の作業です。上記調整と逆かもしれません。
準備する測定機器類
ワウ・フラッターメーター 周波数カウンター 3KHzの信号が記録されたテストテープ(YTT-2003,YTT-2002) 又はタイミングリーダーテープ ストップウオッチ などを準備ください。正確なテープスピード調整作業において 正確な3000Hzで記録された基準となるテープがテストテープです。製造メーカーでは厳しい管理の下で一本ずつ作成されており高額となります。一般市場では入手困難なテストテープです。現在入手方法としては輸入品となりますが MRL にテストテープとしてリストアップされています。周波数は JIS・CCIR 規格 3000Hz とは異なり 3150Hz 仕様となっています。上記の測定器では JIS・CCIR ではなく DIN の規格で測定はできます。
購入当時添付されていましたX-10R取扱説明書の仕様欄ではテープスピードは ±0.5% と記載されていますが英文のサービスマニュアルでは 3000Hz±30Hz と記載されています。この数値をパーセントで表示すると ±1.0% になります。取扱説明書・カタログ表示とサービスマニュアルではいくつかの項目の数値が違っています。とりあえず調整においては厳しい値で調整をします。
同様に出力レベルは -5dBm(436mV) ですがカタログ値はボルト表示で 0.45V と記載されており若干の数値差があります。調整はサービスマニュアルを基本として調整しています。
取扱説明書記載による周波数特性についてはローノイズ・ハイアウトプットテープと明記されています。これらからリファレンステープも同様と判断した理由です。
テープスピード調整は マニュアルではメカニズムの調整編に記載されています。この X-10R ではテープスピードは 19cm/s と 9.5cm/s の2種類のテープスピードでテープは走行します。テープスピード調整値は サービスマニュアルでは ±1.0%以内と記載されています。なおかつ FWD,REV 走行が可能なデッキです。正規のテープスピード調整は2種類の TEAC 専用のテストテープで調整するように指示されています。
調整箇所はキャプスタンモーター制御基板にあるSVRを調整します。基板にH,Lの表示があり Hは19cm/sの調整でSVR tape speed high R16 を調整します。基板ハンダ付け面から調整しますので反時計方向回転でテープスピードは速くなります。
TEAC指定のテストテープは3000Hzの信号が記録されたテストテープを各スピードで再生します。19cm/s の調整用テストテーフは YTT-2003 , 9.5cm/s は YTT-2002 を使用します。9.5cm/s調整箇所はSVR tape speed low R17 を調整します。測定器は LINE OUT 端子からの信号で ワウフラッターメーターもしくは周波数カウンターを使用して調整します。
調整値は3000Hz±30Hz となるように調整します。テープ走行位置違いでのテープスピードドリフトは 15Hz 以内であることを確認します。調整値としてはFWD,REV走行を甘味し±15Hz(±0.5%)以内となるように調整完了します。
FWD,REV走行ではテープスピードに誤差があります。同じテープスピードとはなりません。実機ではFWDの走行テープスピードが速く REV走行テープスピードが遅くなっていました。複数台同じ機種を調整した結果です。このような結果から FWD走行+0.5% REV-0.5%以内となるように調整すれば規格内のテープスピードとなります。デュアルキャプスタンメカニズム構造による誤差が発生したと考察できます。左右フライホイルに一部段差があり 微妙にキャプスタンでのテープ走行スピードに差が発生する構造です。これらのメカニズム構造により ピンチローラー、キャプスタンスリーブはこまめに点検・掃除する必要があります。常時微妙なテープのスリップが発生しています。
FWD,REV でのテープスピード誤差は30Hz(1%)以内の規格です。テープ走行ドリフトは 15Hz(0.5%)以内と記載されています。
録音バイアス調整に使用する信号は オーディオジェネレーターより 7KHz/-22dBm(61.5mv-10dB)の信号を使用します。入力の調整は 2項目 の調整位置で使用します。録音状態として テープスピードは 9.5cm/s SPEED スイッチは LOW に設定します。測点は 測点A で測定器はミリバルを接続します。TAPE スィッチは TAPE に設定します。調整箇所は TC bias1 FWD C301lL-ch,C302R-ch と REV C303L-ch,C304R-ch を調整します。これからの作業はピークバイアスを探ります。バイアス調整用のトリマーコンデンサーをバイアスの浅い状態より調整ねじを時計方向に回転していくとミリバルの電圧が上昇し最大値を過ぎると逆に電圧が低下していきます。電圧の最大値をマーク(記録)します。ピークを過ぎてピーク値より -3.5dB±0.5dB バイアスが深くなった位置が オーバーバイアス点です。これがオーバーバイアス調整です。デシベル値は絶対値で判断します。各ヘッドによりピークバイアス電圧は違っています。この調整を FWD,REV の各チャンネルの録音ヘッドで゛調整します。REC BIAS スィッチは BIAS1 、REC EQ スィッチは REC EQ1 のスィッチの状態で調整します。
TEAC Aシリーズ一部の機種ではオーバーバイアス調整値として -2dB±0.5dB の表示もあり 機種により多少調整値が違っていますのでサービスマニュアルの確認が必要です。
ヘッド摩耗の進行しているデッキで 時々中古品のヘッドブロックだけを載せ替えている方も見受けられますが ヘッド特性にばらつきがあり載せ替えただけでは正規の特性はでないと思います。各ヘッドのバイアス調整を実施しないと周波数特性および録再レベル変化は必ず発生します。再生ヘッドでの出力レベルも違っています。又微妙なテープ走行も確認しなければなりません。調整箇所が理解できればおのずから判明する事柄です。この調整は精密に調整されており簡単な作業ではありません。
この調整は録音アンプのゲイン調整です。テープスピードは19cm/s の状態で調整します。SPEED スイッチは HIGH に設定します。基準信号を録音した場合 再生ヘッドから再生される基準信号レベルに調整することです。再生レベルはテストテープで 400Hz/0dB の信号はすでに調整されています。同様の信号が録音されて再生された時に同じ信号レベルに調整します。この調整は録音バイアス調整とリファレンステープの種類により再生される信号は大きく変化します。厄介な調整です。厳密に申せばテープの種類により適正バイアス値および録音レベル信号値は異なります。周波数特性および出力レベルは実用レベルの汎用性のあるテープ種でメーカーは調整していると思います。
入力信号としては 3項目 の位置となります。信号は同じく 400Hz/-12dBm(195mv) の信号を録音します。テープスピードは 19cm/s で REC EQ ,BIAS スイッチは1とします。モニタースィッチは TAPE とします。 測点は 測点A 測定器はミリバルを接続します。調整箇所は録音アンプのゲイン調整でSVR rec gain FWD R429 L-ch ,R430 R-ch と REV R431 L-ch ,R432 R-ch を調整します。各チャンネルの測定数値は -5dBm(436mv) となるように調整します。
今回の調整において見方を変えれば dbx接続端子 TO DECODER SEND 端子をミリバルで測定すると 400Hz/-8dBm(306mv) の信号が測定できるはずです。このことから疑似再生信号を RCV 端子に400Hz/-8dBm(306mv) を入力すれば P・B疑似信号としてラインアンプ系の調整ができると思います。ゆえにdbxユニットの基準信号であり 入力と出力信号が同じでないとノイズ軽減装置としては正確な特性のdbxユニット動作ができません。
現実に X-10R その2 ではバイアス調整は実施していません。この録音レベル調整では 再生信号レベルを -6dBm に調整しました。RECamp ゲインに余裕がなかったからです。無理やりに調整すれば可能でしたが歪率などを考慮しました。その4ではRECamp ゲインに余裕があったため 出力は -5dBm 標準値に調整しました。推測ですがバイアス設定値とリファレンステープ種の違いにより若干の特性差が発生したと判断しています。誤差は 1dBです。録音アンプゲインは1dB差を自己判断で決定しました。その2では1dBだけ録音レベルを上げれば 標準値 -5dBm となり 正規の再生レベルになります。このような録音と再生のレベル差はテープの種類を変えれば必ず発生します。テープの種類によって特性・感度・最適バイアス値が違っていいるため レベル差が発生する理由です。これらを解消するため生テープの種類により録音レベルを調整するテクニックが必要となります。テープの種類により違った最良録音レベルが存在します。
最終的にはバイアス調整をPM50-5LBを使って実施しています。
![]() |
| 1KHz 0VU 歪率0.34% |
歪率の測定は上記15項目とほぼ同様ですが 入力する信号の周波数だけ異なります。調整信号は 1000Hz/-12dBm(195mV0dB) の信号を使って録音した信号を計測します。出力電圧は-5dBm(436mv) となります。次に出力された信号の歪率を測定します。同様に各チャンネルでの歪率計で測定します。測定値は THD 0.8% 以下であることを確認します。今回修復したデッキでは 1000Hz,400Hz とも THD 0.4%以下を観測しました。
REFERENCE TAPE Maxell PM50-5LB を使用しての測定結果です。
17項目 SN比の測定(今回はpass)
各テープスピードにおいて 基準信号を録音した部分と 無信号録音されたところの相対比を測定します。16項目 の測定と同様で 1000Hz/-12dBm の信号を各 19cm/s ,9.5cm/s テープスピードで録音・再生された数値でもって判断します。再生された信号と無録音の信号比をデシベルで表示します。信号有が -5dBm ですので無信号時の雑音レベル差が 19cm/s 48dB 9.5cm/s 46dB 以下であることを確認します。計測値は -53dBm と -51dBm 以下であれば正常です。
18項目 消去率の測定(今回はpass)
オーバー録音した信号を 同じ個所を無信号で録音した結果 前に録音した信号が完全に消去されているかを測定する項目です。通常は測定しません。測定の設定は 17項目 に似通っています。測定に使用する信号は 1000Hz/-2dBm(+10VU) のオーバー録音信号を各 19cm/s で1回目の録音をします。その後同じ個所を無信号録音をします。その時に再生される信号を計測します。計測値は -63dBm(436μv) 以下であることを確認します。ただ測定時に 1000HzのBPF(バンドパスフィルター)を通過した信号で測定しないとほかの雑音のため正確な測定とはなりません。
19項目 録音ミューティング(REC MUTE)レベルの確認(今回はpass)
このデッキでは REC MUTE スイッチが装備されています。トランジスターによる電子スイッチのミューティング状態の確認です。18項目 と同様の測定です。1000Hz/-2dBm(+10VU) のオーバー録音信号を録音時に REC NUTE スイッチで無録音状態であるかを確認します。測定も 18項目 と同じです。測定値は -60dBm(1.38mv) 以下であることを確認します。1000HzのBPF を使用して測定します。
録音アンプの調整で 再生された信号レベルを測定し調整します。測定機器のセッティングは 15項目 と同様の状態です。この調整ではスイープ信号を録音します。その結果からコイルを調整します。スイープ信号は 9.5cm/s では 40Hz~16KHz/-32dBm(19.5mv-20dB) の信号を録音します。録音イコライザーの調整です。調整箇所はrec eq FWD L305 L-ch ,L306 R-ch と REV L307 L-ch ,L306 R-cH の調整となります。専用のプラスチック製調整ドライバーを使用してください。リファレンス周波数を 400Hz を基準として 再生された信号レベルが ±3dB 以内 となるようにコイルを調整します。
同様にテープスピード 19cm/s での入力信号は 40Hz~20KHz/-32dBm(19.5mv-20dB) の信号を録音します。再生された信号レベルを確認します。再生された信号レベルが ±3dB 以内 てであることを確認します。調整箇所はありません。調整は 9.5cm/s のみです。
小生の録音周波数特性調整の場合はスイープ信号ではなく各周波数のスポット信号を録音します。通常スポット信号としては 40Hz,80Hz,200Hz,400Hz,1000Hz,,3KHz,5KHz,7KHz,10KHz,125KHz,16KHz,20KHz を3秒間隔で録音した信号で周波数特性は調整します。
21項目 録再での位相特性確認(今回はpass)
20項目の19cm/s で録音されたスイープ信号を L-ch,R-ch の信号でオシロスコープのベクトルモードによりリサージュ波形からチャンネル間位相特性のチェックです。測定器はオシロスコープです。位相差は 45°以内であることを確認します。
22項目 録音バイアス調整2(今回はpass)
この調整はテープの種類により適正バイアスとするための調整です。バイアス1 ではバイアス信号が大きく バイアス2 ではバイアスが浅いモードでの調整となります。BIASスイッチは2にセットします。通常リファレンステープの種類を変えて調整しますが TEAC では同じ YTT-8013 リファレンステープを使って調整します。14項目 の調整とほとんど同じのセッティングですが調整箇所が違っています。録音信号は 10KHz/-32dBm(19.5mv-20dB) の信号を19cm/s のテープスピードで録音します。調整箇所はSVR rec bias2 FWD R493 ,REV R494 を調整します。調整値は +4dB±1dB となるように調整します。調整後録音周波数を変えて確認します。その信号は16KHz/-32dBm(19.5mv-20dB)を録音します。測定結果は +6dB±2dBであることを確認します。調整箇所はありません。
23項目 クロストークの測定(今回はpass)
ヘッドチャンネル間のクロストークの測定です。まずはリファレンステープで無録音(ブランク)状態のテープを準備します。録音信号は 125Hz/-12dBm の信号を FWDモードで録音します。セッティングは 15項目 とほぼ同じです。その後REVで再生します、REVは無録音状態ですので もしも信号があるとしたらFWDで録音した信号のクロストーク信号です。これを測定します。測定値は125Hzの信号で -45dBm(4.36mv) 以下であることを確認します。これが満足できない場合は再度 録音・再生ヘッドトラック位置(ヘッド高さ)の調整が必要です。
この確認事項はほとんどはアンブ側での問題です。クロストークと違いヘッドでは L-CH R-CH ではFWD,REVと違いお互いのヘッド間隔が広いため ほとんどヘッドではチャンネル間クロストークは発生しません。試験方法として片チャンネルに 1KHz/-12dBm の試験信号を入力します。その時点で片側の音が無いチャンネルの出力レベルをミリバルで測定します。その信号は1000HzのBPFを通過した後の信号レベルを測定します。測定値は -55dBm(1.38mv)以下であることを確認します。又同様にチャンネルを入れ替えて測定し同じ信号以下であることを確認します。調整箇所はありません。
以上が英文による サービスマニュアルでの調整項目です。日本語で記載されていないため 英語、国語が苦手な凡人、小生の解釈による調整方法の記載です。間違っているかもしれません。参考程度とご理解ください。
テープスピード調整
続いてテープスピードの調整・確認の作業です。上記調整と逆かもしれません。
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| LEADR LFM-39A WOW & FUUTTER MATER |
準備する測定機器類
ワウ・フラッターメーター 周波数カウンター 3KHzの信号が記録されたテストテープ(YTT-2003,YTT-2002) 又はタイミングリーダーテープ ストップウオッチ などを準備ください。正確なテープスピード調整作業において 正確な3000Hzで記録された基準となるテープがテストテープです。製造メーカーでは厳しい管理の下で一本ずつ作成されており高額となります。一般市場では入手困難なテストテープです。現在入手方法としては輸入品となりますが MRL にテストテープとしてリストアップされています。周波数は JIS・CCIR 規格 3000Hz とは異なり 3150Hz 仕様となっています。上記の測定器では JIS・CCIR ではなく DIN の規格で測定はできます。
購入当時添付されていましたX-10R取扱説明書の仕様欄ではテープスピードは ±0.5% と記載されていますが英文のサービスマニュアルでは 3000Hz±30Hz と記載されています。この数値をパーセントで表示すると ±1.0% になります。取扱説明書・カタログ表示とサービスマニュアルではいくつかの項目の数値が違っています。とりあえず調整においては厳しい値で調整をします。
同様に出力レベルは -5dBm(436mV) ですがカタログ値はボルト表示で 0.45V と記載されており若干の数値差があります。調整はサービスマニュアルを基本として調整しています。
取扱説明書記載による周波数特性についてはローノイズ・ハイアウトプットテープと明記されています。これらからリファレンステープも同様と判断した理由です。
![]() |
| タイミングリーダーテープと ストップウォッチ |
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| 自己作成 1905mm 間隔マーキングテストテープ |
調整箇所はキャプスタンモーター制御基板にあるSVRを調整します。基板にH,Lの表示があり Hは19cm/sの調整でSVR tape speed high R16 を調整します。基板ハンダ付け面から調整しますので反時計方向回転でテープスピードは速くなります。
TEAC指定のテストテープは3000Hzの信号が記録されたテストテープを各スピードで再生します。19cm/s の調整用テストテーフは YTT-2003 , 9.5cm/s は YTT-2002 を使用します。9.5cm/s調整箇所はSVR tape speed low R17 を調整します。測定器は LINE OUT 端子からの信号で ワウフラッターメーターもしくは周波数カウンターを使用して調整します。
調整値は3000Hz±30Hz となるように調整します。テープ走行位置違いでのテープスピードドリフトは 15Hz 以内であることを確認します。調整値としてはFWD,REV走行を甘味し±15Hz(±0.5%)以内となるように調整完了します。
FWD,REV走行ではテープスピードに誤差があります。同じテープスピードとはなりません。実機ではFWDの走行テープスピードが速く REV走行テープスピードが遅くなっていました。複数台同じ機種を調整した結果です。このような結果から FWD走行+0.5% REV-0.5%以内となるように調整すれば規格内のテープスピードとなります。デュアルキャプスタンメカニズム構造による誤差が発生したと考察できます。左右フライホイルに一部段差があり 微妙にキャプスタンでのテープ走行スピードに差が発生する構造です。これらのメカニズム構造により ピンチローラー、キャプスタンスリーブはこまめに点検・掃除する必要があります。常時微妙なテープのスリップが発生しています。
FWD,REV でのテープスピード誤差は30Hz(1%)以内の規格です。テープ走行ドリフトは 15Hz(0.5%)以内と記載されています。
これらの調整においてダブルチェックでテープスピードを確認・調整します。測定器はワウ・フラッター・メーターのドリフトメーター表示値と並列に接続した100倍モード・マルチプライヤーでの 3000.000Hz の精密周波数値測定です。
30Hzは3000Hz に対してのパーセントの表示では 1%です。15Hz は0.5% です。小生の場合テープスピードは ±0.5%以内に調整しています。周波数で表示しますと 3000Hz±15Hz となるようにキャプスタンモーター制御基板にあるSVRを調整します。VRはクリチカルな調整が必要です。9.5cm/sの調整は19cm/sの調整テープをそのまま使用しています。周波数カウンターがマルチプライヤーで100倍にして測定していますので精密測定が可能です。測定する周波数は 1500Hz±7.5Hz となるように調整します。このデッキでは FWD の走行が少し早いため +0.15%に調整すると REVはほぼ±0.0%に調整ができました。
ワウフラッター特性はワウフラッターメーターで測定します。
標準テープ再生時 19.cm/s 0.05%(WRMS),0.1%(RMS)
標準テープ再生時 9.5.cm/s 0.07%(WRMS),0.12%(RMS)
3000Hz録音・再生後の特性19cm/s,0.12%(RMS)
3000Hz録音・再生後の特性9.5cm/s,0.15%(RMS)
上記の数値以下であることを確認します。ワウ・フラッター計には基準となる低歪率の3KHz出力端子が付属しています。この信号でもって録音・再生された信号で数値を表示します。
テストテープ再生時と自己録音再生時でのワウ・フラッター特性には違いがあります。純正標準テープが入手できない場合は 3000Hzの基準信号を録音・再生での のワウフラッター特性しか測定はできません。
作成内容は90mの音楽が録音されたテープに 正確に1905mmを計測しテープの磁性体でないテープ面に 油性マーカーでしるしをテープの最初から最後までマーキングをします。そのマーキングをネオジゥム磁石で3mm幅でテープ面をこすりテープの記録されている信号を一部永久磁石で消去します。この消去された信号をストップウオッチなどを使って10カウント100秒の時間計測します。計測により誤差が ±0.5秒に調整します。この数値はテープスピード±0.5%の調整数字です。小生の場合は音楽編集ソフト デジオンで1/100秒単位まで精密測定をしてテープスピードを確定します。
オークションで松下電器産業㈱(現Panasonic) 録音機事業部製のテストテープ O-W190 速度偏差±0.05% ワウ・フラッター0.04% の規格であるテストテープを入手しました。非売品と記載されており各地方のサービスステーションに配布されたテープと思われます。通常メーカーサービスでは10数年も使用しなければ高額なテストテープ・測定機類ですら資産償却として売却・廃棄処分します。開発部門・研究所では固定資産ではなく校正作業込のリース・レンタル契約での運用が多くなりました。経済産業省より補修部品保有年限が指導されていますので 通常では10数年も経過した機器はメーカーサービスをお断りされます。今回入手したテストテープではほとんど使用した形跡がありません。どのような流通経路を経て入手できたかは不明ですが。
このスピード調整テストテープがあればワウ・フラッターメーターを使用すればテープスピード調整は簡単となります。ドリフト(DRIFT)表示メーターで 0(零)を表示すれば誤差がありません。周波数カウンターを使用するよりは簡単な調整となります。
今回3KHzのテストテープO-W190が入手できたため 測定器であるワウ・フラッター計(LFM-39A)の校正をしました。測定器内にある3KHz基準信号の周波数校正作業です。校正しました測定器はメーカー校正証明は取得していませんが 自己校正をしている周波数カウンター(TR5142)2台とオーディオジェネレーターです。骨董品のワウ・フラッター計ですが内部の基準信号は精密測定の結果 3000Hz の基準信号に対して約2.8Hz周波数が高いとと判明し周波数偏差は+0.09%でした。この状態であれば精度は出ていると判断しています。
周波数カウンターの一番簡単な校正はSSG10MHzのCW(無変調キャリア)信号とJJY-10MHzの電波と零ビートを取った信号で校正することです。以前はNTSCカラーバースト信号の3.579545MHzを使用して校正していましたが 現在では地デジ放送となり校正用信号として使用することができません。
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| Technics TEST TAPE O-W190 3KHz 19cm/s |
標準テープ再生時 19.cm/s 0.05%(WRMS),0.1%(RMS)
標準テープ再生時 9.5.cm/s 0.07%(WRMS),0.12%(RMS)
3000Hz録音・再生後の特性19cm/s,0.12%(RMS)
上記の数値以下であることを確認します。ワウ・フラッター計には基準となる低歪率の3KHz出力端子が付属しています。この信号でもって録音・再生された信号で数値を表示します。
テストテープ再生時と自己録音再生時でのワウ・フラッター特性には違いがあります。純正標準テープが入手できない場合は 3000Hzの基準信号を録音・再生での のワウフラッター特性しか測定はできません。
現実には TEAC の標準テープ YTT-2003 ,YTT-2002 は入手は困難です。テープスピード精密測定用のテストテープを自作しました。市販品のタイミングリーダーテープでは測定誤差が多くなります。左の写真が作成したテストテープです。
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| キャプスタンモーターと 速度制御基板 |
オークションで松下電器産業㈱(現Panasonic) 録音機事業部製のテストテープ O-W190 速度偏差±0.05% ワウ・フラッター0.04% の規格であるテストテープを入手しました。非売品と記載されており各地方のサービスステーションに配布されたテープと思われます。通常メーカーサービスでは10数年も使用しなければ高額なテストテープ・測定機類ですら資産償却として売却・廃棄処分します。開発部門・研究所では固定資産ではなく校正作業込のリース・レンタル契約での運用が多くなりました。経済産業省より補修部品保有年限が指導されていますので 通常では10数年も経過した機器はメーカーサービスをお断りされます。今回入手したテストテープではほとんど使用した形跡がありません。どのような流通経路を経て入手できたかは不明ですが。
このスピード調整テストテープがあればワウ・フラッターメーターを使用すればテープスピード調整は簡単となります。ドリフト(DRIFT)表示メーターで 0(零)を表示すれば誤差がありません。周波数カウンターを使用するよりは簡単な調整となります。
今回3KHzのテストテープO-W190が入手できたため 測定器であるワウ・フラッター計(LFM-39A)の校正をしました。測定器内にある3KHz基準信号の周波数校正作業です。校正しました測定器はメーカー校正証明は取得していませんが 自己校正をしている周波数カウンター(TR5142)2台とオーディオジェネレーターです。骨董品のワウ・フラッター計ですが内部の基準信号は精密測定の結果 3000Hz の基準信号に対して約2.8Hz周波数が高いとと判明し周波数偏差は+0.09%でした。この状態であれば精度は出ていると判断しています。
周波数カウンターの一番簡単な校正はSSG10MHzのCW(無変調キャリア)信号とJJY-10MHzの電波と零ビートを取った信号で校正することです。以前はNTSCカラーバースト信号の3.579545MHzを使用して校正していましたが 現在では地デジ放送となり校正用信号として使用することができません。
周波数カウンター校正作業として宇宙に浮かんでいるGPS衛星からの信号で基準信号10MHzの校正作業ができます。俗に言われるカーナビゲーションシステムの応用です。周波数カウンターもバージョンアップし現在は岩崎通信製 SC-7203型機を改造し OCXO 恒温槽式水晶発振器を搭載しており 周波数変動は10MHz対して変動周波数は安定すれば 0.1Hz 以下です。副標準級の精度です。(2021/11/06追記)
O-W190 は3KHz 19cm/s のテストテープです。他のスピードでは O-W380 38.10cm/s と O-W095 9.5cm/s のテストテープも存在します。TEAC YTT-2003 と同等品でありフルトラック 0dB で記録されています。BTS規格標準テープと同様にテープの最初にはアナウンサーによるテープの仕様が説明されています。BTS規格と同等と判断しました。
参考記載
他にテストテープとして周波数特性・角度規正信号用として Technics ブランド・テープデッキ調整用テストテープとして存在しますがこれもまた一般市場では簡単に入手できません。長期保管品と推察できますが 記録されている信号レベルは狂っていると判断します。しかし記録された3KHzは狂っていないと思います。製造後長期間経過したテストテープでは 400Hz 0dB及び周波数特性用-10dBの各周波数信号は再生される信号レベルに経年劣化が認められますが テープの伸縮がない限り通常テープに記録された信号の周波数は変化しません。
Technicsブランドテストテープの種類
O-F380 (38cm/s用)400Hz 0dB(200nWb/m)角度規正16kHz NAB時定数 3180μsec×50μsec スポット信号 -10dB 400Hzをリファレンスとして20KHz~31.5Hzまでの14種類 各15sec
O-F190 (19cm/s用)400Hz 0dB(200nWb/m) 角度規正16kHz NAB時定数 3180μsec×50μsec スポット信号 -10dB 400Hzをリファレンスとして16KHz~31.5Hzまでの13種類 各15sec
O-F095 (9.5cm/s用)400Hz 0dB(200nWb/m) 角度規正10kHz NAB時定数 3180μsec×90μsec スポット信号 -10dB 400Hzをリファレンスとして12.50KHz~31.5Hzまでの12種類 各15sec
などのテストテープが存在します。このように当時テープデッキ製造会社では必ず調整用テストテープが存在します。ほとんどが NAB(全米放送事業者協会 The National Association of Broadcasters) 特性で製作されているため規格が同じでないと各社デッキ間の互換性(コンパチビリティー)が取れません。道楽調整作業では各社が製造されているテストテープがあればデッキの調整作業ができます。このテープによりワウ・フラメーターでの調整が可能となりました。又副標準テープの校正作業もできます。周波数カウンターを使えば 38cm/sec,9.5cm/sec の正確なテープスピードもテストテープを使って調整は可能です。NABイコライザー特性では38cm/secと19cm/sec のイコライザー特性は高域時定数が50μsecであり 同じイコライザー特性であることが判明します。EEポジションで使用する EEテープについてはイコライザーはNAB特性ではなく高域時定数が違っています。
このようにマニュアルに記載されている TEAC純正のテストテープではありませんが BTS5313規格標準テープ・TEAC YTT-5001A LEVEL SET TEST TAPE・Technics O-W190 19cm/s 3KHz用のテープスピード・テストテープは苦労して入手しました。これらを使いメーカー調整と同等である19cm/sでの正規デッキ調整が可能となりました。
自己で作成したテープスピード測定用タイミング信号付きテープを作成に要した苦労と時間は何であったのでしょうか。しかしこの苦労もテストテープが入手できない方への参考となれば幸いです。
ワウフラッター計を使用すればカセットテープにおいても3KHzテストテープMTT-111Nを使用すればオープンリールテープと同様にテープスピード調整作業は簡単になります。Aシリーズなど旧機種のACモーター駆動であればテープスピードの調整はできません。電源周波数に同期して回転数が決定されるからです。テープスピードの確認のみの作業となります。一部製造工場では直径の異なるモータープーリーの交換微調整でテープスピードが規格内となるように作業はしていました。
正規のテストテープを使って自己で作成した副標準テープスピード調整用テープとの誤差が確認できました。この作業が自己校正(キャリブレーション)作業です。周波数カウンターで精密測定しましたら 自己作成テープでは 3000Hz に対し O-W190 のテープでは 3006.646Hz を測定しました。この数値から誤差は 6.646Hz/3000 を計算すると 0.0022 となり パーセントで表示しますと -0.22% であることが判明しました。1%以内であり作成した副標準テープスピード調整用テープは精度が確保できていると判断できます。X-10R その4では 自己作成のテープスピード調整用副標準テープでは FWD +0.44% REV +0.21%に調整されていることが判明しました。副標準テープとテストテープとの誤差は約-0.2%でしたのでつじつまが合います。調整後のテープデッキはスペック内の規格となっています。FWD REV での誤差も 0.5%以内です。自作副標準テープでも活用ができることが証明されました。副標準テープを使った調整では誤差を考慮して調整すれば正規のテストテープとほぼ同等の誤差の少ない調整が可能です。
以前自己で修復し精密測定したデッキX-10Rで誤差を吸収した3000Hzの副標準テープを作成しています。これを利用すればTEAC のテストテープと同じようなテープスピード測定及び調整ができます。念のためダブルチェック方法として調整済みのデッキを 1905mmごとにマークしたテープを再生し PCを使い デジオンのソフトで精密測定を実施して誤差を把握しています。又テープスピード用テストテープが入手できたため校正作業もできました。テストテープなどでは通常試験成績書(校正証明書)には誤差を数値記入されたものが添付されます。BTS規格テストテープではシリアル番号別に検査日が記入された校正表(試験成績表)が添付されています。
現在入手可能なテストテープですが MRL にリストアップされている 400Hz/0dB 200nWb/m を含む新品の校正表がついたテストテープを購入しなければならないのでしょうか。国内では注意深く探せば MRL 1KHz 250nWb/m のTEST TAPE は入手できるようです。修理業者とは違い道楽ですので新規購入は懐具合と相談して考えさせていただきます。
まとめ
一応英文のサービスマニュアルに従って記載したつもりです。参考程度とご理解ください。見苦しいとは思いますが作業内容をデジカメで撮影しました。参考となる画像も掲載しました。文章だけでは技術的な内容はうまく表現できません。詳細まで記載できていないと思います。小生のX-10R を含め 5台のX-10R が動き出しました。道楽部屋は足の踏み場がなくなりつつあります。この辺で X-10R は おひらき とさせていただきます。道楽としては安価なジャンク品を物色し 時間つぶしとしています。ジャンク品 一部破損・紛失している X-7RMKⅡ を手を付けてしまいました。ほとんど X-10R とリールサイズを除くと大きな違いがありませんがEEテープ特性などを実験をするためです。EEポジション生テープは手持ちがなく今後検証する予定です。
メーカー修理・実績のある専門修理業者は別として 骨董品のオープンリールテープデッキなどを修理されている通称町の電気屋さんでは修理・調整作業で使用している測定機類は定期的に費用の発生する校正作業をしているのでしょうか。疑問として残っています。自己で測定機類の校正・修理・調整できる方はどのくらいおられるでしょうか。使用されるユーザーの要求度で仕上がり精度は異なります。感覚的な完成度ではなく 時には数値による測定データーも必要であると考えます。道楽作業であれば自己満足の領域なのですが なるべくオリジナルに近い仕上がり精度となるように試行錯誤をしながら楽しんでいます。
今回テープスピード調整で使用したワウ・フラッターメーター LFM-39A が故障状態です。内部を点検すると3KHzの信号をパルス波に変換するコンパレーターIC LM710CN が壊れており 国内の半導体販売店を探しましたが見つかりません。仕方がないので NJN4558DD を使ったコンパレーター回路に変更した結果正常に動作するようになり自己校正をしました。時には測定機類も修理・改造・調整しなければなりません。この測定器ではテープスピードの調整と同時にワウ・フラッターの数値も計測できます。
磁気テープとリーダーテープの接続 (磁気テープ間の接続)
40年以上経過した昔録音されたテープが数多くあり 今回オープンリールデッキを修復しましたので 当時のテープをデジタル変換作業に伴いテープを確認すると 接続部の接着剤の劣化により磁気テープとリーダーテープが切断状態です。
このオープンリールテープデッキが主流であった時代では簡単にアクセサリー類なども入手できましたが 現在では入手が困難となっています。通信販売などではスフライシングテープは昔販売されていたテープの幅が異なっていました。又販売していても高額となりますので現在でも入手できるものを探しました。
左の画像の右側が40年以上前のスフライシングテープであり現在では接着面の劣化により使用することができません。正規のスフライシングテープは18mm幅であり 通信販売などではスフライシングブロックを使って編集接続をするためテープ幅が1/4インチ・1/2インチ幅のテープしか販売されていません。昔は放送局でさえスプライシングブロックを使わずはさみを使い手で斜め切りで接続していました。そのためスプライシングテープは接続する磁気テープなどに対して十字となるように接着していましたのでテープ幅は18mmが必要なわけです。接着後はみ出たスプライシングテープをはさみでトリミングをして接続していました。
今回同等品のスプライシングテープの代替品を探しましたら 100均もしくはホームセンターなどの文具売り場で見つけることができました。この代用スプライシングテープが Soctch メンディングテープです。テープの素材はアセテートベースであり 初期の磁気テープに使用されていた材質ですので問題はありません。ただテープの厚みが多少分厚くなっていますが使用上問題は発生していません。購入時は18mm幅を購入することをお勧めします。慣れれば手作業でもテープ間の接続は可能です。
テープの接続・編集
今回汎用品を使った磁気テープ間の接続およびリーダーテープの接続方法です。
準備物としては上図のごとく汎用品を使って接続します。工具としては はさみ・ピンセット・文鎮2個(アルミブロック)・紙・メンディングテープなどを準備します。
今回の接続は磁気テープとリーダーテープの接続例です。
テープを重ねて切断接続箇所をはさみを使って切断します。切断面は斜め切断としています。
片手で正確にテープを重ね合わせた状態ではさみを使い切断するにはある程度の訓練が必要と思います。
接続するテープを紙の上に切断面を突合せます。両サイドの文鎮はアルミブロックで下部底面にはゴムシートを接着してあります。両手を使って作業しますのでテープがずれないように文鎮で固定します。メンディングテープを切り出しピンセットを使って接続面に貼り付けます。その時に接続するテープと紙を同時接着します。接着面を爪などを使って圧接をします。
接続した個所のメンディングテープの余剰部分をはさみを使って切断します。その場合下敷きであった紙も切断します。テープ幅が接着面においても同じ幅に切断します。ただ切断するときには心持テープ幅が小さくなるようにするのが得策です。
接続が完了しました
このようにスプライジングブロックを使用しなくともテープ間の接続は可能です。40数年前でも手作業でテープの接続作業はしていましたが まさかこの時代にテープ接続作業が必要になるとは思いませんでした。
注意 磁気テープ編集に使用するはさみは必ず消磁してから使用してください。帯磁したはさみを使うと磁気テープにノイズが記録されます。
代用ホールドダウンテープの作成
出費さえ覚悟すれば入手できる ホールドダウンテープを作成しました。又簡単に入手することができないテープです。このテープはリールに巻かれたテープを仮止めするためのテープです。通常生テープなどを保管する場合テープの端がそのままですとテープがほどけてしまいます。これを防止するためにテープの端をリールに固定又はテープが緩まないためにテープを仮止めするテープです。スプライシングテープのように接着力が強い場合接着された箇所から剥離すことが困難となります。接着力が弱く簡単に取り外しができ かつある程度の接着力のあることがホールドダウンテープの条件となります。
ここで身近にある接着テープを探しましたら 養生テープを見つけ出すことができました。ビニールテープ・セロハンテープでは接着力が強くはがしにくいことになります。マスキングテープも視野に入れましたが接着剤の劣化があるため敬遠しました。
工作としては50mm幅の養生テープを準備します。プラスチックフィルムなどのシートに養生テープを張り付け後カッターナイフで約6mm幅に切断して使用します。接着剤部の長さは20~30mm程が適当と思いました。養生テープ幅が50mmありますので 10mmを折り返して接着剤部を30mmとするとはがす場合の取っ手となり使い勝手がよくなります。プラスチックフィルムが入手できない場合は養生テープを紙などに接着してフイルムの代用として使用することができます。
接着力が強い場合は接着剤面を手でこすり粘着力を弱くして使用してください。数回は繰り返して使用することが゛できました。
以上2点が貧乏人によるアクセサリー類の工作です。
今回修復しました骨董的なオーディオ機器ですが 現代のデジタル機器と異なり機械音痴の方はご使用は控えてください。なぜなら電気回路と回転機構を有する精密機械が合体した機器です。特に回転部のメンテナンスをしなければ正常な機能を維持することができません。この条件を理解したうえで骨董的なオープンリールデッキでのアナログ音楽鑑賞ができるようになります。カセットデッキのように簡単に操作できる機器ではありません。又それが面白いのですが。
骨董的なオープンリールデッキの保守
オープンリールデッキを現代でも活用するにはある程度の軽度のメンテナンス作業が発生します。新品の生テープだけを使用する場合は大きな問題となりませんが 新品の生テープはほとんど入手できません。となると製造後1/4世紀以前に製造されたテープを使用する場合テープの劣化に伴いテープ走行系が汚れやすくなっています。当初に比較してテープ走行系のメンテナンス回数を増やさなければ正規の特性が得られず テープ走行も不安定となってしまいます。特にピンチローラー表面が黒光りするようではテープ走行が安定しません。クリーニングキットなど取説で記載されている綿棒などでは完全に汚れを除去できません。機械ものですので走行系の掃除・注油を怠っては十分な機能が得られません。一番確実な方法はピンチローラーを取り外しアルコールを含浸したウエスで清掃するのがよいと思います。その場合シャフトとピンチローラー軸受けには注油が必要となります。又組み立て時にはポリスライドワッシャーを紛失しないようにしてください。現代のメンテナンスフリーに近い音響機器と異なり 必ずオープンリールデッキを扱うには使用者がメンテナンスを実施しなければなりません。
理解しにくい文章を最後まで流し読みいただきありがとうございました。過去の経験から多少ともこの自己責任での道楽作業内容をご理解いただければ幸いです。修復作業内容としてここまで単独で内部を触られる方は数少ないと思います。道楽では思ったより費用が発生します。パチンコ・競馬などギャンブルで負けるのと比べれば些細な金額です。ボケ防止を兼ねて この道を楽しみましょう。
通常 修復費用さえ覚悟すれば 内部を分解せずにメーカーサービス依頼がベストです。
以前はTEACサービス部門で補修部品を購入できたのですが 最近部品発注をしましたら 部品の供給ができません との返答でした。今後骨董的なデッキ修復に支障が発生します。汎用的な電子部品であれば一般市場でも入手ができるのですが TEAC専用部品の調達に苦慮します。ただ機器を直接TEACに修理依頼した場合 内部を触っていない機器であれば Xシリーズでは修復は可能のようです。製造後30年以上経過しており PL法がらみなどで 補修部品だけの販売は避けているようです。困ったことです。道楽を続けるのに悩んでいます。
メーカーサービスによるオーバーホール料金と比較して 金持ちオーディオマニアの必需品 オルトフォンMCカートリッジSPU新規購入よりは安価であると思います。PCを操作できない変コツ爺さんたちはハイレゾの音響装置も扱えず いまだにスクラッチノイズ・ランブルノイズの発生する骨董品LPレコード・SPレコード再生に多額のお金を投資・投入しています。現在オープンリールデッキは製造販売されていません。しかしレコード盤再生装置はいまだに50万円を超える装置も販売されています。音がよいと美恵ばかりであり 自分の耳の特性を一度測定してみればどうでしょうか。10KHzの音が聞こえますか? 年を重ねれば耳で聞こえる周波数は低くなります。自然の現象です。
小生のような貧乏人ではSPUは購入したくとも購入できません。ご判断ください。大切な録音テープは早々にデジタル変換をしないとデッキもテープも劣化が進みます。人間も劣化が進みます。寿命もあります。あの世までもっていくことができません。お陀仏となれば大切な収集物も廃棄費用が発生する粗大ごみ・産業廃棄物ともなりますので。各自ご判断いただければ結構です。道楽ですから。
無銭庵 仙人の独り言
記載したように測定の基準が不明の場合小生は試行錯誤しながら基準値を導き出しています。メーカーでは考えられないような方法で現実には調整ができます。完成度は不明ですが。測定機器も自己校正を実施したものを使用しています。測定機類は道楽作業であるためメーカー校正は実施していません。 大手企業の工場・研究所などでは ISO規定の測定機器は定期的に高額なメーカー校正を実施しています。又 校正証明書も保管しています。品質管理部では定期的に社内校正をしています。小さな個人経営の修理屋さんでは 疑問があります。道楽作業ですが測定機器類は定期的に自己校正は実施しています。校正作業の基準となる精密測定機器類も数多く収集しています。オークションなどで流通している極上完動品と記載されていても品質はほとんどの場合良くありません。メーカー修理・専門業者などでの修理・調整では高額な費用と時間が多々発生します。道楽が興じて測定器群を収集され 技術力があり採算どがえしで 修理が趣味のような方も数少ないですがおられるようです。通常なかなか業者の良し・悪しの判別がつきません。完成度の証明には人間の感覚だけではなく 測定機器によるデーターも時には必要です。標準(テスト)テープも使用期限があります。テープの定期的な校正もしくは新品の校正証明書のついたテープを購入しているのでしょうか? ユーザーの完成度要求具合で機器修理・調整仕上がりに大きな差が発生します。妥協する程度で修復費用もまた違ってきます。特に各ヘッド摩耗状況での妥協する度合です。X-10R その4 ではヘッド摩耗頻度は一番少なく 測定治具も試行錯誤しながら工作したものを使って修復には時間短縮となっています。作業も慣れたこともあり のべ2~3日間程で ほぼ修復・調整が完成できるようになりました。作業途中で10号リールの録音されたテープをエージングを兼ねてオートリバスモードで再生しました。長時間音楽を再生して作業をさぼっています。作業途中でデジカメで撮影もしながらです。疲れれば さぼるの繰り返しでの修復です。若いころと違い視力も気力も思考力も悪くなっています。無駄な時間も結構あります。ベテランの優秀なメーカーサービスマンであっても エージングを含めると まる一日以上かかる作業であると思います。ユーザの完成度及び要求程度により作業内容も違ってきます。このような修理作業ではデッキの状態により作業内容が大きく変わってきます。分業作業はできません。家内制手工業のような作業です。これらの作業内容・時間から修理費用が算出できませんでしょうか? 必然的に企業の管理職あたりでは簡単に積算すれば計算できると思います。営利を目的としない道楽での作業・頭の体操 修復作業も楽しまなければなりません。
凡人のぼやきでした。
最近入手しました Quantegy 456 未開封新品を入手しました。テープはポリ袋で密閉されており外気から遮断された状態で入手しました。製造ロットから2002年1月15日製造品と判明しました。製造後10年以上経過していますが非常に良いコンディションです。Quantegy は現在製造を終了してから数年以上になります。旧 Ampex の血を引いたアメリカの会社です。入手したくとも新品の生テープがありません。小生保有している生テープは新しくとも30年以上経過しています。経年劣化も確認できています。今回録音系も修復しましたので どれだけの音質・クオリティーで録音・再生できるか実験したかったため購入しました。評判の良いテープでしたので 好みの音楽を録音・再生しますと 小生好みの女性ボーカルが透きとおって再生されました。フルオーケストラのクラッシック音楽も録音テストをしましたがダイナミックレンジも広くオーバーレベル録音をしても他のテープと比較すると歪が少ないと感じました。当時は Ampex,BASF などの輸入品生テープは購入していません。今後新品のテープは入手困難と思います。 X-10R 修復作業のため道楽に使える貯蓄が目減りしています。底が見えてきました。いつまでこの道楽が続くやら ! ! ! ガラクタが増殖しています。 ドツボにははまりたくはありません。
現在では新品の生テープは通販で購入可能です。販売価格は多少異なりますが高額な費用の出費できる方であれば メタルリール仕様の100番、150番タイプの生テープとしてRMG (旧BASF系)の生テープが入手可能です。QUANTEGY (旧AMPEX) 製は製造中止となっており新品の在庫品はなかなか見つかりません。国産品は同じく新品は入手難です。メタルリールは傷んでいませんので RMGパンケーキ型の生テープを購入し 古く傷んだ生テープと巻き替えて使用するのがコスト的にベストです。ただメタル空リールを分解して巻き替え作業が発生しますが パンケーキ型テープのハブに廃棄するテープを巻き変えればかさばる廃棄物とはならず簡単にプラスチックに分類できる廃棄物で処理ができます。現在では中古テープ購入よりは安心してアナログ録音が楽しめる方法と思います。当時の生テープ購入価格に比較して約2~3倍前後の費用で購入ができます。参考まで ! ! !
新品の生テープではテープパスに汚れが付きにくく テープのドロップアウトも少なく 精神的にも安心して動作することができます。ヘッドなどを清掃する回数が少なくてすみます。所有している3~40年前のテープでは使用後テープパスメンテをしなければなりません。早々にデジタル化する理由です。
最近2tr38が見直されています。このデジタル時代にアナログ録音ミュージックテープが中国で製造されています。QUANTEGY 499 全世界から在庫品生テープを購入して限定製造されています。販売価格は各ジャンルにわたり \29,400- で販売されています。STUDER A80 を使ってのマスター機76.2cm/sからのアナログ・ダイレクト録音されたミュージックテープです。オープンリールテープによるアナログ録音が一部のマニアで見直されているようです。小生もその一人かもしれません。
今回の修復作業を通じて自分なりの解釈をしました。参考としてTEAC 4Tr/2ch A,X シリーズ各機種のサービスマニュアルも参照しましたが どの機種においても調整する数値に大きな違いがありません。又測定方法・テストテープ種にも大きな違いがありません。一貫した調整方法です。録音・再生ヘッドもほとんどは共通部品と思います。機能部品はメーカーサービスにはある程度補修部品として再生産品を在庫しています。入手は可能です。今回キャプスタンベルトは入手しました。現在新品のデッキは製造されていません。TEACメーカーサービス(MTS)ではデッキ製造メーカーTEACと誇りをもって過去に製造されたデッキをレストア後完動品として受注販売もされています。国内大手家電メーカー製ではありえないアフターサービスです。通常10年もすれば機器は粗大ごみ扱いとなります。当時有名なメーカーでさえ時代の流れでしょうか。消滅しており部品においても入手難です。当時の容姿・機能を再現するためには時間・努力と費用が発生します。
今回複数台修復の結果から 邪道ですが 再生 0dB(VUメーター値)では LINE OUT 出力電圧値は -5dBm であり 録音される信号レベルが 0dB(VUメーター値)を録音した場合 再生レベルが 0dB(VUメーター値)となるように各増幅回路の利得を調整しています。今回このX-10Rでは dbx 接続端子があり dbx DECODER SEND で P・Bレベルが -8dBm でなければ LINE出力端子の信号レベルは -5dBmになりません。この dbx DECODER RCV 端子にオーディオジェネレーターからの 400Hz/-8dBm の信号を入力すれば 疑似の 0dB/P・B信号として LINE amp の調整及び再生UVメーター感度調整は YTT-1003 を使用しなくても調整が可能であると判断しました。ただ基準となる再生系統の利得調整(pb gain)はテストテープ(400Hz 0dB 200nwb/m)のレベルセット信号で調整しなければなりません。又録音系もこの数字になるように録音アンプの調整をすればよいことになります。その時のLINE出力端子の信号レベルは -5dBm(LINE, OUTPUT VRはCAL位置) でなければつじつまが合いません。録音に使用する生テープにより録音特性・感度が異なります。ダイナミックレンジを大きくとるため 録音時ある程度はオーバーレベル録音となります。録音用生テープには種類により個体差があります。録音バイアスは細かく調整できませんが 400Hzまたは1000Hz の信号で歪率を見極めながら最適録音レベルを導き出すのがベストであると判断しました。
録音アンプのイコライザー時定数は抵抗(R)とコイル(L,インダクタンス・xL)で調整しています。コイルは経年変化が少なくほとんどの場合録音系の周波数特性(イコライザー特性)は調整することは数少ないと思います。調整箇所はコイルのダストコアです。
再生イコライザー(EQ)については抵抗(R)とコンデンサー(C,キャパシタンス・xC)で調整します。調整箇所はSVR(半固定VR)です。
ちなみに録音バイアス調整はこのX-10Rではトリマーコンデンサーのキャパシタンス(xC)を可変して調整します。コンデンサー容量変化によりバイアス電圧を可変することができます。
公式としては xL=ωL xC=1/ωC ω=2πf で計算することができます。
X-10R 録音・再生アンプ回路の簡易点検方法
邪道の続きとなりますが 今回調整項目順に説明してきましたが 電気回路の各部が正常なレベルで動作しているかを確認するのに役立つと思います。テープを走行させなくても測定機器がそろっていればある程度判断できます。
録音アンプ系
LINE IN入力端子にオーディオジェネレーターからの信号 400Hz/-12dBm を 端子各チャンネルに入力します。モニタースイッチはSOURCEにします。LINE VRを調整して VUメーターが 0dB の位置に調整します。つまみの目盛は6.5付近です。OUTPUT VR を可変してもVUメーターの指針は変化しません。OUTPUT VR と VUメーターは非連動です。OUTPUT VR CALの位置での出力端子で400Hz/-5dBm となるはずです。又録音アンプへの信号としては dbx 接続端子 TO ENCORDER SEND の端子では 400Hz/-8dBm の信号となっているはずです。
再生アンプ系
dbx 接続端子 TO DECODER RCV 端子に 400Hz/-8dBm の信号を各チャンネルに入力します。モニタースイッチは TAPE にします。OUTPUT VR CALの位置にすると VUメーター指針は 0dB の位置になっているはずです。ただ再生VUメーターは OUTPUT VR と連動しているため CALの位置が測定点となります。その時のLINE出力端子の電圧は 400Hz/-5dBm となっているはずです。
今回の調整では上記のレベルになるように調整しています。測定器の誤差、デッキの誤差などを考えると±2dB以内であればアンプ基板は正常に動作していると判断できます。このような結果であれば各調整するSVRは微調整で調整が完了できると判断できます。これらから測定機類は校正したものを使用しないと誤差が大きくなり良い結果とはなりません。
X-10R 導入当時には理解できていなかった事柄です。30数年経過して骨董品測定器類を収集し 修復・実験・調整した結果今回詳細が判明しました。時はすでに遅く 生テープの生産はほとんどのメーカーで終了しています。骨董品機器を現代でも実働させるには 体力・時間・技術力・費用が必要となり特に費用面で悩んでいます。
30年ほど前であれば簡単にメーカーからのサービスマニュアルなどは入手できません。又半導体についても製造メーカーからの規格表などは簡単に入手できませんでした。現在であればインターネットという媒体により全世界からの情報が収集できる時代です。おかげさまでメーカーに頼らず消耗品のベルトは別として自力でX-10Rが修復できました。
追記 (難物修理)
X-10Rその5 その8 悪戦苦闘しましたデッキでの修復内容を追記します。
X-10Rその5(塵・部品取り用・未通電) 苦闘の結果一番程度が悪かったデッキが動き出しました。
X-10Rその8(完全ジャンク品) 以前の所有者が修理放棄した最悪品。内部が多数壊されている。
X-10Rその5はたぶん粗大ごみとして屋外に長期間垂直状態で放置状態であったと思います。雨水による水害品ですのでメーカー修理はお断りのデッキです。後部キャビネットにも多数擦り傷があります。
雨水が機器内に侵入しており 各所に錆が発生しています。部品取り用として購入しましたが どこまでのレベルまで修復できるか ? 悪戦苦闘した結果の忘備録です。以前の所有者では使用頻度が少なく 多数入手したデッキの中ではヘッド摩耗の少ないデッキです。泥水ではなくきれいな雨水の水害品であったためこれらを踏まえて修復・蘇生を決意しました。
到着時輸送破損事故はなかったのですが 鉄さびが多数粉状になっているのが判明しました。雨水でキャビネットを取り付けているねじが錆びつき 分解ができません。電気ドリルでねじを切削する方法しかありません。2か所のねじを切削除去となりました。切削後CRCをねじ部にスプレーをしてから何とか錆びたねじはプライヤーの工具を使って取り外しができました。除去後新しくタップでねじ山の再生です。
このように内部が鉄さびで相当痛んでいる状態からの修復です。内部のシャーシー金具を分解して錆を除去しなければなりません。手間のかかる作業です。電子基板は大きなダメージは目視では確認できませんが水害品のプリント基板は過去の経験から修復が困難な場合が多いと思います。
メカニズムについてはこの本文で記載しているようにキャプスタンベルトが溶解し分解修理作業が大変です。
内部フレーム・シャーシーが錆が発生しているため錆止めをするために全体を分解しました。ここで大きな問題が発生しました。テープスピードピッチコントロールつまみのねじが錆びて分解できません。CRCをスプレーしましたが六角レンチを回転させるとねじ馬鹿となり分解できません。仕方がないのでこの状態で他の部分の分解となりました。VRつまみ3個は何とかねじが緩みました。
各ユニット単位で分解するためリード線のはんだ付け箇所の分離はVUメーター・FWD,REVソレノイドコイルの配線を外しました。基板間の配線はコネクター接続となっているため簡単に分解ができます。
分解後シャーシーなどはワイヤーブラシ・耐水ペーパーなどを使って錆を落とした後 亜鉛ローバルを塗装して錆止めとしました。亜鉛ローバルは高額な塗料ですが 亜鉛どぶ付鋼材に現場加工などをした場合塗布する塗料ですので仕上がりも電気メッキと違和感が少なくなります。底板のアンプ基板用シールド板のさび落とし及び塗装作業。
リモートコントロールコネクター部の錆およびターミナルは分解後金具は亜鉛ローバル塗装、コネクターは洗浄後絶縁テストを実施して結果は良好でした。ただ後部プレートも錆が発生しており裏側は亜鉛ローバル塗装を実施しました。黒色パネル面塗装が浮き出しておりハゲ落ちた部分は黒色のペイントを塗布しました。
バイアス発振ユニットの分解点検についてはバイアス回路周辺が水害となっていたためユニットを点検しましたがユニットは樹脂で封止してあり発振回路には影響がないのを確認しました。
全体の清掃後通電試験をかねて400Hz-10dBの信号を入力テストをすると録音系は信号動作しているのを確認できました。再生系の点検においてdbx端子に-8dBmを入力しましたが信号がLINE OUT端子に出力しません。再生モードで音声が出力しません。キャプスタンモーターの回転が通常より早く回転しているようですが音が出ないためテープスピードは不明の状態で点検作業を進めました。FWDは動作するがREVが回転しない。STOPモードでリールモーターが回転しており停止しないなどの症状が確認できました。水害品ですので修復不能と思われましたが 時間をかけて少しづつ問題を解決して行く作業となりました。今回はまたいやなシステムコントロール回路から手を付けなければなりません。今回は英文のサービスマニュアルの回路図を入手しましたので以前のような時間はかかりませんが複数個所の故障です。水害品でありあらゆる角度から細かく点検作業をしないと診断できません。
洪水・地震・落雷など天災による家電製品・電子機器など被害品は修復はごく一部の機器しか修復はできません。一時的に正常であっても 泥水などが基板・メカニズム細部まで侵入しており 泥の成分により長時間経つと金属腐食及び絶縁不良の症状が発生します。落雷などでは壊れかけの部位などがあり再故障のリスクがあります。洪水などの水害被災機器は修復作業経験により 被災後早期修復をしないと修復は困難であると思います。電子基板はほとんど修復できません。新品基板との交換が必要です。各電気メーカではサービス部門で水害マニュアルが作成され修復後の機器に水害品であることのステッカーを添付しています。水害品は最初に真水で各部を洗浄し大型乾燥機で乾燥させた後修復作業をします。モーター類・電子基板などはほとんど部品交換となります。ほぼ水害機器は買い替え推奨となります。水没したエアコン室外機ではインバーター基板・ファンモーター・リアクターの交換でほぼ機能が回復します。冷媒循環回路及びコンプレッサーは水没してもほとんど故障はしていません。ただ電気回路部品は点検交換が必要です。水害品のPCでは再使用できたのはCPUぐらいです。HDD・メモリーカードなどはほとんど廃棄となりました。PCなどの水害品は内部のデーターを含めほぼ修復不可能です。
現代の自動車などは ほぼコンピューター(電子回路部品)制御されており 信頼性・安全性・快適性が重要視される車両は 泥水などに水没車両では大半が廃車となっています。車両保険があっても天災・水害での保証がない保険の場合高額出費を覚悟しなければなりません。実家も床上浸水被害で大規模半壊の罹災証明を市役所より発行されましたが公費解体ではなく ほぼ公費で修復はできました。自己生活領域内で大規模水害・大震災も経験しています。
X-10R その5,その8 修復内容
① 停止状態でもテイクアップリール回転止まらず
システムコントロール基板リールモーター制御回路 Q71 2SC945 リーク確認。冒頭で説明しましたウィスカ症状によるトランジスターの不良であり交換。ウィスカと判明したのはミューティングがかかる故障時トランジスター外観を細かく点検時です。
② REV再生時キャプスタンモーターが回転しない
システムコントロール回路キャプスタンモーター供給電圧位相切り替え回路の故障です。システムコントロールの制御ICからは制御信号が動作しているが逆転電圧をモーターに印加できない。時代が進むとその後の回路では多用された トランジスター・ICを使った電子スイッチなどと違い2個のリレー(K31,K32)で切り替えている回路です。同じくリレードライブトランジスター Q35,Q36 2SC945 の交換。
システムコントロールICの解析
システムコントロールについてはAシリーズとは異なり電子制御で構成されています。本機に使用されているシステムコントロール回路は汎用IC AN6251 が使われており 当時販売主流であったフェザータッチ・カセットデッキ用として開発された汎用システムコントロールICです。その後の機種に採用された4bitマイコン搭載機とは異なり ゲート回路とフリップ・フロップ回路で構成された汎用システムコントロール回路です。このICの動作シーケンスが理解できないと修復は困難となります。サービスマニュアルには動作シーケンスが明記されていません。汎用ICだけではこのX-10Rでは動作させることができず ICの出力ポートからNAND,NOR,OPampを使った論理・遅延回路が構成されていました。各メカニズム・アンプ回路の制御をしています。IC論理は負論理であり L(ロー)レベルで出力されます。コントロールされた信号を PNP,NPN小電力トランジスターでドライブしています。各回路を制御する構造であり 多数使用されている 2SC945 が該当します。ウィスカ症状で悩んだトランジスターです。今回このシーケンスを理解・解読するのに多くの時間を費やしました。
③ キャプスタンモーターが回転しない その後高速回転
制御回路は修復したが 今度はFWD,REVともキャプスタンモーターが回転しないことが判明。システムコントロールを点検するが異常は認められない。キャプスタンモーターを確認するとオープン状態で導通がない。モーターの分解点検すると整流子とモーター巻線の半田付けが外れている ? 先ほどまではFWD方向が回転していたのに疑問となる。モーター内部を修復後FWD,REVは正常な方向に回転するようになったが 突然音楽再生で再生音が出るようになりました。音楽再生において19cm/sの音楽再生テープで異常にテープスピードが速いのが判明。テープスピードを9.5cm/sに切り替えてテープスピードの変化があるが回転が速い症状を確認。キャプスタンモーターassyを交換しなければならないと思いましたが 回路を調べると テープスピードをピッチコントロールモードとすると回転が正常となり どうも制御回路の不良と判断しました。原因はPITCH CONT 調整用VRのセンタータップが断線していることが判明。VRに雨水が侵入した結果かもしれません。このVRつまみは錆で外れないため詳細を調べることができません。疑似のセンタータップ位置の抵抗値2.5KΩ(2K+510Ω)を精密測定した抵抗で代用することで正常回転となりました。定速回転およびピッチコントロールも正常となりました。このキャプスタンモーター制御は電圧比較アナログサーボです。断線のため電圧比較基準電圧が狂い制御回路は回転を速めるように制御したわけです。
今回モーターが故障した原因はキャプスタンモーター制御回路が制御不能となり過大電流のため回転子内部温度上昇し半田が遠心力により吹き飛んだと判断しました。回転子巻線は巻線抵抗値および巻線絶縁被膜の変色を点検しましたが異常は認められませんでした。前項目異常状態点検時 再生音が確認できない事もあり 別の異常個所を点検中モーターが高速回転していたのが原因であると思います。通常であればピッチコントロールVR交換となりますが部品がありません。代用処理で修復できました。後日正規のテープスピード調整をしましたが制御回路は大きな狂いはありませんでした。キャプスタンモーターが生き返りました。波及故障です。モーターの構造はプラモデルなどで使用しますマブチモーターの構造と似通っていますが 各部品は精度は良いモーター構造です。人間が作った部品ですので注意深く構造・部品を確認すれば修復可能と思います。今回のように運(工作技術)がよければ蘇生できることもあります。
キャプスタンモーターの構造は直流整流子モーターの構造です。モーターケースには円筒形のフェライト磁石(固定磁極)が組み込まれており モータープーリー取り付け側にはモーターシャフトに組み込まれた円盤状のフェライト磁石が取り付けられています。 この磁石が回転することによりモーターケース内に固定されたコイルにより交流信号が発生します。交流発電機の構造と同じです。FG信号として回転数の制御信号として扱われます。整流子に接触する素子はカーボンブラシが採用されておりモーター内部には摩耗した粉状態の炭素微粒子が出てきました。手前の黒い汚れがカーボンの粉末です。
モーター内部をブロワーで清掃後各軸受け(メタル)にスピンドル油を注油して再組み立て後正常動作を確認しました。X-10R その5では整流子に半田付けされたコイルの再ハンダで修復できています。
X-10Rその8での症状
キャプスタンモーターの分解修理はお勧めできません。以前の所有者がキャプスタンモーターを分解していました。正常な状態となっていません。なぜなら微妙な微調整が必要だからです。もしも分解組み立てをするときには必ず分離できる位置にマーキング(機械を分解するときには必須項目)をして分解組み立て時同じ取り付け位置になるようにしなければなりません。このDCモーターは回転子の極数が多く 取り付け位置により回転方向が逆転してしまいます。取り付けねじ位置が120°の角度で取り付けられており 角度を間違えるとモーターは逆転してしまいます。又取り付け位置角度も微調整できる構造です。この微調整はモーターの回転方向がCW,CCWとも確認・調整をしなければなりません。運転電流が少なく又回転が高速回転となるようにするための微調整が必要です。回転が滑らかになるように通常の整流子モーターよりは多くの回転子極構造となっているため 微妙な位相合わせが発生します。
通常の修理ではキャプスタンモーター完成(制御基板付)での修理となります。DCモーター単体での販売はされていません。
参考記載
X-10Rのキャプスタンモーターは直流整流子モーター構造です。整流子モーターの欠点として必ず整流子に接触するカーボンブラシの構造によりカーボンブラシが摩耗し摩耗が進行すると回転ムラ・回転しないことになります。直流ブラシレスモーター構造ではありません。消耗品的なモーターでありこのモーターでは産業用モーターのようにブラシ交換ができません。モーター完成品の交換となります。
左側のテンションアームローラーにはキャプスタンモーターの回転を制御するマイクロスィッチが取り付けられており テープを装着するとキャプスタンモーターが常時回転します。消耗的な整流子モーター構造ですので 骨董品デッキを長時間延命するためにもテープを装着したままの放置状態・長時間通電は避けてください。
通常のメーカー・修理業者などのアフターサービスと違い 骨董品機器での道楽修復作業です。 今回のように補修部品の供給が困難な場合がほとんどです。代用部品の調達・故障部位の修復をするためにも 故障原因を追究し部品レベルまで修復する場合も多々発生します。
テープスピード ピッチコントロールVRは特殊VRであり 構造上センタータップ取り出し端子のが破損しやすい構造と判明しました。X-7R MKⅡその6でも経験しました。最初は正常であったがVR取り付け位置調整時VRシャフトに大きな力が加わるとVRの抵抗体基板にクラックが入り断線することが判明しました。別付けの2.5kΩの固定抵抗器を取り付けることにより正常動作となりました。VRの取扱いに注意が必要です。
④ 400Hz信号による録音テストでFWD R-chが録音できない(REVは両チャンネルとも良好)
次工程で録音テストをするとFWD R-chが録音レベルメーターがほとんど振りません。REVが正常のため録音アンプは正常と判断しました。次に録音バイアスをミリバルで確認するとFWD R-chがバイアス電圧がありません。ノーバイアス状態です。80pF C302を取り外し点検すると可動電極が破断していました。雨水の侵入により電極板が破断したためバイアスが加わらない状態です。電極はたぶんリン青銅にメッキをしたバネ特性の電極と思われ誘電体は雲母シートです。部品も手持ちがないため電極を修理して元に戻しました。ミリバルでバイアスを仮調整することにより録音ができるようになりました。後日正規のバイアス調整。
⑤ 長時間再生エージング中に時々両チャンネルとも音途切れが発生
当初再生音が出なかったこともあり原因を追究した結果 再生ミューティング回路が誤動作していることが判明。またもやシステムコントロールの信号を追いかけると制御トランジスターの動作がおかしくQ54~Q59を点検するとマイグレーション状態ではなくウィスカ症状がルーペにより確認できました。この時点で前に交換した2SC954 全数に発生量の違いがありますが金属単結晶のウィスカが確認できました。今回のシステムコントロールにおける様々な故障はこのウィスカが犯人であると判断しました。システムコントロール基板内では約25個の同じロットのトランジスターが使用されています。手持に数多くの2SC536は無いため 今後不良となりえるトランジスター2SC945全数ウィスカ対策処理を実施しました。
⑥ REV表示緑色のLEDが点灯しない
X-10Rその8での症状です。通常ではLEDの故障はほとんど発生しません。フロントパネルに取り付けられている走行表示のLEDが点灯しません。LEDドライブ回路を点検しましたが異常はなくLEDが断線しているのが判明しました。憶測です。以前の所有者がが電源を投入した状態でフロントパネルに取り付けられている操作スイッチ基板を修復するために分解しようと判断しました。REV表示LEDのリード線がメカニズムブロックのシャーシーに接触し過大電流が流れLEDがオープン状態になったと判断しました。スイッチブロックを分解するにはメカニズムブロックを取り外さなければ分解できません。横着作業は波及故障の原因です ! ! !
愚痴です ! ! ! (難物修理)
⑦ プレイモードに移行しない。F・FWD,REW 操作時停止モードにならず電源を切らない限り停止できない症状
X-10Rその8はジャンク品として購入しましたが開けてびっくり 最悪のコンディションです。故障個所が数多く他人の作った多重故障の修復には多くの時間が費やされています。多数のX-10R系を修復してきましたが複数個所の不良があり最悪の機器です。到着時の内部点検結果と順次修復後判明した不良個所です。水害品X-10Rその5よりも修復困難なデッキです。道楽作業であるから修復できる事柄です。営利目的では修復に多くの時間が必要であり部品調達に苦慮する 修理お断りのデッキです。
メカニズムは一応分解修理をしていましたがEリング2個欠品。代替えとして針金で代用している。ねじ類は取り付け場所により品種が違っていますが正規の品種ねじが取り付けられていない。メカニズムの組間違え・TRの誤配線(E,Bが逆挿入)・交換している電気部品が正規の仕様と異なる部品を使っている・テープ走行系のずれ・ポリスライドワッシャーの欠品・リバースセンサースプリングの変形・配線コネクターピンの折れ・ヘッドの段付き摩耗・REV,LED断線・カウンター数字のはがれ・後部筐体の破損・汚い半田付け・オーディオ基板に多量の接点復活剤の付着・その他傷及び塗装はがれ・など多数箇所が不良です。
いまだ全機能の点検はできていません。本当の当初故障はシステムコントロール回路IC,AN6251の動作不良が原因で様々な症状を発生しています。STOP,D-PLAY出力回路の故障により様々の箇所が動作しません。仮の処置としてCD4069BPインバーター回路を使った別基板で一部シーケンスを作製し修復ましたので再生機能だけは動作できる状態まで修復しました。このシステム制御ICは負論理で動作しています。NANDの入力端子を並列接続としてインバーターとして使用されている個所もあります。システムコントロール回路からのミューティング回路が正常な動きをしていないため PBアンプのミューティング回路は殺しています。録音機能についてはいまだ未着手状態です。サービスマニュアルだけでは詳細なタイミングチャートの解読はできません。特にシステムコントロール回路の動作シーケンスチャートは記載されていませんのでAN6251 製造メーカー発行データーシート仕様書と回路図との頭の痛い解読作業です。
本当の犯人が判明しました。D,PLAY出力ゲート端子に接続してある外部遅延回路でした。リール回転検出回路です。供給側リールモーターシャフトに取り付けられたマグネット回転によるホール素子を使った回転検出回路です。磁気信号の小さな信号を増幅するためのIC MJM2901 がマイグレーション症状により故障していました。X-7Rではリール台回転検出回路は省略されており ICのCR2端子には220KΩにより5Vラインからプルアップしています。X-7Rと同様のプルアップ抵抗を取り付けるとAN6251は正常動作となりました。NJM2901をルーペで観察をするとマイグレーション症状が確認できIC現物修理で正常となりました。AN6251のCR2端子はICの閾値(敷居)電圧よりも低いL(ロー)レベルではD,PLAY端子は動作することができません。H(ハイ)レベルとなることによりD,PLAY回路は動作します。
サービスマニュアルの回路図には正常動作時の各部電圧が記載されていません。各回路動作による動作原理が理解できないと回路修理はできません。又シーケンスの解読力・理解力も必要です。
⑧ 一応再生ができるまでに修復をしましたが 時々モニタースイッチが SOURCE の時にR-ch ランダム雑音(ノイズ)が発生する
LINE VR が絞り切った状態でも発生するためVR以降の回路故障と判断しはました。回路図を追っていくと後部パネルにDBXユニットを接続するRCA端子基板にある増幅回路と判断。案の定後部パネルに傷が多数ついており 増幅回路のTRに新しい半田付けがありました。TRは交換していないが出力側のカップリングコンデンサーが異種類を取り付けられているのが判明。正規はディップタンタル(D.T)コンデンサーと配線図にも記載されているが 通常のCE型電解コンデンサーが取り付けられている。手持にD.Tコンデンサーが無く 同等以上品質のOSコンデンサー(C555 1μF 16WV)に交換。Q551 曲者の 2SC945が使われており TRのリード線付け根をルーペで観察すると小さなマイグレーション症状を確認できたため修復し 状態変化を確認しましたが正常となりました。
⑨ 録音ができない
X-10Rその8 メカニズムは⑦の修復で何とか正常となったのだが 目視点検で新しく半田付けのある個所に疑問がありました。以前修理をした人はある程度電子回路技術があると思うが中途半端な修理技術者と思われる。X-10R系は多数道楽で修復してきましたがここまで犯人を見つけるのに苦労した機器は初めてです。冒頭で述べている 最悪の壊し屋と思われます。
再生はできるが録音ができない症状が判明。その1 バイアス発振ユニットを取り外した形跡。その2 FWD,REV切り替えスライドスィッチに新しい半田付け。その3 バイアス発振回路の抵抗(R491 47Ω 1/2W)が焼けている。焼けている抵抗を正規部品と交換するが過大電流を確認。
以上の点検結果からどこかの回路で短絡事故があると判断。ここからが悪戦苦闘の始まりです。バイアスOSCユニットを取り外し定電圧電源で動作試験をしましたが異常がないのを確認。これからは各回路網を切断分離して漏電個所の追及です。結論はFWD,REV切り替えスライドスィッチと判明。スイッチを取り外し点検するとスイッチを分解した形跡が判明。分解すると中にある部品のスライド接片が変形及び接点間に黒い異物を目視する。通常スライドスイッチは分解しません。変形した接片を回路としては使われていない個所に変更し接点を洗浄後組み立てた結果漏電は修復できました。人災修理者が作った故障です。部品供給不能の場合 ある程度は分解修理はしますが 部品の構造を理解できない場合は分解してはなりません。
⑩ 長時間再生エージング中に再生音が小さくなり高域も低下する
⑨まで修復後長時間再生エージング中に両チャンネルとも高域が下がりヘッド汚れのような音質になり最終的に音小となる。及びランダムノイズを含んだような症状となる。走行系テープパスの掃除もするが改善できない。再生ミューティング回路も点検するが異常は認められない。再生アンプの電圧点検及びオシロスコープで波形観測をするが原因がつかめない状態です。再生増幅回路は最終的に異常がないと判断し もしかと思いバイアス発振回路の点検をするとバイアス信号がふらつきながら発生しているのが判明する。再生モードであるためバイアス回路は通常働かないのであるが不安定ながらバイアスが発振していました。再生していたテープが消去されていたのである。原因はバイアス発振回路スイッチング回路の不良と判明。ダーリントン接続で動作しているトランジスター・スイッチング回路であり Q329 2SC1740 を点検すると テスターでの導通試験では異常は認められません。またもやルーペを使ってトランジスターの付け根を観察するとB-C間微量のマイグレーション症状が確認できました。ダーリントン接続であるためベース回路はハイ・インピーダンスで動作しています。動作電圧でリーク症状であったと判断しました。ノイズを伴った発振電圧がふらついていた理由です。
バイアス回路及びスライドスイッチを以前の修理者が点検し壊していましたが これが本当の故障原因かもしれません。おまけに初段再生増幅アンプ回路も点検していたことを推察すると 真犯人のようです。
このように長時間エージングを実施すると違った故障が発覚します。2本のエージング用・LPレコードからの音楽録音されたテープがお釈迦になってしまいました。入手困難な高額なテストテープではなく被害は少なくすみました。このような最悪な故障も存在します。
⑪ 長時間エージング中にキャプスタンモーターが回転しない
⑩の不具合も修復完了し好きな音楽再生しながら長時間エージング中にキャプスタンモーターが突然回転しなくなる症状となりました。以前の修理者がキャプスタンモーターを分解及びキャプスタンモーター制御基板のコネクターに接続するコネクターのピン折れがあったのを含め他にも問題があったように思います。モーター単独では回転はします。制御回路不良と思い回路を点検すると回転制御パワートランジスターがドライブされていません。コンパレーターICNJM2903Dの仕様書を確認し故障原因がICの故障と判断。交換したNJM2903D ICメーカー仕様書に記載されているパルスジェネレーター回路で動作試験をしましたが 2つのユニットともご臨終でした。NJM2901N は正常に回路動作が確認できています。これらのコンパレーターICは電源電圧の中点電圧付近で正常時は動作しています。故障時はINPUT +,-端子、OUTPUT端子が極端に電源電圧に近づいていていました。回路の中点電圧よりもかけ離れている場合も同様に故障しています。リール回転検出回路ではOUTPUT端子は電源中点電圧よりもローレベルとなっており システムコントロールICが正常に動作していませんでした。以前修理中に一時キャプスタンモーターが回転しない時があったのですがしばらくすると回転が正常となり原因は追究できていません。国内いろいろ半導体販売店を探索した結果 NJM2903Dを見つけ出せました。30数年前のICであったため心配しましたが購入できました。その販売店ではリール回転検出回路コンパレーターIC NJM2901N もリストアップされていましたので2種類を発注となりました。仕様書によるとこの二つのICは等価回路を見ますと同じユニットが搭載されているICと思います。
入手後NJM2903D,NJM2901N を交換し動作は正常となりました。またもや長時間エージングとなります。
⑫ 長時間エージング中に不安定なテープ走行となる
FWD再生途中で音跡切れのような症状。テープ走行系を注意深く観察すると 再生ヘッドにテープが正常に圧接できていないことが発覚。テープ走行系・ピンチローラーなどの清掃を実施しても改善しない。供給リールに手でブレーキをかけてバックテンションを与えると正常となる。故障原因はバックテンションの異常である。色々メカニズムを点検するが原因がつかめず長時間悩みました。再度キャプスタンベルトを交換しても改善できません。
犯人はフライホイルのキャプスタン軸の摩耗と判明しました。摩耗箇所はテープ接触面の軸が摩耗し段付き状態を目視確認。他のX-10Rキャプスタン軸と比較すると摩耗頻度の違いが目視で確認できました。X-10Rその8 ではREVモードではテープテンションが正常です。この症状がディュアルキャプスタン構造の欠点かもしれません。Aシリーズの機器ではここまでキャプスタン軸の摩耗頻度は多くありません。テープスピードが微妙に異なるキャプスタン軸の構造により テープをヘッド面に圧接する場合 テープスリップ箇所はキャプスタン軸部であり 接触しているテープ間でスリップ現象が発生しています。スリップ時テープの磁気面が紙やすりの働きとなりキャプスタン軸を研磨している状態といえます。これがキャプスタン軸の摩耗です。摩耗すると直径が小さくなるとテープスピードが遅くなり送り出し側とのテープスピード差が小さくなりテープテンションが発生しないことになります。これが故障原因と思います。ピンチローラーが汚れやすいのも納得しました。
修復には左右フライホイルの交換となります。初期の使用者はFWD方向を多く使用し REVモードがあまり使わなかったため キャプスタン軸の左右での摩耗頻度が異なったための症状と判断しました。REV,FWDをむらなく使用した場合 このような症状とはならないと思います。
FWD,REVでテープスピードが微妙に違っているのは ディュアルキャプスタン構造キャプスタン軸摩耗が原因かもしれません。
X-10Rその8 以前の所有者(修理者)は最悪のエンジニアとは異なる壊し屋そのものです。メーカーアフターサービスにおいてサービスエンジニアが一番嫌な故障状態修理です。TEACのサービス部門では受け入れお断りの機器です。修理時間を換算すれば技術料はいくらになるかご想像ください。
人災は通常の故障では考えられない想定外の故障が発生します。
所有の測定機器を含め骨董品電子機器は国内各社製造のトランジスター・ICなどで発生頻度は異なりますがマイグレーション症状・ウィスカ症状での故障が目立ちます。ミリバル VT-106Sにおいても Q5 2SC372 がマイグレーション症状が発生し全数のFETを含めトランジスターのマイグレーション対策を実施しました。修復後自己校正作業を行い正常動作となっています。症状としては各レンジにおいてメーターがランタムにふらつく症状です。トランジスターなどの外観点検には倍率の高いルーペが活躍し必需品となっています。故障状態としてランダム雑音が発生する場合マイグレーション症状が多数発生しています。パルス的なランダム波形がオシロスコープを使えば観察できます。
完全ジャンク品による暇つぶし・ボケ防止作用のある 頭の体操を現在進めています。おかげさまでこのブログに追加記載内容が増加しブログ更新回数も多くなりました。このように骨董的な機器を修復するには人間の五感及び第六感も酷使しなければ修復することができません。目視による各部の点検も重要な要素です。
X-10Rその8 でテープカウンターが日焼けをして数字の白色が剥げ落ちてしまい カウンターの表示が欠損していましたが 今回カウンターを分解し回転ドラムに数字を印刷した白色の紙を両面テープで接着し再生しました。剥げ落ちた数字を塗料で記入できる技術は持ち合わせていません。PCで数字の文章を作成しプリンターでプリントアウトした用紙を回転ドラムに張り付けました。細かな時間のかかる試行錯誤しながら修復しました。白色のベースに黒色の数字となり 以前とは異なる白黒位相がひっくり返っています。数字を回転ドラムに張り付けるには精密な作業が伴います。テープカウンター機能が生き返りました。参考まで ! ! !
最悪のコンディション X-10Rその8 当初の故障状況を推察すると
その1 キャプスタンベルトの劣化・必須のメカニズム分解オーバーホール
その2 システムコントロール機能の故障、再生モードとならない・REW,F-FWD停止できず
その3 LINE入力雑音
その4 再生音が小さいもしくは音が出ない
その5 メカニズム部品の欠品、変形
その6 キャプスタンモーターが時々回転しない などが自然故障と一部修理者が作った故障症状です。
上記の症状であったと推察します。あとの故障個所は以前の所有者(修理者)人災・修理者が作った故障で被害が拡大していました。故障個所の特定ができず無闇に修理を行ったために多重故障が発生したものと思います。電子回路においても多くの故障は発生しません。今回の機器では複数個所半導体のマィグレーション症状により回路故障が発生していました。テスターだけでは良否の判断ができません。各部品の壊れ方を熟知していなければ修復はできません。一応上記の修復により録音・再生機能はほとんど問題がない程度まで修復完了しました。各特性・レベル調整し現在長時間エージング中です。通常破損・欠品個所がない場合は数多くの多重故障は発生しません。消耗部品は別としてX-10R系では特定箇所を重点に点検すれば現代でも修復可能と思います。
おかげさまで配線図には色鉛筆で回路を追っていますのでカラフルな色合いの回路図となってしまいました。曲者の2SC945については一目で判別できるようにトランジスター記号に色彩を付加しています。又要所には機能の解説と等価回路も手書きで記入しているためメモ書きが多数記入してあります。ブロック図的な記載内容です。ICの内部解析・シーケンス動作のタイムチャートなどもキャンパスノートに相当量手書き記載が発生しました。ここまで徹底しなければシステムコントロール回路デジタル部アナログ部の動作状況は把握できません。サービスマニュアルには記載されていない個所の解析です。
今回修復したデッキの中でX-10Rその5は一番FWD,REVでのテープ速度誤差の少ないデッキです。他の複数台デッキではテープスピーを測定をしますと 規格内でしたが速度偏差が発生していました。違いの原因は追究できていません。たぶんデュアルキャプスタン構造でキャプスタン軸を目視するとテープ走行箇所が摩耗しているように感じます。摩耗するとテープスピードは遅くなります。修復後現在も録音・再生テストを実施していますが大きな問題は発生していません。
総合調整について
X-10R その5では今回バイアス調整用トリマーコンデンサーが故障していましたので 基準レベルでの録音・再生調整を実施しました。録音・再生レベル調整は本文で記載しました信号により大きなずれもなく調整が完了しています。400Hz/-12dBmの基準信号においてVUメーター0dB信号を自己で選別したMaxell PM50-5LBをREFERENCE TAPE としてバイアス、録音レベル調整をしました。再生信号レベルは+0.1dB程度の誤差でFWD,REVともL,Rチャンネル誤差もなく極少しの調整で完了しています。このデッキがヘッド摩耗が一番少なく準BTS REFERENCE TAPE 19cm/s 0dB信号で調整しましたがほとんど誤差がありません。このテストテープの残留磁束密度は200nWb/mのテープであると解釈しました。250nWb/mのテストテープの場合+2.0dBほど高く出力されます。テストテープの種類により磁束密度の数値を確認しなければ正しい調整はできません。松下電器産業製QZZOW190のテストテープをこの値とすればつじつまが合います。不良であったバイアス調整用トリマーコンデンサーの調整は故障していなかったチャンネルと同じレベル信号になるように調整しました。
参考
録音時・各録音ヘッドのバイアス電圧を記載します。測定器はACミリボルトメーターを使っての値です。
FWD L-ch 19.0V R-ch 20.5V REV L-ch 16.0V R-ch 18.5V となりました。参考値です。点検程度であれば回路計(テスター)のACレンジでも確認は可能です。このようにヘッドの個体差によりばらつきが多いと思います。バイアス調整時の各ヘッド荒調整値として18Vから20V程度に調整すれば大まかな録音が可能と思います。
前回と同様に QUANEGY 456 を使ってBIAS 調整をしますとやはり感度が高く約+2dB 強 出力レベルが高くなりました。調整に使ったPM50-5LB のテープがTEACリファレンステープ(YTT-8013)に似通っていると複数台の同一機種デッキで調整し判明した道楽作業での個人的な解釈です。
今回故障修理に使用した回路計(通称テスター)です。製造後40年以上経過している国産JIS規格のアナログテスター YEW3201型であり時々動作確認として自己校正を実施しています。YEW Class 0.5 の精密級測定器と校正していますが メーカー出荷時のスペック内の誤差で動作しています。今回の回路診断において活躍しています。微妙な診断には欠かせない手足となっている汎用測定器です。デジタルテスターも複数台所有していますが活用はいまだにアナログテスターの出動率は高くなっています。各部の診断において効率を上げるために 写真のごとく数種類のアダプター類を工作しています。付属のテストリードは純正品ではありませんが 以前自衛隊放出品を複数台購入したテスターでありアナログ回路修復においては骨董品のテスターがメインとなっています。規格はDCで 100KΩ/V ACで 10KΩ/Vのテスターであり DC 12Vレンジであれば 回路計の動作抵抗は1.2MΩです。ハイ・インピーダンス回路修理において測定誤差は他の安価なテスターと比較しますと誤差が少ないテスターです。現在でも高級アナログ回路計として YEWより製造販売されており購入可能なテスターです。
半導体を使った電子機器においては30数年以上も経過しますと通常では考えられない故障が発生します。特に半導体では使用される原材料・製造年月により マイグレーション・ウィスカなど様々な不具合が発生します。又その異常を見抜くための眼力も必要となってきます。数多くの経験がないと迅速な判断もできません。これらを踏まえて道楽での修復作業です。
X-10R その5は冒頭に記記載しましたアンプ系およびメカニズムの総合調整を実施し 現在長時間エージング中です。水害品であり今後どのような故障が発生するかは不明です。初期性能をほぼ満足できる完成度です。
TEAC X-10R が増殖しました。多数のジャンク品を購入した結果ほとんどは付属品がありません。その代償としてTEAC10号メタルエンプティーリール(RE-1002)を購入目的でしたが その中に Maxell UD XL 35-180B が混じっていました。初代デッキはSONY製であったため初期のオープンリールテープは40年以上経過する生テープ SONY SLH が大半です。その後 Scotch 218,207 がほとんどです。オープンリールテープから使い勝手の良いカセットテープが主流となり当時購入していたカセットテープはほとんどがMaxell UDⅠ,UDⅡです。C-60までを多用しカーステレオ再生用音楽テープとして愛用していました。テープ事故も少なく音質も気に入っていました。当時カセット生テープでは高性能ハイポジションテープが多種類販売されていました。オープンリールテープでの高性能EEテープの存在を知ったのは最近です。Maxell UD XLⅡが該当します。カセットテープでも同じ型番は存在し使用しました。当時オープンリールテープはお蔵入り状態であり10号リールのテープではMaxell 製品は数多く購入していません。今回中古品の生テープでしたがテープの痛みが少なく録音テストをするとほとんど録音・再生レベル差が発生しません。これであればリファレンステープとして使用ができると判断しました。さすが国内製生テープで生産終了時期が国内では遅かったメーカーです。現在でも品質の劣化が多くありません。Maxell TAPEは優秀です。家庭用VTRでも使用していた生テープはMaxell HGX,GXタイプがほとんどです。他社のVTRテープと比べるとドロップアウトも少なくテープ事故が少なかったと思います。
今回骨董品オープンリールデッキを修復して判明したことですが 初期に購入した生テープでは製造時期の違いもあると思いますが 経年劣化が激しく現在ではまともに動作する生テープはほとんどありません。生テープ製造メーカーとしては有名でしたが S社の150番タイプ生テープでは経年劣化が激しく現在では真面に使用できないと判断しました。長期間保管状態による劣化度に違いがあると思いますが T社、M社の生テープでは極端なレベル変動、テープパス汚れなど劣化症状は数多く見受けられません。劣化症状としては テープ磁性体の剥離・バックコート面の剥離、テープ間接着状態などの症状です。ヘッド、ピンチローラーなどテープ走行系がすぐに汚れてしまう ! テープ走行中にテープ鳴きが発生する ! レベル変動 ! 巻き戻し、早送りが途中で止まってしまう ! など150番のテープでは最悪な劣化症状です。デジタル変換作業において10分間ですら まともに動作しないテープも存在します。各社所有していたテープは長年にわたる保管状態が同じであり現在では品質が違っています。現時点での個人的な見解です。S社の中でも 放送局などプロ仕様の業務用100番テープでは極端な致命傷的な劣化は数多くありません。しかしレベル変動は確認できました。当時F社のテープと外国製テープBASF,AMPEX,AGFAなどが販売されていましたが購入していませんので比較ができません。
発売されていた当時の民生用機器では回転部分にベアリングが使用されていません。軸受けはメタル構造です。業務用機器であればモーター、フライホイル軸受け、ガイドローラーなどは常時回転しています。テープが走行する場所ではベアリングが多用されます。民生用ではテープガイドローラーではなくガイド金具仕様です。このような仕様のため一部のテープでテープ鳴きがよく発生します。今回キャプスタンモーターを分解して判明しましたが軸受けはオイルレス・メタル構造となっていました。販売価格なども考慮すると仕方がないとは思いますがやはり基本的設計は業務用機と比較するとコストダウンの設計となっていました。業務用機器のモータでは巻線が焼損などで故障した場合 巻き直しをする場合もあります。ベアリングも通常汎用ベアリングが使用されており 数百円で部品として購入できます。交換時にはオープン型ベアリングであっても****ZZのような密閉型ベアリングをよく使用しました。道楽での真空管アンプの出力トランス故障でも巻き直して修復する場合があります。過去の遺物を修復するには再生部品まで作成する技術力・気力と時間・費用が必要となります。深追いの道楽は ドツボにはまります。ご注意を! ! !
最後まで流し読みいただきありがとうございます。間違った解釈が多々記載されていると思います。本人では判別がつきません。多少とも記載した忘備録が道楽を続けるための参考となれば幸いです。
実働するデッキと真空管アンプが多数修復完了し 増殖した結果 足の踏み場がありません。
回路修理においては各回路動作の理解がないと修復はできません。各調整項目での調整内容が理解できる方は数少ないと思いますが測定機器を使っての調整作業は経験がないと非常に厄介な事柄です。X-10Rでは英文によるマニュアルの調整項目順に小生の解釈を今回記載しました。一般的な修理では不良箇所だけの修復と思いますが 極力工場出荷時のスペックを得るには総合調整は時間はかかりますが必要な事柄です。又長時間のエージングも時には必要です。過去の経験と記憶をもとに自己満足である道楽・趣味の一環として収集した測定機器・手持部品などを使い 調整・工作加工・修復作業を楽しんでいます。
X-10R シリーズは多数台修復してきましたが その結果致命傷的なメカニズム構造が判明しました。それはデュアルキャプスタン構造です。テープ走行安定策として開発されましたが ヘッド面テープ圧接構造が従来機種と異なり バックテンションによる圧接ではありません。左右キャプスタン軸の微妙な走行スピード差によるヘッド面テープ圧接構造です。その弊害としてキャプスタン軸を見れば判明します。従来方式に比較してキャプスタン軸のテープ走行面の摩耗が発生しています。片側のキャプスタン軸では常時微妙なテープのスリップが発生しています。これがテープ安定走行、テープスピードを狂わしている要因です。又ヘッド圧接圧力もテープスピード差の変化によりテープ圧接圧力変化するのが判明しました。ヘッド面テープ走行不安定ともなっています。Aシリーズのデッキではここまでキャプスタン軸の摩耗は発生していません。長期間安定走行するメカニズムとは思えません。利便性を取るか、長期間安定性を取るか これは個人的判断にゆだねます。100番のテープと150番のテープではテープ厚さも異なり微妙なスリップ度合いも変わります。特に使用頻度の高いデッキで発生していました。フライホイル左・右を交換すれば問題は解決しますが補修部品の入手ができません。又ヘッド摩耗も相当進行しているデッキと思います。
このあたりが Xシリーズ修復作業の潮時と思います。
この結果から REV REC モードはありませんが A-6300MKⅡ4Tr-2Ch プレイのみREVモード可搭載機が高値で取引されている理由と個人的な判断です。
by musenan sennin
O-W190 は3KHz 19cm/s のテストテープです。他のスピードでは O-W380 38.10cm/s と O-W095 9.5cm/s のテストテープも存在します。TEAC YTT-2003 と同等品でありフルトラック 0dB で記録されています。BTS規格標準テープと同様にテープの最初にはアナウンサーによるテープの仕様が説明されています。BTS規格と同等と判断しました。参考記載
他にテストテープとして周波数特性・角度規正信号用として Technics ブランド・テープデッキ調整用テストテープとして存在しますがこれもまた一般市場では簡単に入手できません。長期保管品と推察できますが 記録されている信号レベルは狂っていると判断します。しかし記録された3KHzは狂っていないと思います。製造後長期間経過したテストテープでは 400Hz 0dB及び周波数特性用-10dBの各周波数信号は再生される信号レベルに経年劣化が認められますが テープの伸縮がない限り通常テープに記録された信号の周波数は変化しません。
Technicsブランドテストテープの種類
O-F380 (38cm/s用)400Hz 0dB(200nWb/m)角度規正16kHz NAB時定数 3180μsec×50μsec スポット信号 -10dB 400Hzをリファレンスとして20KHz~31.5Hzまでの14種類 各15sec
O-F190 (19cm/s用)400Hz 0dB(200nWb/m) 角度規正16kHz NAB時定数 3180μsec×50μsec スポット信号 -10dB 400Hzをリファレンスとして16KHz~31.5Hzまでの13種類 各15sec
O-F095 (9.5cm/s用)400Hz 0dB(200nWb/m) 角度規正10kHz NAB時定数 3180μsec×90μsec スポット信号 -10dB 400Hzをリファレンスとして12.50KHz~31.5Hzまでの12種類 各15sec
などのテストテープが存在します。このように当時テープデッキ製造会社では必ず調整用テストテープが存在します。ほとんどが NAB(全米放送事業者協会 The National Association of Broadcasters) 特性で製作されているため規格が同じでないと各社デッキ間の互換性(コンパチビリティー)が取れません。道楽調整作業では各社が製造されているテストテープがあればデッキの調整作業ができます。このテープによりワウ・フラメーターでの調整が可能となりました。又副標準テープの校正作業もできます。周波数カウンターを使えば 38cm/sec,9.5cm/sec の正確なテープスピードもテストテープを使って調整は可能です。NABイコライザー特性では38cm/secと19cm/sec のイコライザー特性は高域時定数が50μsecであり 同じイコライザー特性であることが判明します。EEポジションで使用する EEテープについてはイコライザーはNAB特性ではなく高域時定数が違っています。
自己で作成したテープスピード測定用タイミング信号付きテープを作成に要した苦労と時間は何であったのでしょうか。しかしこの苦労もテストテープが入手できない方への参考となれば幸いです。
ワウフラッター計を使用すればカセットテープにおいても3KHzテストテープMTT-111Nを使用すればオープンリールテープと同様にテープスピード調整作業は簡単になります。Aシリーズなど旧機種のACモーター駆動であればテープスピードの調整はできません。電源周波数に同期して回転数が決定されるからです。テープスピードの確認のみの作業となります。一部製造工場では直径の異なるモータープーリーの交換微調整でテープスピードが規格内となるように作業はしていました。
正規のテストテープを使って自己で作成した副標準テープスピード調整用テープとの誤差が確認できました。この作業が自己校正(キャリブレーション)作業です。周波数カウンターで精密測定しましたら 自己作成テープでは 3000Hz に対し O-W190 のテープでは 3006.646Hz を測定しました。この数値から誤差は 6.646Hz/3000 を計算すると 0.0022 となり パーセントで表示しますと -0.22% であることが判明しました。1%以内であり作成した副標準テープスピード調整用テープは精度が確保できていると判断できます。X-10R その4では 自己作成のテープスピード調整用副標準テープでは FWD +0.44% REV +0.21%に調整されていることが判明しました。副標準テープとテストテープとの誤差は約-0.2%でしたのでつじつまが合います。調整後のテープデッキはスペック内の規格となっています。FWD REV での誤差も 0.5%以内です。自作副標準テープでも活用ができることが証明されました。副標準テープを使った調整では誤差を考慮して調整すれば正規のテストテープとほぼ同等の誤差の少ない調整が可能です。
以前自己で修復し精密測定したデッキX-10Rで誤差を吸収した3000Hzの副標準テープを作成しています。これを利用すればTEAC のテストテープと同じようなテープスピード測定及び調整ができます。念のためダブルチェック方法として調整済みのデッキを 1905mmごとにマークしたテープを再生し PCを使い デジオンのソフトで精密測定を実施して誤差を把握しています。又テープスピード用テストテープが入手できたため校正作業もできました。テストテープなどでは通常試験成績書(校正証明書)には誤差を数値記入されたものが添付されます。BTS規格テストテープではシリアル番号別に検査日が記入された校正表(試験成績表)が添付されています。
現在入手可能なテストテープですが MRL にリストアップされている 400Hz/0dB 200nWb/m を含む新品の校正表がついたテストテープを購入しなければならないのでしょうか。国内では注意深く探せば MRL 1KHz 250nWb/m のTEST TAPE は入手できるようです。修理業者とは違い道楽ですので新規購入は懐具合と相談して考えさせていただきます。
まとめ
一応英文のサービスマニュアルに従って記載したつもりです。参考程度とご理解ください。見苦しいとは思いますが作業内容をデジカメで撮影しました。参考となる画像も掲載しました。文章だけでは技術的な内容はうまく表現できません。詳細まで記載できていないと思います。小生のX-10R を含め 5台のX-10R が動き出しました。道楽部屋は足の踏み場がなくなりつつあります。この辺で X-10R は おひらき とさせていただきます。道楽としては安価なジャンク品を物色し 時間つぶしとしています。ジャンク品 一部破損・紛失している X-7RMKⅡ を手を付けてしまいました。ほとんど X-10R とリールサイズを除くと大きな違いがありませんがEEテープ特性などを実験をするためです。EEポジション生テープは手持ちがなく今後検証する予定です。
メーカー修理・実績のある専門修理業者は別として 骨董品のオープンリールテープデッキなどを修理されている通称町の電気屋さんでは修理・調整作業で使用している測定機類は定期的に費用の発生する校正作業をしているのでしょうか。疑問として残っています。自己で測定機類の校正・修理・調整できる方はどのくらいおられるでしょうか。使用されるユーザーの要求度で仕上がり精度は異なります。感覚的な完成度ではなく 時には数値による測定データーも必要であると考えます。道楽作業であれば自己満足の領域なのですが なるべくオリジナルに近い仕上がり精度となるように試行錯誤をしながら楽しんでいます。今回テープスピード調整で使用したワウ・フラッターメーター LFM-39A が故障状態です。内部を点検すると3KHzの信号をパルス波に変換するコンパレーターIC LM710CN が壊れており 国内の半導体販売店を探しましたが見つかりません。仕方がないので NJN4558DD を使ったコンパレーター回路に変更した結果正常に動作するようになり自己校正をしました。時には測定機類も修理・改造・調整しなければなりません。この測定器ではテープスピードの調整と同時にワウ・フラッターの数値も計測できます。
磁気テープとリーダーテープの接続 (磁気テープ間の接続)
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| Scotchメンディングテープと昔のスプライシングテープ |
このオープンリールテープデッキが主流であった時代では簡単にアクセサリー類なども入手できましたが 現在では入手が困難となっています。通信販売などではスフライシングテープは昔販売されていたテープの幅が異なっていました。又販売していても高額となりますので現在でも入手できるものを探しました。
左の画像の右側が40年以上前のスフライシングテープであり現在では接着面の劣化により使用することができません。正規のスフライシングテープは18mm幅であり 通信販売などではスフライシングブロックを使って編集接続をするためテープ幅が1/4インチ・1/2インチ幅のテープしか販売されていません。昔は放送局でさえスプライシングブロックを使わずはさみを使い手で斜め切りで接続していました。そのためスプライシングテープは接続する磁気テープなどに対して十字となるように接着していましたのでテープ幅は18mmが必要なわけです。接着後はみ出たスプライシングテープをはさみでトリミングをして接続していました。
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| テープ接続に必要な準備物 |
テープの接続・編集
今回汎用品を使った磁気テープ間の接続およびリーダーテープの接続方法です。
準備物としては上図のごとく汎用品を使って接続します。工具としては はさみ・ピンセット・文鎮2個(アルミブロック)・紙・メンディングテープなどを準備します。
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| 接続するテープの切断 |
今回の接続は磁気テープとリーダーテープの接続例です。
テープを重ねて切断接続箇所をはさみを使って切断します。切断面は斜め切断としています。
片手で正確にテープを重ね合わせた状態ではさみを使い切断するにはある程度の訓練が必要と思います。
接続するテープを紙の上に切断面を突合せます。両サイドの文鎮はアルミブロックで下部底面にはゴムシートを接着してあります。両手を使って作業しますのでテープがずれないように文鎮で固定します。メンディングテープを切り出しピンセットを使って接続面に貼り付けます。その時に接続するテープと紙を同時接着します。接着面を爪などを使って圧接をします。
接続した個所のメンディングテープの余剰部分をはさみを使って切断します。その場合下敷きであった紙も切断します。テープ幅が接着面においても同じ幅に切断します。ただ切断するときには心持テープ幅が小さくなるようにするのが得策です。
接続が完了しました
このようにスプライジングブロックを使用しなくともテープ間の接続は可能です。40数年前でも手作業でテープの接続作業はしていましたが まさかこの時代にテープ接続作業が必要になるとは思いませんでした。
注意 磁気テープ編集に使用するはさみは必ず消磁してから使用してください。帯磁したはさみを使うと磁気テープにノイズが記録されます。
代用ホールドダウンテープの作成
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| テープ終端の仮止め |
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| 工作した代用ホールドダウンテープ |
工作としては50mm幅の養生テープを準備します。プラスチックフィルムなどのシートに養生テープを張り付け後カッターナイフで約6mm幅に切断して使用します。接着剤部の長さは20~30mm程が適当と思いました。養生テープ幅が50mmありますので 10mmを折り返して接着剤部を30mmとするとはがす場合の取っ手となり使い勝手がよくなります。プラスチックフィルムが入手できない場合は養生テープを紙などに接着してフイルムの代用として使用することができます。
接着力が強い場合は接着剤面を手でこすり粘着力を弱くして使用してください。数回は繰り返して使用することが゛できました。
以上2点が貧乏人によるアクセサリー類の工作です。
今回修復しました骨董的なオーディオ機器ですが 現代のデジタル機器と異なり機械音痴の方はご使用は控えてください。なぜなら電気回路と回転機構を有する精密機械が合体した機器です。特に回転部のメンテナンスをしなければ正常な機能を維持することができません。この条件を理解したうえで骨董的なオープンリールデッキでのアナログ音楽鑑賞ができるようになります。カセットデッキのように簡単に操作できる機器ではありません。又それが面白いのですが。
骨董的なオープンリールデッキの保守
オープンリールデッキを現代でも活用するにはある程度の軽度のメンテナンス作業が発生します。新品の生テープだけを使用する場合は大きな問題となりませんが 新品の生テープはほとんど入手できません。となると製造後1/4世紀以前に製造されたテープを使用する場合テープの劣化に伴いテープ走行系が汚れやすくなっています。当初に比較してテープ走行系のメンテナンス回数を増やさなければ正規の特性が得られず テープ走行も不安定となってしまいます。特にピンチローラー表面が黒光りするようではテープ走行が安定しません。クリーニングキットなど取説で記載されている綿棒などでは完全に汚れを除去できません。機械ものですので走行系の掃除・注油を怠っては十分な機能が得られません。一番確実な方法はピンチローラーを取り外しアルコールを含浸したウエスで清掃するのがよいと思います。その場合シャフトとピンチローラー軸受けには注油が必要となります。又組み立て時にはポリスライドワッシャーを紛失しないようにしてください。現代のメンテナンスフリーに近い音響機器と異なり 必ずオープンリールデッキを扱うには使用者がメンテナンスを実施しなければなりません。
理解しにくい文章を最後まで流し読みいただきありがとうございました。過去の経験から多少ともこの自己責任での道楽作業内容をご理解いただければ幸いです。修復作業内容としてここまで単独で内部を触られる方は数少ないと思います。道楽では思ったより費用が発生します。パチンコ・競馬などギャンブルで負けるのと比べれば些細な金額です。ボケ防止を兼ねて この道を楽しみましょう。
通常 修復費用さえ覚悟すれば 内部を分解せずにメーカーサービス依頼がベストです。
以前はTEACサービス部門で補修部品を購入できたのですが 最近部品発注をしましたら 部品の供給ができません との返答でした。今後骨董的なデッキ修復に支障が発生します。汎用的な電子部品であれば一般市場でも入手ができるのですが TEAC専用部品の調達に苦慮します。ただ機器を直接TEACに修理依頼した場合 内部を触っていない機器であれば Xシリーズでは修復は可能のようです。製造後30年以上経過しており PL法がらみなどで 補修部品だけの販売は避けているようです。困ったことです。道楽を続けるのに悩んでいます。
メーカーサービスによるオーバーホール料金と比較して 金持ちオーディオマニアの必需品 オルトフォンMCカートリッジSPU新規購入よりは安価であると思います。PCを操作できない変コツ爺さんたちはハイレゾの音響装置も扱えず いまだにスクラッチノイズ・ランブルノイズの発生する骨董品LPレコード・SPレコード再生に多額のお金を投資・投入しています。現在オープンリールデッキは製造販売されていません。しかしレコード盤再生装置はいまだに50万円を超える装置も販売されています。音がよいと美恵ばかりであり 自分の耳の特性を一度測定してみればどうでしょうか。10KHzの音が聞こえますか? 年を重ねれば耳で聞こえる周波数は低くなります。自然の現象です。
小生のような貧乏人ではSPUは購入したくとも購入できません。ご判断ください。大切な録音テープは早々にデジタル変換をしないとデッキもテープも劣化が進みます。人間も劣化が進みます。寿命もあります。あの世までもっていくことができません。お陀仏となれば大切な収集物も廃棄費用が発生する粗大ごみ・産業廃棄物ともなりますので。各自ご判断いただければ結構です。道楽ですから。
無銭庵 仙人の独り言
記載したように測定の基準が不明の場合小生は試行錯誤しながら基準値を導き出しています。メーカーでは考えられないような方法で現実には調整ができます。完成度は不明ですが。測定機器も自己校正を実施したものを使用しています。測定機類は道楽作業であるためメーカー校正は実施していません。 大手企業の工場・研究所などでは ISO規定の測定機器は定期的に高額なメーカー校正を実施しています。又 校正証明書も保管しています。品質管理部では定期的に社内校正をしています。小さな個人経営の修理屋さんでは 疑問があります。道楽作業ですが測定機器類は定期的に自己校正は実施しています。校正作業の基準となる精密測定機器類も数多く収集しています。オークションなどで流通している極上完動品と記載されていても品質はほとんどの場合良くありません。メーカー修理・専門業者などでの修理・調整では高額な費用と時間が多々発生します。道楽が興じて測定器群を収集され 技術力があり採算どがえしで 修理が趣味のような方も数少ないですがおられるようです。通常なかなか業者の良し・悪しの判別がつきません。完成度の証明には人間の感覚だけではなく 測定機器によるデーターも時には必要です。標準(テスト)テープも使用期限があります。テープの定期的な校正もしくは新品の校正証明書のついたテープを購入しているのでしょうか? ユーザーの完成度要求具合で機器修理・調整仕上がりに大きな差が発生します。妥協する程度で修復費用もまた違ってきます。特に各ヘッド摩耗状況での妥協する度合です。X-10R その4 ではヘッド摩耗頻度は一番少なく 測定治具も試行錯誤しながら工作したものを使って修復には時間短縮となっています。作業も慣れたこともあり のべ2~3日間程で ほぼ修復・調整が完成できるようになりました。作業途中で10号リールの録音されたテープをエージングを兼ねてオートリバスモードで再生しました。長時間音楽を再生して作業をさぼっています。作業途中でデジカメで撮影もしながらです。疲れれば さぼるの繰り返しでの修復です。若いころと違い視力も気力も思考力も悪くなっています。無駄な時間も結構あります。ベテランの優秀なメーカーサービスマンであっても エージングを含めると まる一日以上かかる作業であると思います。ユーザの完成度及び要求程度により作業内容も違ってきます。このような修理作業ではデッキの状態により作業内容が大きく変わってきます。分業作業はできません。家内制手工業のような作業です。これらの作業内容・時間から修理費用が算出できませんでしょうか? 必然的に企業の管理職あたりでは簡単に積算すれば計算できると思います。営利を目的としない道楽での作業・頭の体操 修復作業も楽しまなければなりません。
凡人のぼやきでした。
最近入手しました Quantegy 456 未開封新品を入手しました。テープはポリ袋で密閉されており外気から遮断された状態で入手しました。製造ロットから2002年1月15日製造品と判明しました。製造後10年以上経過していますが非常に良いコンディションです。Quantegy は現在製造を終了してから数年以上になります。旧 Ampex の血を引いたアメリカの会社です。入手したくとも新品の生テープがありません。小生保有している生テープは新しくとも30年以上経過しています。経年劣化も確認できています。今回録音系も修復しましたので どれだけの音質・クオリティーで録音・再生できるか実験したかったため購入しました。評判の良いテープでしたので 好みの音楽を録音・再生しますと 小生好みの女性ボーカルが透きとおって再生されました。フルオーケストラのクラッシック音楽も録音テストをしましたがダイナミックレンジも広くオーバーレベル録音をしても他のテープと比較すると歪が少ないと感じました。当時は Ampex,BASF などの輸入品生テープは購入していません。今後新品のテープは入手困難と思います。 X-10R 修復作業のため道楽に使える貯蓄が目減りしています。底が見えてきました。いつまでこの道楽が続くやら ! ! ! ガラクタが増殖しています。 ドツボにははまりたくはありません。
現在では新品の生テープは通販で購入可能です。販売価格は多少異なりますが高額な費用の出費できる方であれば メタルリール仕様の100番、150番タイプの生テープとしてRMG (旧BASF系)の生テープが入手可能です。QUANTEGY (旧AMPEX) 製は製造中止となっており新品の在庫品はなかなか見つかりません。国産品は同じく新品は入手難です。メタルリールは傷んでいませんので RMGパンケーキ型の生テープを購入し 古く傷んだ生テープと巻き替えて使用するのがコスト的にベストです。ただメタル空リールを分解して巻き替え作業が発生しますが パンケーキ型テープのハブに廃棄するテープを巻き変えればかさばる廃棄物とはならず簡単にプラスチックに分類できる廃棄物で処理ができます。現在では中古テープ購入よりは安心してアナログ録音が楽しめる方法と思います。当時の生テープ購入価格に比較して約2~3倍前後の費用で購入ができます。参考まで ! ! !
新品の生テープではテープパスに汚れが付きにくく テープのドロップアウトも少なく 精神的にも安心して動作することができます。ヘッドなどを清掃する回数が少なくてすみます。所有している3~40年前のテープでは使用後テープパスメンテをしなければなりません。早々にデジタル化する理由です。
最近2tr38が見直されています。このデジタル時代にアナログ録音ミュージックテープが中国で製造されています。QUANTEGY 499 全世界から在庫品生テープを購入して限定製造されています。販売価格は各ジャンルにわたり \29,400- で販売されています。STUDER A80 を使ってのマスター機76.2cm/sからのアナログ・ダイレクト録音されたミュージックテープです。オープンリールテープによるアナログ録音が一部のマニアで見直されているようです。小生もその一人かもしれません。
今回の修復作業を通じて自分なりの解釈をしました。参考としてTEAC 4Tr/2ch A,X シリーズ各機種のサービスマニュアルも参照しましたが どの機種においても調整する数値に大きな違いがありません。又測定方法・テストテープ種にも大きな違いがありません。一貫した調整方法です。録音・再生ヘッドもほとんどは共通部品と思います。機能部品はメーカーサービスにはある程度補修部品として再生産品を在庫しています。入手は可能です。今回キャプスタンベルトは入手しました。現在新品のデッキは製造されていません。TEACメーカーサービス(MTS)ではデッキ製造メーカーTEACと誇りをもって過去に製造されたデッキをレストア後完動品として受注販売もされています。国内大手家電メーカー製ではありえないアフターサービスです。通常10年もすれば機器は粗大ごみ扱いとなります。当時有名なメーカーでさえ時代の流れでしょうか。消滅しており部品においても入手難です。当時の容姿・機能を再現するためには時間・努力と費用が発生します。
今回複数台修復の結果から 邪道ですが 再生 0dB(VUメーター値)では LINE OUT 出力電圧値は -5dBm であり 録音される信号レベルが 0dB(VUメーター値)を録音した場合 再生レベルが 0dB(VUメーター値)となるように各増幅回路の利得を調整しています。今回このX-10Rでは dbx 接続端子があり dbx DECODER SEND で P・Bレベルが -8dBm でなければ LINE出力端子の信号レベルは -5dBmになりません。この dbx DECODER RCV 端子にオーディオジェネレーターからの 400Hz/-8dBm の信号を入力すれば 疑似の 0dB/P・B信号として LINE amp の調整及び再生UVメーター感度調整は YTT-1003 を使用しなくても調整が可能であると判断しました。ただ基準となる再生系統の利得調整(pb gain)はテストテープ(400Hz 0dB 200nwb/m)のレベルセット信号で調整しなければなりません。又録音系もこの数字になるように録音アンプの調整をすればよいことになります。その時のLINE出力端子の信号レベルは -5dBm(LINE, OUTPUT VRはCAL位置) でなければつじつまが合いません。録音に使用する生テープにより録音特性・感度が異なります。ダイナミックレンジを大きくとるため 録音時ある程度はオーバーレベル録音となります。録音用生テープには種類により個体差があります。録音バイアスは細かく調整できませんが 400Hzまたは1000Hz の信号で歪率を見極めながら最適録音レベルを導き出すのがベストであると判断しました。
録音アンプのイコライザー時定数は抵抗(R)とコイル(L,インダクタンス・xL)で調整しています。コイルは経年変化が少なくほとんどの場合録音系の周波数特性(イコライザー特性)は調整することは数少ないと思います。調整箇所はコイルのダストコアです。
再生イコライザー(EQ)については抵抗(R)とコンデンサー(C,キャパシタンス・xC)で調整します。調整箇所はSVR(半固定VR)です。
ちなみに録音バイアス調整はこのX-10Rではトリマーコンデンサーのキャパシタンス(xC)を可変して調整します。コンデンサー容量変化によりバイアス電圧を可変することができます。
公式としては xL=ωL xC=1/ωC ω=2πf で計算することができます。
X-10R 録音・再生アンプ回路の簡易点検方法
録音アンプ系
LINE IN入力端子にオーディオジェネレーターからの信号 400Hz/-12dBm を 端子各チャンネルに入力します。モニタースイッチはSOURCEにします。LINE VRを調整して VUメーターが 0dB の位置に調整します。つまみの目盛は6.5付近です。OUTPUT VR を可変してもVUメーターの指針は変化しません。OUTPUT VR と VUメーターは非連動です。OUTPUT VR CALの位置での出力端子で400Hz/-5dBm となるはずです。又録音アンプへの信号としては dbx 接続端子 TO ENCORDER SEND の端子では 400Hz/-8dBm の信号となっているはずです。
再生アンプ系
dbx 接続端子 TO DECODER RCV 端子に 400Hz/-8dBm の信号を各チャンネルに入力します。モニタースイッチは TAPE にします。OUTPUT VR CALの位置にすると VUメーター指針は 0dB の位置になっているはずです。ただ再生VUメーターは OUTPUT VR と連動しているため CALの位置が測定点となります。その時のLINE出力端子の電圧は 400Hz/-5dBm となっているはずです。
今回の調整では上記のレベルになるように調整しています。測定器の誤差、デッキの誤差などを考えると±2dB以内であればアンプ基板は正常に動作していると判断できます。このような結果であれば各調整するSVRは微調整で調整が完了できると判断できます。これらから測定機類は校正したものを使用しないと誤差が大きくなり良い結果とはなりません。
X-10R 導入当時には理解できていなかった事柄です。30数年経過して骨董品測定器類を収集し 修復・実験・調整した結果今回詳細が判明しました。時はすでに遅く 生テープの生産はほとんどのメーカーで終了しています。骨董品機器を現代でも実働させるには 体力・時間・技術力・費用が必要となり特に費用面で悩んでいます。
30年ほど前であれば簡単にメーカーからのサービスマニュアルなどは入手できません。又半導体についても製造メーカーからの規格表などは簡単に入手できませんでした。現在であればインターネットという媒体により全世界からの情報が収集できる時代です。おかげさまでメーカーに頼らず消耗品のベルトは別として自力でX-10Rが修復できました。
追記 (難物修理)
X-10Rその5 その8 悪戦苦闘しましたデッキでの修復内容を追記します。
X-10Rその5(塵・部品取り用・未通電) 苦闘の結果一番程度が悪かったデッキが動き出しました。
X-10Rその5はたぶん粗大ごみとして屋外に長期間垂直状態で放置状態であったと思います。雨水による水害品ですのでメーカー修理はお断りのデッキです。後部キャビネットにも多数擦り傷があります。
雨水が機器内に侵入しており 各所に錆が発生しています。部品取り用として購入しましたが どこまでのレベルまで修復できるか ? 悪戦苦闘した結果の忘備録です。以前の所有者では使用頻度が少なく 多数入手したデッキの中ではヘッド摩耗の少ないデッキです。泥水ではなくきれいな雨水の水害品であったためこれらを踏まえて修復・蘇生を決意しました。
到着時輸送破損事故はなかったのですが 鉄さびが多数粉状になっているのが判明しました。雨水でキャビネットを取り付けているねじが錆びつき 分解ができません。電気ドリルでねじを切削する方法しかありません。2か所のねじを切削除去となりました。切削後CRCをねじ部にスプレーをしてから何とか錆びたねじはプライヤーの工具を使って取り外しができました。除去後新しくタップでねじ山の再生です。
このように内部が鉄さびで相当痛んでいる状態からの修復です。内部のシャーシー金具を分解して錆を除去しなければなりません。手間のかかる作業です。電子基板は大きなダメージは目視では確認できませんが水害品のプリント基板は過去の経験から修復が困難な場合が多いと思います。
メカニズムについてはこの本文で記載しているようにキャプスタンベルトが溶解し分解修理作業が大変です。
内部フレーム・シャーシーが錆が発生しているため錆止めをするために全体を分解しました。ここで大きな問題が発生しました。テープスピードピッチコントロールつまみのねじが錆びて分解できません。CRCをスプレーしましたが六角レンチを回転させるとねじ馬鹿となり分解できません。仕方がないのでこの状態で他の部分の分解となりました。VRつまみ3個は何とかねじが緩みました。
各ユニット単位で分解するためリード線のはんだ付け箇所の分離はVUメーター・FWD,REVソレノイドコイルの配線を外しました。基板間の配線はコネクター接続となっているため簡単に分解ができます。
分解後シャーシーなどはワイヤーブラシ・耐水ペーパーなどを使って錆を落とした後 亜鉛ローバルを塗装して錆止めとしました。亜鉛ローバルは高額な塗料ですが 亜鉛どぶ付鋼材に現場加工などをした場合塗布する塗料ですので仕上がりも電気メッキと違和感が少なくなります。底板のアンプ基板用シールド板のさび落とし及び塗装作業。
バイアス発振ユニットの分解点検についてはバイアス回路周辺が水害となっていたためユニットを点検しましたがユニットは樹脂で封止してあり発振回路には影響がないのを確認しました。
全体の清掃後通電試験をかねて400Hz-10dBの信号を入力テストをすると録音系は信号動作しているのを確認できました。再生系の点検においてdbx端子に-8dBmを入力しましたが信号がLINE OUT端子に出力しません。再生モードで音声が出力しません。キャプスタンモーターの回転が通常より早く回転しているようですが音が出ないためテープスピードは不明の状態で点検作業を進めました。FWDは動作するがREVが回転しない。STOPモードでリールモーターが回転しており停止しないなどの症状が確認できました。水害品ですので修復不能と思われましたが 時間をかけて少しづつ問題を解決して行く作業となりました。今回はまたいやなシステムコントロール回路から手を付けなければなりません。今回は英文のサービスマニュアルの回路図を入手しましたので以前のような時間はかかりませんが複数個所の故障です。水害品でありあらゆる角度から細かく点検作業をしないと診断できません。
洪水・地震・落雷など天災による家電製品・電子機器など被害品は修復はごく一部の機器しか修復はできません。一時的に正常であっても 泥水などが基板・メカニズム細部まで侵入しており 泥の成分により長時間経つと金属腐食及び絶縁不良の症状が発生します。落雷などでは壊れかけの部位などがあり再故障のリスクがあります。洪水などの水害被災機器は修復作業経験により 被災後早期修復をしないと修復は困難であると思います。電子基板はほとんど修復できません。新品基板との交換が必要です。各電気メーカではサービス部門で水害マニュアルが作成され修復後の機器に水害品であることのステッカーを添付しています。水害品は最初に真水で各部を洗浄し大型乾燥機で乾燥させた後修復作業をします。モーター類・電子基板などはほとんど部品交換となります。ほぼ水害機器は買い替え推奨となります。水没したエアコン室外機ではインバーター基板・ファンモーター・リアクターの交換でほぼ機能が回復します。冷媒循環回路及びコンプレッサーは水没してもほとんど故障はしていません。ただ電気回路部品は点検交換が必要です。水害品のPCでは再使用できたのはCPUぐらいです。HDD・メモリーカードなどはほとんど廃棄となりました。PCなどの水害品は内部のデーターを含めほぼ修復不可能です。
現代の自動車などは ほぼコンピューター(電子回路部品)制御されており 信頼性・安全性・快適性が重要視される車両は 泥水などに水没車両では大半が廃車となっています。車両保険があっても天災・水害での保証がない保険の場合高額出費を覚悟しなければなりません。実家も床上浸水被害で大規模半壊の罹災証明を市役所より発行されましたが公費解体ではなく ほぼ公費で修復はできました。自己生活領域内で大規模水害・大震災も経験しています。
① 停止状態でもテイクアップリール回転止まらず
システムコントロール基板リールモーター制御回路 Q71 2SC945 リーク確認。冒頭で説明しましたウィスカ症状によるトランジスターの不良であり交換。ウィスカと判明したのはミューティングがかかる故障時トランジスター外観を細かく点検時です。
② REV再生時キャプスタンモーターが回転しない
システムコントロール回路キャプスタンモーター供給電圧位相切り替え回路の故障です。システムコントロールの制御ICからは制御信号が動作しているが逆転電圧をモーターに印加できない。時代が進むとその後の回路では多用された トランジスター・ICを使った電子スイッチなどと違い2個のリレー(K31,K32)で切り替えている回路です。同じくリレードライブトランジスター Q35,Q36 2SC945 の交換。
システムコントロールICの解析
システムコントロールについてはAシリーズとは異なり電子制御で構成されています。本機に使用されているシステムコントロール回路は汎用IC AN6251 が使われており 当時販売主流であったフェザータッチ・カセットデッキ用として開発された汎用システムコントロールICです。その後の機種に採用された4bitマイコン搭載機とは異なり ゲート回路とフリップ・フロップ回路で構成された汎用システムコントロール回路です。このICの動作シーケンスが理解できないと修復は困難となります。サービスマニュアルには動作シーケンスが明記されていません。汎用ICだけではこのX-10Rでは動作させることができず ICの出力ポートからNAND,NOR,OPampを使った論理・遅延回路が構成されていました。各メカニズム・アンプ回路の制御をしています。IC論理は負論理であり L(ロー)レベルで出力されます。コントロールされた信号を PNP,NPN小電力トランジスターでドライブしています。各回路を制御する構造であり 多数使用されている 2SC945 が該当します。ウィスカ症状で悩んだトランジスターです。今回このシーケンスを理解・解読するのに多くの時間を費やしました。
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| キャプスタンモーターの分解 X-10R その8 |
今回モーターが故障した原因はキャプスタンモーター制御回路が制御不能となり過大電流のため回転子内部温度上昇し半田が遠心力により吹き飛んだと判断しました。回転子巻線は巻線抵抗値および巻線絶縁被膜の変色を点検しましたが異常は認められませんでした。前項目異常状態点検時 再生音が確認できない事もあり 別の異常個所を点検中モーターが高速回転していたのが原因であると思います。通常であればピッチコントロールVR交換となりますが部品がありません。代用処理で修復できました。後日正規のテープスピード調整をしましたが制御回路は大きな狂いはありませんでした。キャプスタンモーターが生き返りました。波及故障です。モーターの構造はプラモデルなどで使用しますマブチモーターの構造と似通っていますが 各部品は精度は良いモーター構造です。人間が作った部品ですので注意深く構造・部品を確認すれば修復可能と思います。今回のように運(工作技術)がよければ蘇生できることもあります。
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| 回転子(ローター) 7極の回転子 |
モーター内部をブロワーで清掃後各軸受け(メタル)にスピンドル油を注油して再組み立て後正常動作を確認しました。X-10R その5では整流子に半田付けされたコイルの再ハンダで修復できています。
X-10Rその8での症状
キャプスタンモーターの分解修理はお勧めできません。以前の所有者がキャプスタンモーターを分解していました。正常な状態となっていません。なぜなら微妙な微調整が必要だからです。もしも分解組み立てをするときには必ず分離できる位置にマーキング(機械を分解するときには必須項目)をして分解組み立て時同じ取り付け位置になるようにしなければなりません。このDCモーターは回転子の極数が多く 取り付け位置により回転方向が逆転してしまいます。取り付けねじ位置が120°の角度で取り付けられており 角度を間違えるとモーターは逆転してしまいます。又取り付け位置角度も微調整できる構造です。この微調整はモーターの回転方向がCW,CCWとも確認・調整をしなければなりません。運転電流が少なく又回転が高速回転となるようにするための微調整が必要です。回転が滑らかになるように通常の整流子モーターよりは多くの回転子極構造となっているため 微妙な位相合わせが発生します。
通常の修理ではキャプスタンモーター完成(制御基板付)での修理となります。DCモーター単体での販売はされていません。
参考記載
X-10Rのキャプスタンモーターは直流整流子モーター構造です。整流子モーターの欠点として必ず整流子に接触するカーボンブラシの構造によりカーボンブラシが摩耗し摩耗が進行すると回転ムラ・回転しないことになります。直流ブラシレスモーター構造ではありません。消耗品的なモーターでありこのモーターでは産業用モーターのようにブラシ交換ができません。モーター完成品の交換となります。
左側のテンションアームローラーにはキャプスタンモーターの回転を制御するマイクロスィッチが取り付けられており テープを装着するとキャプスタンモーターが常時回転します。消耗的な整流子モーター構造ですので 骨董品デッキを長時間延命するためにもテープを装着したままの放置状態・長時間通電は避けてください。
通常のメーカー・修理業者などのアフターサービスと違い 骨董品機器での道楽修復作業です。 今回のように補修部品の供給が困難な場合がほとんどです。代用部品の調達・故障部位の修復をするためにも 故障原因を追究し部品レベルまで修復する場合も多々発生します。
テープスピード ピッチコントロールVRは特殊VRであり 構造上センタータップ取り出し端子のが破損しやすい構造と判明しました。X-7R MKⅡその6でも経験しました。最初は正常であったがVR取り付け位置調整時VRシャフトに大きな力が加わるとVRの抵抗体基板にクラックが入り断線することが判明しました。別付けの2.5kΩの固定抵抗器を取り付けることにより正常動作となりました。VRの取扱いに注意が必要です。
④ 400Hz信号による録音テストでFWD R-chが録音できない(REVは両チャンネルとも良好)
⑤ 長時間再生エージング中に時々両チャンネルとも音途切れが発生
当初再生音が出なかったこともあり原因を追究した結果 再生ミューティング回路が誤動作していることが判明。またもやシステムコントロールの信号を追いかけると制御トランジスターの動作がおかしくQ54~Q59を点検するとマイグレーション状態ではなくウィスカ症状がルーペにより確認できました。この時点で前に交換した2SC954 全数に発生量の違いがありますが金属単結晶のウィスカが確認できました。今回のシステムコントロールにおける様々な故障はこのウィスカが犯人であると判断しました。システムコントロール基板内では約25個の同じロットのトランジスターが使用されています。手持に数多くの2SC536は無いため 今後不良となりえるトランジスター2SC945全数ウィスカ対策処理を実施しました。
⑥ REV表示緑色のLEDが点灯しない
X-10Rその8での症状です。通常ではLEDの故障はほとんど発生しません。フロントパネルに取り付けられている走行表示のLEDが点灯しません。LEDドライブ回路を点検しましたが異常はなくLEDが断線しているのが判明しました。憶測です。以前の所有者がが電源を投入した状態でフロントパネルに取り付けられている操作スイッチ基板を修復するために分解しようと判断しました。REV表示LEDのリード線がメカニズムブロックのシャーシーに接触し過大電流が流れLEDがオープン状態になったと判断しました。スイッチブロックを分解するにはメカニズムブロックを取り外さなければ分解できません。横着作業は波及故障の原因です ! ! !
愚痴です ! ! ! (難物修理)
⑦ プレイモードに移行しない。F・FWD,REW 操作時停止モードにならず電源を切らない限り停止できない症状
メカニズムは一応分解修理をしていましたがEリング2個欠品。代替えとして針金で代用している。ねじ類は取り付け場所により品種が違っていますが正規の品種ねじが取り付けられていない。メカニズムの組間違え・TRの誤配線(E,Bが逆挿入)・交換している電気部品が正規の仕様と異なる部品を使っている・テープ走行系のずれ・ポリスライドワッシャーの欠品・リバースセンサースプリングの変形・配線コネクターピンの折れ・ヘッドの段付き摩耗・REV,LED断線・カウンター数字のはがれ・後部筐体の破損・汚い半田付け・オーディオ基板に多量の接点復活剤の付着・その他傷及び塗装はがれ・など多数箇所が不良です。
いまだ全機能の点検はできていません。本当の当初故障はシステムコントロール回路IC,AN6251の動作不良が原因で様々な症状を発生しています。STOP,D-PLAY出力回路の故障により様々の箇所が動作しません。仮の処置としてCD4069BPインバーター回路を使った別基板で一部シーケンスを作製し修復ましたので再生機能だけは動作できる状態まで修復しました。このシステム制御ICは負論理で動作しています。NANDの入力端子を並列接続としてインバーターとして使用されている個所もあります。システムコントロール回路からのミューティング回路が正常な動きをしていないため PBアンプのミューティング回路は殺しています。録音機能についてはいまだ未着手状態です。サービスマニュアルだけでは詳細なタイミングチャートの解読はできません。特にシステムコントロール回路の動作シーケンスチャートは記載されていませんのでAN6251 製造メーカー発行データーシート仕様書と回路図との頭の痛い解読作業です。
本当の犯人が判明しました。D,PLAY出力ゲート端子に接続してある外部遅延回路でした。リール回転検出回路です。供給側リールモーターシャフトに取り付けられたマグネット回転によるホール素子を使った回転検出回路です。磁気信号の小さな信号を増幅するためのIC MJM2901 がマイグレーション症状により故障していました。X-7Rではリール台回転検出回路は省略されており ICのCR2端子には220KΩにより5Vラインからプルアップしています。X-7Rと同様のプルアップ抵抗を取り付けるとAN6251は正常動作となりました。NJM2901をルーペで観察をするとマイグレーション症状が確認できIC現物修理で正常となりました。AN6251のCR2端子はICの閾値(敷居)電圧よりも低いL(ロー)レベルではD,PLAY端子は動作することができません。H(ハイ)レベルとなることによりD,PLAY回路は動作します。
サービスマニュアルの回路図には正常動作時の各部電圧が記載されていません。各回路動作による動作原理が理解できないと回路修理はできません。又シーケンスの解読力・理解力も必要です。
⑧ 一応再生ができるまでに修復をしましたが 時々モニタースイッチが SOURCE の時にR-ch ランダム雑音(ノイズ)が発生する
LINE VR が絞り切った状態でも発生するためVR以降の回路故障と判断しはました。回路図を追っていくと後部パネルにDBXユニットを接続するRCA端子基板にある増幅回路と判断。案の定後部パネルに傷が多数ついており 増幅回路のTRに新しい半田付けがありました。TRは交換していないが出力側のカップリングコンデンサーが異種類を取り付けられているのが判明。正規はディップタンタル(D.T)コンデンサーと配線図にも記載されているが 通常のCE型電解コンデンサーが取り付けられている。手持にD.Tコンデンサーが無く 同等以上品質のOSコンデンサー(C555 1μF 16WV)に交換。Q551 曲者の 2SC945が使われており TRのリード線付け根をルーペで観察すると小さなマイグレーション症状を確認できたため修復し 状態変化を確認しましたが正常となりました。
⑨ 録音ができない
X-10Rその8 メカニズムは⑦の修復で何とか正常となったのだが 目視点検で新しく半田付けのある個所に疑問がありました。以前修理をした人はある程度電子回路技術があると思うが中途半端な修理技術者と思われる。X-10R系は多数道楽で修復してきましたがここまで犯人を見つけるのに苦労した機器は初めてです。冒頭で述べている 最悪の壊し屋と思われます。
再生はできるが録音ができない症状が判明。その1 バイアス発振ユニットを取り外した形跡。その2 FWD,REV切り替えスライドスィッチに新しい半田付け。その3 バイアス発振回路の抵抗(R491 47Ω 1/2W)が焼けている。焼けている抵抗を正規部品と交換するが過大電流を確認。
以上の点検結果からどこかの回路で短絡事故があると判断。ここからが悪戦苦闘の始まりです。バイアスOSCユニットを取り外し定電圧電源で動作試験をしましたが異常がないのを確認。これからは各回路網を切断分離して漏電個所の追及です。結論はFWD,REV切り替えスライドスィッチと判明。スイッチを取り外し点検するとスイッチを分解した形跡が判明。分解すると中にある部品のスライド接片が変形及び接点間に黒い異物を目視する。通常スライドスイッチは分解しません。変形した接片を回路としては使われていない個所に変更し接点を洗浄後組み立てた結果漏電は修復できました。人災修理者が作った故障です。部品供給不能の場合 ある程度は分解修理はしますが 部品の構造を理解できない場合は分解してはなりません。
⑩ 長時間再生エージング中に再生音が小さくなり高域も低下する
⑨まで修復後長時間再生エージング中に両チャンネルとも高域が下がりヘッド汚れのような音質になり最終的に音小となる。及びランダムノイズを含んだような症状となる。走行系テープパスの掃除もするが改善できない。再生ミューティング回路も点検するが異常は認められない。再生アンプの電圧点検及びオシロスコープで波形観測をするが原因がつかめない状態です。再生増幅回路は最終的に異常がないと判断し もしかと思いバイアス発振回路の点検をするとバイアス信号がふらつきながら発生しているのが判明する。再生モードであるためバイアス回路は通常働かないのであるが不安定ながらバイアスが発振していました。再生していたテープが消去されていたのである。原因はバイアス発振回路スイッチング回路の不良と判明。ダーリントン接続で動作しているトランジスター・スイッチング回路であり Q329 2SC1740 を点検すると テスターでの導通試験では異常は認められません。またもやルーペを使ってトランジスターの付け根を観察するとB-C間微量のマイグレーション症状が確認できました。ダーリントン接続であるためベース回路はハイ・インピーダンスで動作しています。動作電圧でリーク症状であったと判断しました。ノイズを伴った発振電圧がふらついていた理由です。
バイアス回路及びスライドスイッチを以前の修理者が点検し壊していましたが これが本当の故障原因かもしれません。おまけに初段再生増幅アンプ回路も点検していたことを推察すると 真犯人のようです。
このように長時間エージングを実施すると違った故障が発覚します。2本のエージング用・LPレコードからの音楽録音されたテープがお釈迦になってしまいました。入手困難な高額なテストテープではなく被害は少なくすみました。このような最悪な故障も存在します。
⑪ 長時間エージング中にキャプスタンモーターが回転しない
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| X-10Rその8 交換したコンパレーターIC NJM2901N,NJM2903D |
入手後NJM2903D,NJM2901N を交換し動作は正常となりました。またもや長時間エージングとなります。
⑫ 長時間エージング中に不安定なテープ走行となる
FWD再生途中で音跡切れのような症状。テープ走行系を注意深く観察すると 再生ヘッドにテープが正常に圧接できていないことが発覚。テープ走行系・ピンチローラーなどの清掃を実施しても改善しない。供給リールに手でブレーキをかけてバックテンションを与えると正常となる。故障原因はバックテンションの異常である。色々メカニズムを点検するが原因がつかめず長時間悩みました。再度キャプスタンベルトを交換しても改善できません。
犯人はフライホイルのキャプスタン軸の摩耗と判明しました。摩耗箇所はテープ接触面の軸が摩耗し段付き状態を目視確認。他のX-10Rキャプスタン軸と比較すると摩耗頻度の違いが目視で確認できました。X-10Rその8 ではREVモードではテープテンションが正常です。この症状がディュアルキャプスタン構造の欠点かもしれません。Aシリーズの機器ではここまでキャプスタン軸の摩耗頻度は多くありません。テープスピードが微妙に異なるキャプスタン軸の構造により テープをヘッド面に圧接する場合 テープスリップ箇所はキャプスタン軸部であり 接触しているテープ間でスリップ現象が発生しています。スリップ時テープの磁気面が紙やすりの働きとなりキャプスタン軸を研磨している状態といえます。これがキャプスタン軸の摩耗です。摩耗すると直径が小さくなるとテープスピードが遅くなり送り出し側とのテープスピード差が小さくなりテープテンションが発生しないことになります。これが故障原因と思います。ピンチローラーが汚れやすいのも納得しました。
修復には左右フライホイルの交換となります。初期の使用者はFWD方向を多く使用し REVモードがあまり使わなかったため キャプスタン軸の左右での摩耗頻度が異なったための症状と判断しました。REV,FWDをむらなく使用した場合 このような症状とはならないと思います。
FWD,REVでテープスピードが微妙に違っているのは ディュアルキャプスタン構造キャプスタン軸摩耗が原因かもしれません。
X-10Rその8 以前の所有者(修理者)は最悪のエンジニアとは異なる壊し屋そのものです。メーカーアフターサービスにおいてサービスエンジニアが一番嫌な故障状態修理です。TEACのサービス部門では受け入れお断りの機器です。修理時間を換算すれば技術料はいくらになるかご想像ください。
人災は通常の故障では考えられない想定外の故障が発生します。
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| ビデオカメラ、8ミリカメラのズームレンズを加工した必需品のルーペ |
完全ジャンク品による暇つぶし・ボケ防止作用のある 頭の体操を現在進めています。おかげさまでこのブログに追加記載内容が増加しブログ更新回数も多くなりました。このように骨董的な機器を修復するには人間の五感及び第六感も酷使しなければ修復することができません。目視による各部の点検も重要な要素です。
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| テープカウンターの数字が日焼けではがれたのを修復 |
最悪のコンディション X-10Rその8 当初の故障状況を推察すると
その1 キャプスタンベルトの劣化・必須のメカニズム分解オーバーホール
その2 システムコントロール機能の故障、再生モードとならない・REW,F-FWD停止できず
その3 LINE入力雑音
その4 再生音が小さいもしくは音が出ない
その5 メカニズム部品の欠品、変形
その6 キャプスタンモーターが時々回転しない などが自然故障と一部修理者が作った故障症状です。
上記の症状であったと推察します。あとの故障個所は以前の所有者(修理者)人災・修理者が作った故障で被害が拡大していました。故障個所の特定ができず無闇に修理を行ったために多重故障が発生したものと思います。電子回路においても多くの故障は発生しません。今回の機器では複数個所半導体のマィグレーション症状により回路故障が発生していました。テスターだけでは良否の判断ができません。各部品の壊れ方を熟知していなければ修復はできません。一応上記の修復により録音・再生機能はほとんど問題がない程度まで修復完了しました。各特性・レベル調整し現在長時間エージング中です。通常破損・欠品個所がない場合は数多くの多重故障は発生しません。消耗部品は別としてX-10R系では特定箇所を重点に点検すれば現代でも修復可能と思います。
おかげさまで配線図には色鉛筆で回路を追っていますのでカラフルな色合いの回路図となってしまいました。曲者の2SC945については一目で判別できるようにトランジスター記号に色彩を付加しています。又要所には機能の解説と等価回路も手書きで記入しているためメモ書きが多数記入してあります。ブロック図的な記載内容です。ICの内部解析・シーケンス動作のタイムチャートなどもキャンパスノートに相当量手書き記載が発生しました。ここまで徹底しなければシステムコントロール回路デジタル部アナログ部の動作状況は把握できません。サービスマニュアルには記載されていない個所の解析です。
今回修復したデッキの中でX-10Rその5は一番FWD,REVでのテープ速度誤差の少ないデッキです。他の複数台デッキではテープスピーを測定をしますと 規格内でしたが速度偏差が発生していました。違いの原因は追究できていません。たぶんデュアルキャプスタン構造でキャプスタン軸を目視するとテープ走行箇所が摩耗しているように感じます。摩耗するとテープスピードは遅くなります。修復後現在も録音・再生テストを実施していますが大きな問題は発生していません。
総合調整について
X-10R その5では今回バイアス調整用トリマーコンデンサーが故障していましたので 基準レベルでの録音・再生調整を実施しました。録音・再生レベル調整は本文で記載しました信号により大きなずれもなく調整が完了しています。400Hz/-12dBmの基準信号においてVUメーター0dB信号を自己で選別したMaxell PM50-5LBをREFERENCE TAPE としてバイアス、録音レベル調整をしました。再生信号レベルは+0.1dB程度の誤差でFWD,REVともL,Rチャンネル誤差もなく極少しの調整で完了しています。このデッキがヘッド摩耗が一番少なく準BTS REFERENCE TAPE 19cm/s 0dB信号で調整しましたがほとんど誤差がありません。このテストテープの残留磁束密度は200nWb/mのテープであると解釈しました。250nWb/mのテストテープの場合+2.0dBほど高く出力されます。テストテープの種類により磁束密度の数値を確認しなければ正しい調整はできません。松下電器産業製QZZOW190のテストテープをこの値とすればつじつまが合います。不良であったバイアス調整用トリマーコンデンサーの調整は故障していなかったチャンネルと同じレベル信号になるように調整しました。
参考
録音時・各録音ヘッドのバイアス電圧を記載します。測定器はACミリボルトメーターを使っての値です。
FWD L-ch 19.0V R-ch 20.5V REV L-ch 16.0V R-ch 18.5V となりました。参考値です。点検程度であれば回路計(テスター)のACレンジでも確認は可能です。このようにヘッドの個体差によりばらつきが多いと思います。バイアス調整時の各ヘッド荒調整値として18Vから20V程度に調整すれば大まかな録音が可能と思います。
前回と同様に QUANEGY 456 を使ってBIAS 調整をしますとやはり感度が高く約+2dB 強 出力レベルが高くなりました。調整に使ったPM50-5LB のテープがTEACリファレンステープ(YTT-8013)に似通っていると複数台の同一機種デッキで調整し判明した道楽作業での個人的な解釈です。
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| YEW3201 アナログ回路計 |
半導体を使った電子機器においては30数年以上も経過しますと通常では考えられない故障が発生します。特に半導体では使用される原材料・製造年月により マイグレーション・ウィスカなど様々な不具合が発生します。又その異常を見抜くための眼力も必要となってきます。数多くの経験がないと迅速な判断もできません。これらを踏まえて道楽での修復作業です。
X-10R その5は冒頭に記記載しましたアンプ系およびメカニズムの総合調整を実施し 現在長時間エージング中です。水害品であり今後どのような故障が発生するかは不明です。初期性能をほぼ満足できる完成度です。
TEAC X-10R が増殖しました。多数のジャンク品を購入した結果ほとんどは付属品がありません。その代償としてTEAC10号メタルエンプティーリール(RE-1002)を購入目的でしたが その中に Maxell UD XL 35-180B が混じっていました。初代デッキはSONY製であったため初期のオープンリールテープは40年以上経過する生テープ SONY SLH が大半です。その後 Scotch 218,207 がほとんどです。オープンリールテープから使い勝手の良いカセットテープが主流となり当時購入していたカセットテープはほとんどがMaxell UDⅠ,UDⅡです。C-60までを多用しカーステレオ再生用音楽テープとして愛用していました。テープ事故も少なく音質も気に入っていました。当時カセット生テープでは高性能ハイポジションテープが多種類販売されていました。オープンリールテープでの高性能EEテープの存在を知ったのは最近です。Maxell UD XLⅡが該当します。カセットテープでも同じ型番は存在し使用しました。当時オープンリールテープはお蔵入り状態であり10号リールのテープではMaxell 製品は数多く購入していません。今回中古品の生テープでしたがテープの痛みが少なく録音テストをするとほとんど録音・再生レベル差が発生しません。これであればリファレンステープとして使用ができると判断しました。さすが国内製生テープで生産終了時期が国内では遅かったメーカーです。現在でも品質の劣化が多くありません。Maxell TAPEは優秀です。家庭用VTRでも使用していた生テープはMaxell HGX,GXタイプがほとんどです。他社のVTRテープと比べるとドロップアウトも少なくテープ事故が少なかったと思います。
今回骨董品オープンリールデッキを修復して判明したことですが 初期に購入した生テープでは製造時期の違いもあると思いますが 経年劣化が激しく現在ではまともに動作する生テープはほとんどありません。生テープ製造メーカーとしては有名でしたが S社の150番タイプ生テープでは経年劣化が激しく現在では真面に使用できないと判断しました。長期間保管状態による劣化度に違いがあると思いますが T社、M社の生テープでは極端なレベル変動、テープパス汚れなど劣化症状は数多く見受けられません。劣化症状としては テープ磁性体の剥離・バックコート面の剥離、テープ間接着状態などの症状です。ヘッド、ピンチローラーなどテープ走行系がすぐに汚れてしまう ! テープ走行中にテープ鳴きが発生する ! レベル変動 ! 巻き戻し、早送りが途中で止まってしまう ! など150番のテープでは最悪な劣化症状です。デジタル変換作業において10分間ですら まともに動作しないテープも存在します。各社所有していたテープは長年にわたる保管状態が同じであり現在では品質が違っています。現時点での個人的な見解です。S社の中でも 放送局などプロ仕様の業務用100番テープでは極端な致命傷的な劣化は数多くありません。しかしレベル変動は確認できました。当時F社のテープと外国製テープBASF,AMPEX,AGFAなどが販売されていましたが購入していませんので比較ができません。
発売されていた当時の民生用機器では回転部分にベアリングが使用されていません。軸受けはメタル構造です。業務用機器であればモーター、フライホイル軸受け、ガイドローラーなどは常時回転しています。テープが走行する場所ではベアリングが多用されます。民生用ではテープガイドローラーではなくガイド金具仕様です。このような仕様のため一部のテープでテープ鳴きがよく発生します。今回キャプスタンモーターを分解して判明しましたが軸受けはオイルレス・メタル構造となっていました。販売価格なども考慮すると仕方がないとは思いますがやはり基本的設計は業務用機と比較するとコストダウンの設計となっていました。業務用機器のモータでは巻線が焼損などで故障した場合 巻き直しをする場合もあります。ベアリングも通常汎用ベアリングが使用されており 数百円で部品として購入できます。交換時にはオープン型ベアリングであっても****ZZのような密閉型ベアリングをよく使用しました。道楽での真空管アンプの出力トランス故障でも巻き直して修復する場合があります。過去の遺物を修復するには再生部品まで作成する技術力・気力と時間・費用が必要となります。深追いの道楽は ドツボにはまります。ご注意を! ! !
最後まで流し読みいただきありがとうございます。間違った解釈が多々記載されていると思います。本人では判別がつきません。多少とも記載した忘備録が道楽を続けるための参考となれば幸いです。
実働するデッキと真空管アンプが多数修復完了し 増殖した結果 足の踏み場がありません。
回路修理においては各回路動作の理解がないと修復はできません。各調整項目での調整内容が理解できる方は数少ないと思いますが測定機器を使っての調整作業は経験がないと非常に厄介な事柄です。X-10Rでは英文によるマニュアルの調整項目順に小生の解釈を今回記載しました。一般的な修理では不良箇所だけの修復と思いますが 極力工場出荷時のスペックを得るには総合調整は時間はかかりますが必要な事柄です。又長時間のエージングも時には必要です。過去の経験と記憶をもとに自己満足である道楽・趣味の一環として収集した測定機器・手持部品などを使い 調整・工作加工・修復作業を楽しんでいます。
X-10R シリーズは多数台修復してきましたが その結果致命傷的なメカニズム構造が判明しました。それはデュアルキャプスタン構造です。テープ走行安定策として開発されましたが ヘッド面テープ圧接構造が従来機種と異なり バックテンションによる圧接ではありません。左右キャプスタン軸の微妙な走行スピード差によるヘッド面テープ圧接構造です。その弊害としてキャプスタン軸を見れば判明します。従来方式に比較してキャプスタン軸のテープ走行面の摩耗が発生しています。片側のキャプスタン軸では常時微妙なテープのスリップが発生しています。これがテープ安定走行、テープスピードを狂わしている要因です。又ヘッド圧接圧力もテープスピード差の変化によりテープ圧接圧力変化するのが判明しました。ヘッド面テープ走行不安定ともなっています。Aシリーズのデッキではここまでキャプスタン軸の摩耗は発生していません。長期間安定走行するメカニズムとは思えません。利便性を取るか、長期間安定性を取るか これは個人的判断にゆだねます。100番のテープと150番のテープではテープ厚さも異なり微妙なスリップ度合いも変わります。特に使用頻度の高いデッキで発生していました。フライホイル左・右を交換すれば問題は解決しますが補修部品の入手ができません。又ヘッド摩耗も相当進行しているデッキと思います。
このあたりが Xシリーズ修復作業の潮時と思います。
この結果から REV REC モードはありませんが A-6300MKⅡ4Tr-2Ch プレイのみREVモード可搭載機が高値で取引されている理由と個人的な判断です。
by musenan sennin
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